【取材】web3企業shiftbaseがCCCから資金調達、そして代表交代の理由は?

shiftbase、カルチュア・コンビニエンス・クラブから調達

国内web3スタートアップの「shiftbase」が、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社を引受先とした第三者割当増資と、金融機関からの借入により、シードラウンドで総額3.1億円の資金調達を実施したことを7月19日発表した。

「shiftbase」 はweb3エンジニアコミュニティ「UNCHAIN (アンチェーン)」を運営する企業。「UNCHAIN」では、dApp(分散型アプリ)構築やNFT制作など、実際に手を動かして学ぶことのできるプロジェクト型学習コンテンツが無料で提供されている。今年3月末からは学習履歴証明書NFTやERC20規格のソーシャルトークン「$CHAI」の発行をオンチェーン化し、本格始動を発表。現在、1,100名以上がコミュニティにエントリーし、イーサリアム(Ethereum)、ポリゴン(Polygon)、ソラナ(Solana)などのパブリックチェーン上で実践的なdApp開発を学んでいる。

今回調達した資金は、「UNCHAIN」のポータルサイトの機能拡張・学習コンテンツの拡充・トークンエコノミクスの構築・プロトコル開発などの事業投資と、採用の強化に活用していくとのことだ。

「shiftbase」に出資したカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEOの増田宗昭氏は次のようにコメントしている。

「今、世界は大きく変化しています。特に注視すべきは「企業の時代」から「個人の時代」へのシフトと、それを支えるweb3。正解のないテーマに挑んでいる若者たちを応援するとともに、CCCグループもweb3の世界に適合できるよう、彼らとともに学びたいと考え、出資させていただくことにいたしました」

志村侑紀氏から中野裕介氏へ、代表取締役交代

また今回の調達に合わせshiftbaseは、創業時の志村侑紀からCo-founder中野裕介へ代表取締役を交代したことも発表した。

今回の代表交代で、エコシステムを拡張していく上で最も重要なコミュニティに前代表の志村侑紀のリソースを集中投下し、コミュニティの自律、分散を加速させていくことを狙うとのことだ。

「shiftbase」が代表交代した理由は?

「あたらしい経済」編集部は、shiftbaseの新代表である中野裕介氏と、前代表の志村侑紀氏を取材。今回の代表交代の理由について訊いた。

–今回代表を交代する理由を教えてください。

志村:私たちshiftbaseのCo-Founder4人は、みんな違ったスペシャリティを持って、これまで自律分散的に仕事をしてきました。資金調達も落ち着き、みんなのやるべき仕事とその特性がより明確になってきたタイミングで、改めて適材適所に人員を配置したいと考えたんです。

私はコミュニティに向き合うことで最もパフォーマンスが発揮でき、一方今回代表を引き継ぐ中野は、組織運営やオペレーション、ステークホルダーとのやりとりに長けています。

これからは私がコミュニティにより集中し、中野が会社をマネジメントしていくことが、シンプルに一番私たちのパフォーマンスが高められると考え、今回の意思決定をくだしました。

中野:実はこの話自体、志村から出てきたアイデアでした。ある日、志村から僕に代表を交代しようと提案があったんです。その後チームで議論を重ねた結果、志村がコミュニティと向き合い、僕がビジネス的なステークホルダーと向き合う、この体制がshiftbaseとして最も勝率が高いと考え、提案を受けることにしました。

–志村さんは今後、具体的にどのような活動にフォーカスしていくんですか?

志村:web3にとっては企業ではなく、コミュニティが主役だと思ってます。私たちにとっては、「UNCHAIN」のコミュニティメンバーが主役です。だから私がリーダーとして牽引するというわけではなく、コミュニティに寄り添い、まずヒアリングや、コミュニティ内のフローの改善など全般的なサポートやファシリテーションを積極的に進めていく予定です。

その上で「UNCHAIN」にはSTAR PASS(スターパス)という学習履歴証明証NFTと、ソーシャルトークン「$CHAI」がコミュニティ内の相互学習の貢献者に対して付与されています。それらの設計が言わずもがな重要です。コミュニティにいることの価値を上げ、そこにある熱量を落とさないように、「$CHAI」のユーティリティを拡充していくフェーズになってきました。

現在、考えている「$CHAI」のユーティリティの拡張構想には、オンラインだけではなく、オフラインでも利用できるシーンを増やしていくものがあります。どのようにユーティリティを拡張していくのかについては、コミュニティのニーズも拾いながら、全体設計を行っていこうと思っています。

–中野さんは会社をどのように経営していくお考えですか?

中野:まず今回の資金調達で、現時点で想定していた僕たちのやりたいことに必要な資金を得ることができたと思ってます。年内にプロダクトの開発は落ち着くので、来年以降、本格的にトークンエコノミクスを社会実装させていくために、そのスキームの検討や、プロトコル開発、「$CHAI」のユーティリティ拡張を目的とした外部連携を強化していきたいと思っています。

志村:ステークホルダーの方々に対し、誠実にプロフェッショナルに向き合えるのが、中野なんです。彼がいたから今回の資金調達も上手くいったと思っています。shiftbaseは「個人の選択肢を豊かにし、自分らしく生きる人が増える社会の実現」という、理想を掲げているからこそ、事業面では地に足をついた取り組みが必要になる。それを、新しい代表に期待しています。

中野:おかげさまで「UNCHAIN」のコミュニティへのエントリー者数は1,100名を超えました。今後、「UNCHAIN」というコミュニティはただ単に学習するための場にとどまらず、web3の技術スタックを学んだエンジニアの「学ぶ」「働く」「共創する」といったライフサイクルを支えるインフラ提供を目指していきます。

「個人の選択肢を豊かにし、自分らしく生きる人が増える社会を実現する」というミッションに本気で挑戦するための自由と責任を、shiftbaseを応援してくれている皆様から賜ったと感じています。理想と現実の距離ギャップに葛藤する日々が続きますが、代表として、地に足つけ、頭雲抜けるよう、前に進んでいきたいです。

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この記事の著者・インタビューイ

設楽悠介

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長 幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。