FRB、中銀デジタル通貨発行に伴う金融政策への影響に関する論文公開

FRB、CBDC発行に伴う金融政策への影響を分析

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)がCBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行に伴う金融政策への影響をまとめた論文を5月31日に発表した。

論文のタイトルは『リテール型CBDCと米国における金融政策実施:定型バランスシート分析(Retail CBDC and U.S. Monetary Policy Implementation: A Stylized Balance Sheet Analysis)』だ。

この論文では、連邦準備制度、商業銀行、家計という3つの経済主体を想定し、リテール型のCBDCを発行でそれぞれのバランスシートにどのような変化が生まれるかをシミュレーションし、金融政策への影響を明らかにしている。

この論文の結論は「CBDC発行による金融政策実施への影響はそれぞれの経済主体のバランスシートの初期状態に依存するが、CBDCの発行によって短期金利の上昇やフェデラル・ファンド金利の上昇を引き起こす可能性がある。しかし、それらの金利上昇は連邦準備制度のオペレーションによって緩和できる」という内容だ。

なおCBDCの発行が金利の上昇をもたらすまでの過程は次のようになっている。まず、連邦準備制度がリテール型のCBDCを発行し、それを消費者が商業銀行への預金を使って購入する。

銀行側は預金減少に伴って準備金を減らす。銀行は準備金を補填するために、証券や貸付金の売却、魅力的な預金商品の販売などを通じて現金を増やす。これにより銀行間の競争が激しくなり、市場の短期金利が全体的に上昇する。

このような金利上昇圧力に対し、連邦準備制度はディスカウント・ウィンドウやスタンディング・レポ・ファシリティなどを実施することによって短期的に金利上昇を抑制することができる。また、国債を買うことによって銀行の準備金を増やすことも可能とのことだ。 

そしてこの論文では分析の複雑化を避けるために、CBDCに利子は付かず、CBDCを利用できるのは米国の家計と企業のみであり、金融機関が大量のCBDCを保有することはないという仮定を置いている。また金融機関によるCBDCの利用可能性にまで議論を広げることができれば、CBDCの初期パラメーターを設定する際に有用な情報になりうるとしている。

参考:FRB
デザイン:一本寿和

images:iStocks/Aleksandr_Vorobev・paitoonpati

この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部 一橋大学2年生 真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。

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