英国財務省、デジタル資産決済企業の破綻措置を提案
英国財務省が、ステーブルコインを含むデジタル決済資産を利用した決済システムを提供する企業(Digital Settlement Asset:DSA)の、破綻に対処する枠組みを定めた提案書を5月31日に公開した。
イギリスでは、DSA企業が破綻した場合、特別管理制度(SAR)によって金融への影響を最小化するための措置が施される。このSARには、金融市場インフラ特別管理制度(FMI SAR)と支払・電子マネー特別管理制度(PESAR)の2種類が存在している。
FMI SARはイングランド銀行が監督者であり、破綻した決済システムの債権者の利益よりも、そのサービスの継続によって金融安定化リスクを軽減することを優先する。一方でPESARは英金融規制当局(FCA)が監督者であり、顧客資金の迅速な返還を目的とする。
DSA企業が破綻した場合、現時点ではどちらの特別管理制度が適用されるかは明確に定められていない。
そこで財務省は今回の提案書にて「DSA企業の破綻の際にはFMI SARを適用するべきである」と主張した。その主な理由は「DSA 企業の管理は、FCAではなくイングランド銀行が主管するべきだと考えているため」としている。つまり顧客への返済よりも、金融安定化リスクの最小化を重視するということだ。
財務省はこの提案に関する意見や質問を8月2日まで募集している。
なお英国財務省は4月初旬に、英国を世界的な暗号資産業界のハブにするための計画を発表。その計画では、財務省が法定通貨にペッグするステーブルコインを規制し、国内で決済手段として利用できるよう整備していく方針を示している。さらにはステーブルコインを決済手段として国内で使用できるようにするため、決済規制の範囲内に入れるよう立法化する意向も表明している。
参考:英国財務省
デザイン:一本寿和
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