シンガポールDBS銀、中銀デジタル通貨を政府補助金に活用する運用試験開始

DBS銀行がCBDCを個人補助金として利用するための運用試験開始

シンガポールのDBS銀行が、デジタルシンガポールドル(DSGD)を政府バウチャーとして活用するための運用試験開始を10月31日に発表した。

バウチャーとは、ある特定の目的のみに使用できる金券のことを指す。特に政策手段としてのバウチャーとは、「教育訓練」や「保育サービス」というように使い道が限定されて、個人が政府から受け取る補助金のことを意味する。

今回の運用試験では、現実に存在する6つの店舗と選出された1000名の消費者が参加し、バウチャーの受け取りおよび利用が可能か検証するとのこと。期間は2022年10月27日から4週間となっている。

運用試験で使用されるインフラは、シンガポール政府の技術チームであるオープン・ガバメント・プロダクツ(OGP)と共同で開発を行ったとのこと。DBS銀行がブロックチェーンを利用してDSGDを発行し、OGPによって開発されたスマートコントラクトを通じて消費者へのバウチャーの配布および店舗への清算を行うという形をとるとのことだ。

DBS銀行によると、今回検証するスキームが実現すれば、バウチャーによる支払いとほぼ同時に銀行から店舗への支払いが行えるようになるため、店舗側は迅速な資金の回収が可能になる。これにより店舗側はキャッシュフローを拡大し、バックエンド業務にかかる時間を短縮できるようになるとのことだ。

DBS銀行は将来的に、インフレ対策として家庭に配布されるバウチャー(CDCバウチャー)などで今回のスキームを活用できると考えているとのこと。さらに、今回のような目的限定型のデジタルマネーは、寄付や持続可能な資金調達、不動産取引における譲渡代金などのような多段階の条件付き支払いプロセスにおいても有用であると考えているとのことだ。

DBS銀行のシンガポール代表シー・ツェ・クーン(Shee Tse Koon)氏は『今回の運用試験では、プログラマブルマネーが、特に時間やリソースに余裕のない企業にとって、より効率的で信頼性の高い、堅牢な決済システムを促進する可能性を検証しています。政府、企業、個人が共通のビジョンを持って相互に接続されたネットワーク上でプログラマブルマネーを導入し、完全に透明で効率的な世界的金融決済インフラを実現した場合、「目的限定型マネー」は計り知れない変革をもたらすでしょう』とコメントしている。

この運用試験は、シンガポール金融管理局(MAS)が主導するCBDCプロジェクトである「プロジェクト・オーキッド(Project Orchid)」の一環として行われている。「プロジェクト・オーキッド」はリテール型(小売り向け)CBDCシステムの技術要件を調査することを目的として2021年11月に開始されたプロジェクトであり、その第1段階として、今回の運用試験にも用いられた目的限定型マネーの調査が行われてきた。

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参考:DBS銀行
デザイン:一本寿和

images:iStocks/TkKurikawa

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この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部 一橋大学2年生 真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

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