金融庁と経産省、暗号資産の法人税の課税方法見直しへ方針固める=報道

暗号資産の課税見直しの方針固まる

金融庁と経済産業省が、企業の保有する暗号資産(仮想通貨)にかかる法人税の課税方法について見直す方針を固めたと、読売新聞が8月24日報じた。2023年度税制改正での議論となるとのこと。

報道によると、金融庁らが検討する新たな仕組みでは、発行した企業が自ら保有する暗号資産については期末の時価評価の対象から外し、売却などで利益が生じた時点で初めて課税する形の方針をとるようだ。

現在国内でブロックチェーンやNFTなど「web3」の分野で事業を行う企業は、自社が保有する暗号資産について、期末の「時価」をもとに課税される仕組みとなっている。そのため「含み益」に対して税金がかかる為、資金調達のために「トークン(暗号資産)」を発行した創業間もないweb3スタートアップには資金繰り面で負担が大きいとの指摘が相次いでいた。

また発行した「トークン」は、株式と同様に議決権を持った「ガバナンストークン」として機能するケースもある為、「トークン」売却による税金の支払いは実質難しい。さらに税金支払いの為に保有する「暗号資産」を売却する場合、それが取引市場への大きな売り圧となり「トークン」の価値が暴落する恐れもあり、web3スタートアップの事業や取り組みへの大きな障害となる。

こういったこれまでの国内事情のため、日本発で展開するパブリックブロックチェーン「アスターネットワーク(Astar Network)」をはじめとした有力な国内web3スタートアップが、保有する暗号資産を課税対象としないシンガポールやスイス、ドバイなどの、海外へ拠点を移す例が多くみられている現状がある。

今回国内において税制の見直しを検討することで、スタートアップの成長を阻害しないよう配慮し、海外流出を防ぐことが狙いだと考えられる。

なお一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、共同で暗号資産(仮想通貨)に係る2023年度税制改正要望書を取りまとめ、7月29日付で金融庁へ提出したことを8月3日に発表した。その中には今回の法人税に関する内容も含まれていた。

今回の報道のように税制改正がなされれば大きな一歩だ。しかしweb3企業や国内投資家とってもう一つの負担が、利益に対して課税が株やFXのように分離課税でないことである。前述の2団体は「暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。暗号資産デリバティブ取引についても同様とする」と要望している。

この部分の検討がどのように進んでいくのか、2023年度税制改正に盛り込まれるのかも引き続き注目だ。

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参考:読売新聞
デザイン:一本寿和
images:iStocks/y-studio

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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