【取材】FC琉球がIEOで約10億円調達も「FCR」大幅下落、GMOコインのルール変更も影響か

FC琉球がIEOで約10億円調達も「FCR」大幅下落

サッカーJ2リーグに加盟する「FC琉球」が国内2例目となるIEO(Initial Exchange Offering)をGMOコインで実施し、総額10億円を調達したことが分かった。

なおIEOで発行した暗号資産「FCRコイン(FCR)」はGMOコインにて5月18日より取引開始するも、GMOコインによる投資家への急な販売ルールの変更などで価格が急落、IEO販売価格を大きく下回り物議を醸している。

IEOとは暗号資産交換業者(取引所)を介して行われる資金調達の方法だ。暗号資産交換業者が発行者の事業内容や調達した資金の用途などに対して審査を実施し、新規発行されたトークンの販売を行うモデルとなる。国内のIEO事例としては昨年7月にコインチェックが実施したHashpalette(ハッシュパレット)のパレットトークン:Palette Token(PLT)がある。

今回のIEOについて

「FC琉球」を運営する琉球フットボールクラブは、4月27日から5月18日14:59までの期間にて国内暗号資産(仮想通貨)取引所GMOコインを通じてIEOの募集を行った。

このIEOにより「FCRコイン(FCR)」の総発行量10億FCRの45%となる4.5億FCRを10億3950万円(販売手数料と消費税込み)で販売完了したとのこと。

なお「FCRコイン」の募集価格は1FCRで2.2円。募集1口あたり2,500FCR(5,500円)で、最大申込口数は9,000口=2,250万FCR(4,950万円)となっていた。

「琉球FC」は調達した資金の使途について、クラブ強化育成費や運営費、FCRコインの活用ができるプラットフォーム「FC RYUKYU SOCIO」のエコシステム構築に使用すると発表している。

「FCR」上場、取引制限が変更に

IEOを経て「FCRコイン」は同日5月18日よりGMOコインに上場。「取引所サービス(現物取引)」にて取り扱いが開始されることがアナウンスされた。

しかし、その際のGMOコインの発表で「FCRコイン」の最大取引数量が1日あたり100万FCRとなっていることが明らかになり、投資家によってはFCR売却にあたり数日かかることが判明(Twitter上では最大当選者は約1,300万FCR保有との情報あり)。

さらにはIEO当選自体がFCRの買いとみなされたことで、100万FCR以上当選した投資家は1日の取引量を超過したことになり、上場当日に取引が出来ない状況になった。

この状況についての投資家からの声を受けてか、取引開始から約1時間半経過後に100万FCR/日の取引制限が2,000万FCR/日に変更されることが、GMOコインからアナウンスされた。

そのためFCR大量保有の売り圧力が発生し、IEO販売価格2.2円だったFCRは1円台に価格割れ。上場翌日となる記事執筆時点(5/19 12:00)でその価格は0.7円台を推移している状況だ。

今回の上場後の価格下落について、そもそも上場後すぐに売り抜けようとする投機的な参加者が多かったとも想定できるが、重なった要因として「事前に上場の取引制限について具体的に知らされていなかった」「GMOコインによる急な取引制限の変更が売り圧に繋がった」というような声もネットを中心に上がっている。

GMO広報事務局に取材

「あたらしい経済」は本件に関してGMO広報事務局を通じGMOコインに取材、回答を得た。

–「FCRコイン」の1日の取引制限100万枚の上限は事前にユーザーへ公開されていたのでしょうか?

5月18日の上場タイミングと同タイミングで公表いたしました。

–もしされていなかった場合、その理由についてお教えください。

他の新規取扱銘柄についても、上場タイミングでの取引ルール公表となっており、従来と同様の対応となりました。

–上場後1.5時間後に取引制限を2000万枚に変更することに至った経緯やその理由についてお教えください。

マーケットの状況や、お客様からの問い合わせの状況を勘案し条件変更をすべきであろうと判断したため、上限を変更することといたしました。

–取引制限変更の判断にFC琉球は関わっていたのでしょうか?

取引条件変更の判断はGMOコイン単独で行っており、FC琉球様は関与しておりません。

—— なお記者は「上場後1.5時間後の取引条件変更によるFCRコインの価格への影響について想定はしなかったのか」という質問も投げかけたが、回答が得られなかった。

琉球フットボールクラブ代表取締役会長の倉林啓士郎氏へ取材

「あたらしい経済」編集部は株式会社イミオ代表取締役社長で、FC琉球の琉球フットボールクラブ代表取締役会長の倉林啓士郎氏も取材を実施した。

–「FCRコイン」大量保有の売り圧力が発生することは、想定されていましたでしょうか?

想定していませんでした。 今回のタイミングではチームやアドバイザリーの保有分はロックアップされていますので、売却できるのはIEO参加者のみでした。

3週間という比較的長めの応募期間を設けて、申込キャンセルもできる仕様でしたので、IEOへ投資判断して頂いた方が、すぐ(即日)にそれ以下の値段で売るというのは考えづらかったため、値下がりはしづらいと思っておりました。

–一部のプロジェクトチームとアドバイザー報酬についてはロックアップ期間設定しない理由を教えてもらえますでしょうか?

GMOコイン割当分は取引安定(価格が急騰し過ぎた場合)を図るためにアンロックとしていました。 しかし、今回に関しては急騰はなかったので、GMOコイン社が保有する「FCRコイン」についても引き続き保有して頂いており、現時点で売却はされておりません。

–一日の取引上限設定の具体的数量は、事前に認識していましたか?また当日取引上限を変更したことの意思決定に御社は関与していましたか?

取引条件に関しては取引所であるGMOコインさんにお任せしており、意思決定にも関与していませんでした。

–「FCRコイン」の活用について、今後の具体的な方針を説明してもらえますでしょうか?

「FCRコイン」を使って、ファンサポーターと選手やクラブが繋がることができるFCR SOCIOをアップデートしていきます。 投げ銭機能や投票機能が既にあり、今後、トークンパートナー機能やグッズやNFTの購入機能などが追加されていく予定です。数年後からは沖縄の提携加盟店で地域通貨のように使えるようにすることも考えています。

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この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。