暗号資産税制改正求め金融庁に要望書提出
一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が、共同で暗号資産(仮想通貨)に係る2023年度税制改正要望書を取りまとめ、7月29日付で金融庁へ提出したことを8月3日に発表した。
この要望書を作成した経緯として、日本はかつては暗号資産やブロックチェーン領域で世界をリードする立場にあったが、現行の暗号資産税制などの影響で海外に拠点を移す会社や人材が増えてしまい制度設計などに遅れが生じていることが説明されている。
また今後より進展することが想定される暗号資産を利用した資金決済分野の革新や、暗号資産技術の応用による経済社会の高度化に際し、日本の優位性を損ない次世代技術を用いた産業の戦略的な取り込みが危ぶまれる状況となっているとも言及されている。
そして具体的には、パブリックブロックチェーンを活用した暗号資産は、現状ブロックチェーンの分野で最も成功しているセクターであり、NFTやDAOの発展と密接に関連にしているにも関わらず、税制が正しく適応されていないとしている。このような現状を克服するために、暗号資産税制に関する要望書を作成したとのことだ。
なお税制改正要望書の主となるポイントは次の3つだ。
分離課税
暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。暗号資産デリバティブ取引についても同様とする。
法人税
期末時価評価課税の対象を市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(短期売買目的)で保有している市場暗号資産に限定し、それ以外のものを対象外とすることを要望する。少なくとも喫緊の課題への対応として、まず自社発行のトークンについて対象から除くことは必須である。
資産税
相続により取得した暗号資産の譲渡時の譲渡原価の計算について、取得費加算の特例の対象とすることや、相続財産評価について、上場有価証券と同様、相続日の最終価格の他、相続日の属する月の過去3ヶ月の平均時価のうち、最も低い額を時価とすることを要望する。
ちなみに要望書には、海外の暗号資産税制について「海外各国における暗号資産税制との比較では、米国及びイギリスでは暗号資産の取引によって生じた利益は他の金融資産と同様のキャピタルゲイン課税(概ね20%、米国は1年以上保有の場合)として固定税率課税とされているほか、ドイツのように1年以上保有している暗号資産の取引については原則として課税対象としていない国も存在する」と説明されている。
追記:8月4日17時30分
JCBA税制検討部会副部会長の竹ヶ原氏と会長の廣末氏へ取材
あたらしい経済編集部は、JCBA税制検討部会 副部会長の竹ヶ原 圭吾(コインチェック常務執行役員)氏とJCBA会長の廣末 紀之(代表取締役)氏へ取材を行った。
−−税制改正要望項目の法人税についてですが、短期売買目的かどうかは何を基準に判断すれば良いのでしょうか?
竹ヶ原氏:有価証券の規定と同様、「①トレーダーがいること」、「②売買記録を示す帳簿があること」となります。
具体的には要望書に記載の下記のとおりです。
「短期売買目的であるか否かは外形的・客観的に判断する。例えば、短期売買商品の時価 評価課税の対象は、基本的には、①市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(短期売買目的)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行ったものと、②上記①以外で、その取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を帳簿書類に記載したものに限定されている(法人税法第61条3項、法人税法施行令第118条の4、法人税法施行規則第26条の7)。暗号資産の保有が短期売買目的であるかどうかについても、そのトレーディング業務を行う専門の担当者(トレーダー)が存在するか、あるいは法人がその取得の日において「投資暗号資産」などと帳簿書類に記載しているかを基準として判断する。」
−−また今年後半は、JCBAはどのような取り組みに重きを置くのでしょうか?
廣末氏:広税制に関しては関係省庁との連携やロビイング、ステーブルコインに関しては改正資金決済法成立を受けて年度末に向けて具体化されていくであろう政省令へ事業者意見を届けること、暗号資産に係る会計基準整備の働きかけなど、日本のweb3推進に向けて幅広く環境整備に取り組んでまいります。
参考:JCBA
デザイン:一本寿和
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