【取材】暗号資産決済導入を簡単に、「Slash Web3 Payment」メインネットローンチ

Slashがメインネットローンチ

暗号資産(仮想通貨)決済システム「Slash Web3 Payment」のメインネットローンチを「SLASH FINTECH LIMITED」が8月15日発表した。今後対応予定のブロックチェーンやアップデートについても公開されている。

Slashとは

「Slash(スラッシュ)」では、ユーザーのウェブサイトやDApps(分散型アプリケーション)に暗号資産による決済処理を導入するためのシステムやAPIを提供している。web3版の「ストライプ(Stripe)」ともいえるサービス提供を目指しており、6月30日にテストネットをローンチしていた。

「Slash」を利用することでユーザーは、決済したいプラットフォームが対応するブロックチェーンの暗号資産(トークン)を持たずとも、自らが保有する暗号資産を「Slash」の決済画面において自動的に最適なレートでスワップと決済が出来るようになっている。

これにより、ユーザーは暗号資産決済を行う前にDEX(分散型取引所)でトークンスワップを行うなどといった事前準備の手間が省け、「ETHしかもってなくてUSDTにスワップするのが面倒」、「そもそもDEXでスワップする方法がよくわからない」などといったユーザーの決済時の離脱も防げるとしている。なおDAppsが決済時に指定する暗号資産(the merchant receipt token)とユーザーが決済に使用する暗号資産が同じである場合には、DEXルーターを経由することなく直接的に決済が可能となっているとのこと。

またサービス事業者はより多くの暗号資産決済の機会をユーザーに提供できる他、売り上げの受け取りをUSDTやUSDCといったステーブルコインに設定することで、暗号資産決済導入の最大の懸念点である「高いボラティリティ」に対応することも可能となるようだ。

アップデート情報について

今回の発表によるとメインネットローンチ時点の対応中ブロックチェーンおよびはDEXルーターは、Ethereum(ETH)、BNB Chain(BNB)、Polygon(MATIC)、Avalanche C-Chain(AVAX)そしてUniswap V2 specification Routerとなっている。

今後対応予定のブロックチェーンについてはFantom(FTM)、Arbitrum One(ETH)、Solana(SOL)で、DEXルーターはCurve.fi RouterおよびUniswap V3 Routerと発表されている。

また予定されている直近のアップデートで、マーチャント画面でノーコードで恒久的な支払いURL及びQRコード発行に対応するとのこと。これを印刷し店舗のレジ横に置くだけで様々なトークンでの売上の受け入れが可能になり、ペイペイ(PayPay)のような決済を可能にするという。他にもShopifyやECプラットフォームへのプラグイン導入も近日中に予定されているとのことだ。

なお発表同日15日には、サービス事業者側が受け取り設定できるステーブルコインが、USDT・USDC・DAI・JPYCに加え、wETHにも対応したことが発表されている。

また今後「Slash Web3 Payment」では、売り上げを自動に分割し配布するシステム「Split」や特定のNFT保有者へ売り上げを分配する「NFT Split」などの実装も計画されている。

「あたらしい経済」編集部は「Slash」ファウンダーの佐藤伸介氏へ取材を行った。

Slashファウンダー 佐藤伸介氏のコメント

–メインネットローンチに対しての引き合いなど反響はいかがでしょうか?

国内外のコアメンバー、関係者並びに興味を持って頂いている皆様のおかげでメインネットをローンチさせて頂く事ができました。この場をお借りし本当に感謝申し上げます。

おかげさまでIVSでのビジネスワーキングやNon Fungible Tokyoの登壇以降、多くの企業様よりディスカッションの機会を頂いており既存企業におけるWeb3ビジネスへの関心度が伺えます。ご相談を頂く企業様のステータスは通信会社様やSIer様など既存の大きなインフラストラクチャーをワークさせている業種が多く、その上でWeb3分野での一歩を踏み出したいという高い温度を感じています。

現在、DAO、メタバース、NFTなど多くの分野が一つのWeb3文脈で括られている現状ですが、私達が予測する社会的な最初の変化・Web3トランスフォーメーションは企業やコンシューマーサービスのファイナンスストラクチャーの部分的なスマートコントラクトへの移行です。

多くのサービスがブロックチェーンでデータベースを公開する事がDAO(Decentralized Autonomous Organization)の基盤になると思いますし、その基盤があるからこそ熱狂と興奮だけで終わらず、リアルな社会実装が前進すると信じています。

Web3事業に興味を持たれている事業主様は、まずはそのファーストステップとしてSlashの導入をご検討頂けるとその経験と体験がWeb3ビジネスへのゲートウェイになると確信しています。Slashは先日ローンチしたばかりですのでマーチャントとなり得る事業主様の獲得はこれからです。多くの企業様、事業主様とその社会実装についてディスカッションを重ね、夢物語で終わらないWeb3文脈のリアルな社会実装の礎になれればと思っています。

–昨今ハッキングなど多く発生していますが、DeFiに関するセキュリティ面についてどのようにお考えでしょうか?

Decentralized Finance (DeFi)はある意味「ソースコードは正義」という文脈で成り立っており、セキュリティホールを見つけた悪意及び善意のハッカーによるファンド流出においては正義の上で成り立っている事象であるという意見もあります。もちろんそれが絶対に起こり得ない「can’t be evil」という思想でのオープンなセキュリティ体制がこれまで以上に求められると思います。また、多くのハッキングが人為的な部分がセキュリティホールになり得てしまっているのも事実です。資金はトレジャリーウォレットでマルチシグ管理は大前提あると思いますし、開発体制下でのセキュリティマネージメントはとても重要です。

Slashはプロトコルの構造上お客様及びマーチャントの資金のカストディをしません。通常の決済サービスと違い決済の瞬間にファンドが加盟店の元に届きます。この思想は私達のサービスの立ち上げ構想段階から続いている思想であり資金のプールをが無い以上ハッキングが起こり得ないという事実にも繋がります。

また私達は開発、運用体制の基礎としてトレジャリーウォレットでのマルチシグ管理を徹底し安心で安全なプロジェクト体制を確立しています。

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参考:Slash
デザイン:一本寿和
images:iStocks/scyther5・Peshkova

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。