BIS、ゴールドマンサックスらとグリーンボンドのブロックチェーン管理を検証

BIS、ゴールドマンサックスらとグリーンボンドのブロックチェーン管理を検証

国際決済銀行(BIS)が、グリーンボンドおよび炭素クレジットのブロックチェーンを利用した管理を検証するプロジェクト「ジェネシス2.0(Genesis 2.0)」の報告書を10月24日に発表した。

グリーンボンドとは、企業や地方自治体が環境保護プロジェクトに要する資金調達のために発行する債券のこと。

また炭素クレジットとは、温室効果ガス排出権のことを指す。企業は環境保護プロジェクトを通じて達成した温室効果ガスの削減量に応じて炭素クレジットを発行することができ、目標削減量に到達できなかった企業はクレジットを購入することで排出量の穴埋めを行う。

「ジェネシス2.0」はBISイノベーションハブ、香港金融管理局、国際連合(国連)、ゴールドマンサックス(Goldman Sachs)、オールインフラ(Allinfra)、デジタルアセット(Digital Asset)、インターオペラ(InterOpera)、クルンタイ銀行(Krungthai Bank)、サムウー(Samwoo)、スンシン・セメント(Sungshin Cement)の計10機関が参加する官民共同プロジェクトとなっている。

「ジェネシス2.0」の目的は「グリーンボンド市場の透明性、客観性および完全性の強化」となっている。具体的にはグリーンボンドと炭素クレジット市場を統合することにより、グリーンボンドに緩和成果利益(MOI)を付与する新しい仕組みを検証したとのこと。MOIは債券償還時に投資家に引き渡される炭素クレジットであり、債券発行時に設定される。つまり、新しい仕組みでは、グリーンボンドの発行で得られた資金が使用される環境保護プロジェクトにて達成されるであろう温室効果ガスの削減量に応じたカーボンクレジットを、あらかじめ債券の一部に組み込むという形をとる。

MOIをグリーンボンドに組み込むことにより、企業のグリーンウォッシング(見せかけだけの環境保護活動)を防ぎ、グリーンボンド市場の完全性が高められるとのことだ。

また「ジェネシス2.0」では、ブロックチェーンを用いてグリーンボンドに付加されたMOIを追跡・移転することを可能にするために、2つのプロトタイプが作成された。

1つ目のプロトタイプはゴールドマンサックス、オールインフラ、デジタルアセットの3社のコンソーシアムによって開発されたものであり、主に機関投資家によるグリーンボンド市場の利用を想定したものとなっている。このプロトタイプにより、グリーンボンドのトークン化や、MOIのデジタル上での追跡が可能であることが示された。また、スマートコントラクトによる債券とMOIの受け渡しも実行できたとのことだ。

2つ目のプロトタイプはインターオペラ、クルンタイ銀行、サムウー、スンシン・セメントの4社によるコンソーシアムによって開発されたものであり、相互運用可能性にフォーカスしたものとなっている。このプロトタイプは相互運用可能なブロックチェーン上に構築されており、グリーンボンドのライフサイクル全体を通じて、MOIをデジタルで追跡・付与・移転することができたとのことだ。

BISはブロックチェーンを利用したデジタル経済の検証を進めており、今年9月にはイスラエル・ノルウェー・スウェーデンの中央銀行と共同でCBDCの調査プロジェクトを開始している。また、2021年12月にはフランスおよびスイスの中央銀行とともにホールセール型CBDCの実験プロジェクト「プロジェクト・ジュラ」に参加し、国際決済におけるCBDCの有効性を検証している。

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参考:BIS
デザイン:一本寿和

images:iStocks/Ninja-Studio・Petmal

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この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部 一橋大学2年生 真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。