シンガポール規制当局、金融企業らとトークンやDeFi研究イニシアチブ発足

シンガポール規制当局、金融企業らとトークンやDeFi研究イニシアチブ発足

シンガポール金融管理局(MAS)が、トークンや分散型金融(DeFi)のユースケースを研究するためのイニシアチブの発足を5月31日に発表した。

このイニシアチブの名称は「プロジェクト・ガーディアン(Project Guardian)」で、金融企業らと共同で進めていくという。イニシアチブの発足背景には、トークンや分散型金融に革新性を見いだしているからとのことだ。

特にMASは資産のトークン化にポテンシャルを示している。MASはトークン化を「ブロックチェーン上のスマートコントラクトを通じて、資産や価値あるものをデジタルで表現するプロセスです」と定義。

そしてトークン化することで「高価値の金融資産や実体経済資産を分割し、インターネット上でピアツーピアで交換することが可能になります」と説明している。

MASは「プロジェクト・ガーディアン」を通して、金融の安定性と完全性に対するリスクを管理しながら、資産のトークン化とDeFiにおけるアプリケーションの実現可能性をテストしていくとのことだ。具体的に、MASは4つの主要な分野でユースケースを開発し、試験運用していくようだ。

4つの主要分野として「オープンで相互運用可能なネットワークのパブリックブロックチェーンでの運用」、「トラストアンカー(認証局)」、「トークン化」、「機関投資家向けのDeFiプロトコル開発」が挙げられている。

そしてMASは、「プロジェクト・ガーディアン」の第一弾として、 大手企業の資金調達市場におけるDeFiアプリケーションの可能性を探っていくことを発表した。

これにはシンガポール最大手銀行のDBS銀行、JPモルガン、マーケットノード(Marketnode)などが参加し、トークン化された債券と銀行預金からなる許可制のトークンの流動性プールが作られるという。

ちなみにこの第一弾プロジェクトは、スマートコントラクトの実行を通じて、パブリック・ブロックチェーンベースのネットワーク上で担保付きの借入と融資を行うことを目的としているとのことだ。

なおMASは、金融機関らが規制のサンドボックス制度を活用して、試運用できるよう働きかけているという。

MASのCFOソプネンドゥ・モハンティ(Sopnendu Mohanty)氏は、次のようにコメントしている。

「MASは、デジタル資産のエコシステムの革新と成長を注視し、消費者、投資家、金融システム全体にとって、新しいテクノロジーに伴う潜在的機会とリスクについて取り組んでいます。金融業界や広範なエコシステムでの実践的な実験を通じて、急速に変化するデジタル資産のエコシステムに対する理解を深めたいと考えています。プロジェクト・ガーディアンから得られた教訓は、DeFiのリスクを軽減しながらその利点を活用するために必要な規制の枠組みについて、政策市場に情報を提供する役割を果たすでしょう」

DBS銀行のグループ企画・戦略責任者ハン・クーファン(Han Kwee Juan)氏は、次のようにコメントしている。

「DBSは、金融の安定性と完全性に対するリスクを管理しながら、取引、清算、決済における効率性と拡張性を高めるデジタル資産とDeFiのコンセプト活用の可能性を探る取り組みを主導できることを嬉しく思います。パブリックブロックチェーン上で開発されたこの試運用は、ブロックチェーン上の機関投資家向け金融アプリケーションの革新、進歩、拡大への取り組みと、既存の金融市場で長年確立されてきたレールとの異なるブロックチェーンネットワーク間での相互運用性を促進するものとしても極めて重要なものとなっています。DeFiソリューションのこうした初期の試みは、最先端の金融センターとしてのシンガポールの競争力と関連性を確保すると確信しています」

参考:MAS
imaes:iStocks/Rawpixel・NanoStockk
デザイン:一本寿和

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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