「もっとビットコインエンジニアを増やしたい!」|Bitcoin Hackathon for Mobile Developer イベントレポート

ハッカソンの概要

Bitcoin Hackathon for Mobile Developerとは、「ビットコインのエンジニアを増やしたい!」という目的のもと、CryptoAgeとYenomが共同開催したモバイルディベロッパー向けのハッカソンです。
昨今、ブロックチェーンを利用したアプリケーション、DApps(分散型アプリケーション)の開発が世界中で行われており、5月時点では400個ほどだったものが、8月18日時点で1700個超(※1)と急速に増加しています。
(※1)STATE OF THE DAPPSにて確認

そのうち多くのDappsはEthereumで開発されており、Bitcoinで開発されているものは世界的にみてもまだまだ数は少ない現状です。実際に運営メンバーも、Bitcoinで複雑なスクリプトがかけることやEtheruemと同じようにDappsを開発できることを最近まで知りませんでした。今回はそのような事実を伝えて、もっとビットコインエンジニアを増やしたいという思いから、ハッカソン開催に至りました。

また、Yenom社は8月初旬に、簡単にウォレットが作れるSwift用OSSライブラリ「BitcoinKit」をリリースしており、今回のハッカソンではこのライブラリを主に活用したプロダクト開発が行われました。

当日の様子

今回のハッカソンは、本郷のブロックチェーンコワーキングスペース HashHubのイベントスペースを提供いただき開催が実現しました。34名の参加者が北は岩手、南は福岡から集まり、10チームに分かれてアプリの開発に取り組みました。

開会式では、審査員を務める株式会社chaintope CTOの安土 茂亨 氏、スポンサーのBitcoin.com 開発者 Paul Bergamo 氏より激励の言葉をいただき、運営陣によるビットコインに関するハンズオンへと移りました。

ハンズオン

「Bitcoin Hackathon for Mobile Developper」という表題の通り、今回のハッカソン参加者はビットコインに触れたことのないモバイルディベロッパーがほとんどです。まずは根幹となるインプットとして、YenomとBitcoin.comの開発者よりハンズオンが行われました。

Txの仕組み by Yenom 宇佐美 (@usatie)
Androidハンズオン by Yenom 内田 (@yuikijp)
Bitboxハンズオン by Bitcoin.com Paul氏 (@PorlyBe)

アプリ開発の様子

アイスブレイク

各チーム2〜4人で構成され、合計10チームとなりました。

チームとはいえ、ほとんどの方がその日初めて会ったばかり。まずはアイスブレイクをし、一緒にランチを食べて、この後に控えるアイデアソンに向け親睦を深めました。

アイデアソン

「よーい、ドン!」でアプリ開発、というわけにはいきません。
・モバイルしか出来ないこと
・ビットコインしか出来ないこと
・上記2つを掛け合わせる
といったフレームワークでまずはアイデアを付箋に書いて量産します。

付箋に書き出したアイデアを「新規性」と「開発難易度」という2つの軸でプロットし、さらにアイデアを発展させます。この段階になるとチームもすっかり打ち解け、議論はますます白熱していました。

開発スタート!

できたアイデアを元に、いよいよ開発がはじまります。参加者各位が積極的に運営陣・審査員に質問の雨を降らせます。

また、審査員の安土 茂亨 氏から「Bitcoinで作るSmart Contract」、宮本 丈 氏からは「BitAuthについて」と、アイデアをさらにブラッシュアップさせるテーマで全体への講義を行っていただきました。審査員のお二人は、先月開催のHashHubカンファレンスでも登壇されていることからもわかる通り、日本のビットコイン業界をリードする方々です。運営側も仕事を忘れて最前列で聞いてしまう、お金を払って聞くような豪華な講義でした…!これだけでも参加したい人はかなり多いはずです。

安土 茂亨 氏「Bitcoinで作るSmart Contract」
宮本 丈 氏「BitAuthについて」

講義資料:
安土 茂亨 氏「Bitcoinで作るSmart Contract」
宮本 丈 氏「BitAuthについて」

講義が終わった後も開発は続き、23時になっても議論の声と笑顔はやみません。参加者の3分の1がほどが一晩中開発しており、その熱量に運営側も驚きました。

プレゼン

10時間を超える開発が終了し、各チーム7分を持ち時間とするプレゼンを行いました。審査は、chaintope 安土 茂亨 氏、HashHub 宮本 丈 氏、Bitcoin.com Gerald Fabrot 氏・Paul Bergamo 氏といった豪華なメンバーを迎え、下記の審査基準をもとに行われました。

ひとつの基準として、「ビットコイン関連部分の実装力」があるので、各チームがスライドにビットコインスクリプトや、エクスプローラーのOP_RETURNなどを埋め込み、今後の展望も含めて発表してくれました。

入賞チーム

Ken Shishido賞 ー 「チーム長野から来た」

塾講師を例に、「時間を売る商売において延長料金を払われない問題を解決したい。」という想いのもと、開発は終わらなかったものの、Bluetoothとマルチシグを用いた1分単位でのマイクロペイメントの構想を笑いと共に届けてくれました。

東京ビットコインミートアップオーガナイザー 宍戸 健氏より、賞品として0.1BCHが贈られました。

Ken Shishido賞 ー 「チーム長野から来た」

Yenom賞 ー「sumo」

「歩いて、痩せて、稼げる。二度おいしいダイエット支援アプリ sumoウォレット」は、OP_RETURN に目標歩数を入れ、それに満たなかった場合は自分のビットコインがバーンされるというアプリ。今後の展望として、歩数をランキング化し上位がビットコインをもらえる機能追加に加え、その際の不正を検知するために、チーム制やモバイルならではのGPS導入などの構想を話してくれました。
賞品として、Yenomから「ビットコインしろTシャツ」が贈られました。

Yenom賞 ー「sumo」

HashHub賞 ー「Team crypto」

転売チケットの高価格化を防ぐべく、multisigとlocktimeを使って、転売フローにチケット販売元を挟むことで定価での販売を実現したアプリです。チケット情報はブロックチェーンにて管理されます。
賞品として、協賛のHashHubから「1ヶ月間ホットスペースの無料利用権」が贈られました。

HashHub賞 ー「Team crypto」

第3位 ー「MatrixWallet」

たった2人でオフチェーン×オンチェーンのアトミックスワップを実装したMatrixWalletチーム。今回はBCH(オンチェーン)とBTC(ライトニング)のアトミックスワップに成功。高い技術力でやりきり「動画ではわかりにくいですが、コードを見てください。」と力強い一言をくれました。
第3位の賞品として、協賛のBitcoin.comから「0.25BCH」が贈られました。

第3位 ー「MatrixWallet」

第2位 ー「Craft Chain」

「モバイルでの投票は手軽さのあまり、無責任な投票をしている人が多い。」そう話すCraft Chainチームは、大学のミスコンを例に、ビットコインを用いることで一票に重みを出すアプリを開発しました。重みをだすほかにも、OP_RETURN、multisig、Timelockを用いて応援メッセージの投稿や、出場者へのインセンティブ設計を実現しました。
第2位の賞品として、協賛のBitcoin.comから「0.5BCH」が贈られました。

第2位 ー「Craft Chain」

第1位 ー 「Clock Wallet」

第1位は、遺産相続を楽にする「Clock Wallet」チーム。「遺産相続で起こる問題は、少子高齢化のこれからもっと増えていく」と課題をあげ、指定した年月が経つと、指定したユーザが引き出せるClock Walletを開発しました。アプリを閉じる際にトランザクションを発行することで、ウォレットにありがちな秘密鍵紛失・スマホ故障などの問題にも対応しました。審査員のHashHub 宮本 丈 氏からは「なぜこの類のアプリが出てないのか不思議、早く出した方がいい。」と太鼓判をもらい、映えある第1位を獲得しました。
第1位の賞品として、協賛のBitcoin.comから「1BCH」が贈られました。

第1位 ー 「Clock Wallet」
第1位の賞品として、協賛のBitcoin.comから「 1 BCH 」が贈られました。

審査員の安土 茂亨 氏・宮本 丈 氏からは、「想定以上のレベルに驚きました。単純に嬉しいです。」と喜びの言葉を、Bitcoin.comのジェラルド氏・ポール氏からも、本ハッカソンに対する賞賛の言葉をいただきました。

 

最後はお待ちかね、懇親会!

ピザとビールを両手に抱え、チームを超えて交流し、2日間の疲れを飛ばしました。ところどころで聞こえてくる喜び、無念、ビットコインへのワクワク感を含んだ声、そして全員での記念撮影写真に映る笑顔は「ビットコインのエンジニアを増やしたい!」と意気込んだ運営の私たちに、ビットコインのポテンシャルの大きさを改めて感じさせてくれました。

懇親会の様子
最後に集合写真、笑顔と疲れが垣間見えます。

第二回の開催決定!

今回はCryptoAge、Yenom共に初めてのハッカソン運営でした。今回の反省を活かし、第2回のハッカソン開催も決定しました!第2回のご参加もお待ちしております!!
申し込みはこちらから!!

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この記事の著者・インタビューイ

溝口慎也

株式会社Yenom デザイナー 1992年生まれ、三重県伊勢市出身。 2016年にSIerを退職し、3人目のメンバーとしてYenomにジョイン。ユーザー体験の設計など、プロダクトの質に関わるUXデザインを中心に、必要になったことはBizdevやCS、広報まで幅広く担当。 株式会社Yenom 「ビットコインで、世界を遊ぶ。」をミッションに掲げ、ビットコイン初心者の方でも簡単に使える「とびきりやさしいビットコイン・ウォレットアプリ Yenom」や、Swift用OSSライブラリ「BitcoinKit 」を開発・運営している。