起業家によるブロックチェーン時代のアプローチ|HashHub Conferenceレポート

2018年7月21日(土)に東京大学で「HashHub Conference」が開催されました。

他のセッションが堅めな話題で粛々と進行する中、笑いを交えて会場を沸かせたのが、起業家の有吉伸宏氏、國光尚宏氏、平野淳也氏の3名による「起業家から見たブロックチェーン」のセッションです。

「今のブロックチェーン・暗号通貨市場ってちょっと下がって来ているんではないか」と思って当領域での起業を躊躇している人、必見です!

トークセッションの内容をできるだけ本人の言葉を残したまま記事にまとめました。

登壇者

  • 有安 伸宏氏(エンジェル投資家)
  • 國光 宏尚氏 (株式会社Gumi 創業者&代表取締役会長)
  • 平野 淳也氏(株式会社HashHub 共同創業者&COO)

 

ブロックチェーンに興味を持ったきっかけ

平野(敬称略):お二人がブロックチェーンに興味を持ち出した時期はいつ頃ですか?また、どのような点に今関心を持っていますか?

有安(敬称略):僕は「Tokyo Founders Fund」という仲の良い起業家8人でやってるファンドの合宿で「会費をビットコインで集める」って言われた時です。

その時は8人中2人くらいしか取引所にアカウント持っていませんでした。

國光(敬称略):誰と誰が持ってたの?

有安:詳しくは覚えていませんが、(Heyの)佐藤祐介とか持ってたはずです。

2014年当時、確か1BTCが2万円とか2万5千円とかの時でした。

とりあえずbitflyerを開けて、「うわ、これは怪しいな」と感じたことを覚えています。

で、なんか周りが騒がしくなってきて、これは面白いものだと思ったって感じです。

國光さんは昔、すごいブロックチェーン批判してましたよね。

平野:國光さんのファーストインプレッションと今の関心どころも聞きたいですね。

國光:今gumiっていうモバイルゲームの会社をやっていて、新規事業として「モバイルの動画とVR/ARと仮想通貨ブロックチェーン」っていうのをやっています。仮想通貨ブロックチェーンのところでgumi Cryptosっていう30億円くらいのファンドを作ったのと、フィナンシエっていう独自のプロジェクトをやってるっていう感じです。

一番最初に仮想通貨が胡散臭いと感じたのは、昔にMonaコインを紹介されて「Monaコイン買って、gumiとかのゲームでMonaコイン使えるようにしたら上がるよ」って言われてクソだなって思ったからなんです。それ以来、凄い偏見を何年間か持っていました。批判派でしたね。

ちょうど、Anypay、Gunosyの木村さんとコロプラの千葉さんから「自分は仮想通貨持ってるのか?」と聞かれて持っていないと答えると「起業家が食わず嫌いでどうするんだ」と言われました。

そこから徹底的に調べてあげてから批判しようかなと思って調べたら「おやおや?すごくね?」ってなってすぐさま前言撤回しました。

起業家にとって必要なのは柔軟性で、前言撤回を恐れないのはとても大事です。

あと言っておくと、ブロックチェーンは凄いですよ!仮想通貨は凄く世の中を変えていくと思います。

 

興味のある領域

平野:お二人が今特に関心持ってる領域やプロジェクトとかありますか?

有安:結構海外の起業家からコンタクトもらって話したりすると、EOSとか「ベター・イーサリアム」系(イーサリアムの進化版)などの下の方のレイヤーの開発プラットフォームやプロトコルレイヤーの話が多い気がします。ただ僕自身はそこにあまり興味はないんです。

むしろもうちょっとその先の、例えば権利とか未上場株式とかの流動性ないものが流動性を持つべく、トークンを出すっていうこと(セキュリティトークンと言われるもの)は興味あります。あとはプライバシー情報をはじめ、管理とか記憶とかにコストがかかっている物をブロックチェーン上でより自律的に管理する分野は面白いと思います。

こういうのは作るのがとても大変なんですが、長期で見ると必ず来るものなので僕は関心があります。

國光:起業とかしてて凄く思うんだけど、この2007年からの10年間っていうのは起業家にとって凄まじく楽な時期でした。なぜかというと、2007年にiPhoneが出て以来10年間でやってきたことって皆スマホファーストなんです。スマホじゃなきゃできないこと、スマホならではの体験、スマホならではのコンテンツ、スマホならではのUI/UXを一から構築したところが勝ちました。

メルカリに関しても、初期はヤフオクが先行していました。メルカリはそれをスマホファーストでやっただけだし、LINEとかもスカイプとかメールあったけど、それをスマホファーストでやっただけです。我々のゲームもスマホファーストでやっただけなんです。

決定的に重要なのは、新しいテクノロジーじゃなきゃできないことをやっていくっていうことです。

ブロックチェーンも同じで、ブロックチェーンファーストを意識しています。ブロックチェーンじゃなきゃできないこと、ブロックチェーンならではのポイントを見つけて来るのがとても重要なのかなと思います。

 

ブロックチェーンならではの3つの特徴

有安:國光さんの目から見て、沢山あるスタートアップの中でブロックチェーンじゃなくてもいいよねっていうのは何%ですか?

國光:99%です。

有安:僕もそう思います。

國光:これは本当に不思議なことなんですが、例えばスマホファーストがあったじゃないですか。でも一番最初にスマホが出てきた時に皆がやったのって、家庭用ゲーム(モンハンとかFFとか)の移植でした。そういうのは一切流行りませんでした。

スマホやVRの動画に関しても、テレビとか映画を持ってこようとすることがあります。同じく、そういうのは一切流行りません。

ブロックチェーンでも、銀行間送金をブロックチェーンに置き換えるとかは馬鹿馬鹿しいと思っています。なぜならすでにSWIFTで出来てますもん。

そういうのはそもそもやる意味がなくて、重要なのはブロックチェーンじゃなきゃできないことにフォーカスするっていうことだと思っています。

そんな中、今僕が見てる領域は2つあります。

1つは、Trustless(トラストレス)で自律的に動くDecentralized(分散型)なネットワーク。これはブロックチェーンしかできません。トラストレスっていうのは要するに、どこかの単一機関が信用の担保をしていないということです。今までのは、日本円だったら信用日銀や日本政府が信用担保をしていたし、楽天ポイントだったら楽天、AmazonポイントはAmazonが信用担保を行なっていました。

しかしビットコインとかって、トラストの部分は誰か特定の人や機関がおこなっているわけではない。誰が信用保証やってるかでいうと多数のマイナーです。マイナーは誰かに頼まれてやってるとかビットコインのためにやってるわけではなくて、自分の利益のために自律的にやっています。しかも中央で管理している機関もおらず、分散的に動いています。なので「トラストレス」で「自律的」に動く「分散型」なネットワークっていうのは間違いなくブロックチェーンでしかできません。

あともう一つは、デジタルデータが唯一性を持つことによって資産性を持ったっていうのも凄まじく新しいです。エンタメビジネスでいくと、もともとはコンテンツビジネスってデジタルデータを売ってたんですよ。音楽はCDにして、映像はDVD、ゲームはパッケージにして。でもインターネット時代になってデータがコピー可能になったからデジタルデータそのものに価値がなくなって全員サービス業になりました。

僕らのゲームも基本は無料でアイテム課金のサービスだし、SpotifyやNetflixもサービスを売るみたいな感じですよね。

でも、面白いのがビットコインはただのデータにも関わらず価値があるということです。

よくブロックチェーンは改竄できないっていうけど、ここよりも面白いのが「コピーできない」という点です。

コピーできないからデータが資産性を持ったっていうのが面白いですね。

 

人々が自分の利益を追い求めることで稼働するネットワークがブロックチェーン

有安:質問いいですか?トラストレスで分散型で自律的なプロトコルが大事だっていつもおっしゃってますが、具体的にどういうアプリケーションをイメージしてるんですか?

國光:2007年に起業していればシンプルにスマホファーストで今まであったやつをディスラプトすれば良かったのと同じように、これからはブロックチェーンファーストでディスラプトすればいいと思っています。

例えば、僕らが今やってるTheta(シータ)というサービスはシンプルで、分散型の動画配信ネットワークです。

動画配信って今どうやっているかっていうと、AmazonがAWSやS3を使って動画配信していますね。今の画像くらいだったらCentralized(中央集権型)でも行けますが、これが4K/8KでフルVRになるとデータ容量が100倍になります。そうなると中央集権的な方法だとしんどいんです。そこをThetaはピア・ツー・ピア(P2P)にするんです。みんなが持っているが使っていないPCや通信環境をシェアリングすればいいと。

だけど、今までもそのようなP2P(日本で言ったらWinny、海外で言ったらBittorentなど)は存在していて、あまりうまくいきませんでした。理由は簡単で、結局みんなワガママだから自分が使うときは使うけど、人のアップロードには協力しないっていうのが大きな問題となっていたからです。そこでこのThetaの面白いところは、人のアップロードに協力すると報酬として自分にトークンが入ります。だからとりあえず自分のPCとかスマホをネットワークに繋げておくだけで、気づけばトークンが入ってるみたいな形になります。

ビットコインのマイナーっていうのも全員世の中を良くしようとかビットコインを良くしようと思っているわけではなくて、単に金儲けのためにやってるんです。つまり、1番経済的に合理的な行動をしている。なのにそれでシステムがワークしているという点が面白いです。要するに性善説でやるんじゃなくて性悪説で皆んなが自分の利益のために動いた、結果ネットワークがうまくいくっていう感じです。

こういうのが自律的とかトラストレスっていう特徴になってくるのかなと思います。

平野:Thetaのプロジェクトに関しては、どう言ったトークン設計で分散型でトラストレスというのを実現してるのかを教えてください。

國光:WinnyやBittorentにトークンを付けて分散型にしたという感じですが、最終的な収益スキームっていうのは面白いです。

まず動画配信する人はThetaトークンっていうのを買って、配信したい動画をネットワークに投げます。それをそこのネットワークに繋がってるみんなでその動画配信を実現します。実現させた貢献度に合わせて一人一人にちょっとずつトークンが入ってくるっていう仕組みです。

Amazonの場合は中央で管理するAmazonに全員がお金を払います。しかし、Thetaの場合はみんなのリソースをちょっとずつ借りるっていう感じだから、今までAmazonにドバッと流れていたお金がみんなでマイニングするという形でちょっとずつお金が個人に流れるようになります。だから、その動画を配信する人っていうのが支払うお金が今までの半額くらいで済みます。

シェアリングエコノミーっていうのとトークンエコノミーっていうのは極めて相性が良いです。現在一番容量が空いているのがPCとかスマホのCPUやGPUです。これをみんなでちょっとずつ出し合って、ちょっとずつ出し合った人にご褒美としてトークンがくるという設計。

ほぼ確実にトークン・ICOは証券となるので、それを前提にしたトークン設計を

平野:國光さんは今gumi Cryptosで日本初のプレイヤーとしてアメリカで暗号通貨領域のファンドをやってらっしゃると思います。これについてお話を聞かせてください。

國光:今ちょうどアメリカのシリコンバレーで30億くらいのファンドやってて合計8件くらい投資してきましたが、ほぼSEC(アメリカの証券取引委員会)の規制の方向性は見えてきました。

ほぼ間違いなく99.9%のトークン・ICOは証券になります。ごくごく一部の、それこそビットコインとかイーサリアムみたいなのがユーティリティおよびコモディティになります。これはほぼ間違いない事実だから、ここから起業する人たちはトークンは基本的に証券になるという前提でやっていた方がいいですね。

証券になったからと言って何か問題があるかっていうと、何一つ問題はありません。結局スタートアップはみんな証券だし、上場してる会社は上場に合わせた形でのルールを守っています。マザーズへの上場に限っていうと、管理部とかも3人くらい採用すればいいだけの話だし、年間コストは1,000万円程度。それで投資家に諸情報を開示すればいいだけの話です。

有安:つまり日本でもできるってことですか?

國光:今、金融庁がまた考えてるみたいですが、金商法にしたほうがいいかもしれません。これは証券として扱った方が分かりやすいし。証券の定義って凄くシンプルで、特にアメリカの方の証券の定義は「”こういうことをやるぞ!”と掲げてお金を人から集めるのは証券」といった感じでとてもシンプルなんです。”配当出すぞ!”でも、”世の中変えるぞ!”でもいいし、”少子化なくすぞ!”でもなんでもいい。ICOのプロジェクトって全部そんな感じですよね。だからこれは基本的に全部証券。

なぜこの規制があるのかというのは凄くシンプルで、要するに投資家保護です。こういうことをするぞって言ってるけど、本当にその人たちが嘘をついていないかどうかは一般の投資家はよく分からないだろうから、プロの投資家でそのリスクが取れる人たちに未上場時の投資は限定しておきます。上場したら、そこでは取引所や証券会社や監査法人が監査するでしょうから、そこまでたどり着いたら詐欺ではないので、一般の投資家も入るっていうルールです。

アメリカはこの方向(ほとんどのトークンやICOは証券になる)で行くのはほぼ決まっているし、マルタ等の一部の国は従わないところはあるけど、確実に流れはアメリカと同じ方向です。これのどこがプラスかというと、今まで個人投資家しか入ってなかった仮想通貨市場に、(生命保険とか銀行とか、個人投資家の1,000倍以上のお金を持つ)機関投資家が入ってくるようになってくる点です。今までただの小さな個人投資家支えられてたところが一気に大きくなってきます。

ほぼ年内にはアメリカの方の規制は決着がついてくるし、その規制の方向性は証券として扱う方向になってきます。これから起業しようと思ってる人は、トークンモデルをこねくり回して既存の仮想通貨交換業規制の中で合法になるようなやり方をやるんじゃなくて、証券になるっていう前提のもとでちゃんとトークン設計をするべきと思いますね。

最近の若い子は、今の日本のルールの中でなんとか合法にしようと思ってサービスとかをこねくり回して、意味が分からなくなりがちです。でもルールは決まるから、トークンモデル自体は自分が一番ベストと思うトークンモデルを作ればいいんです。

 

投資プロジェクトの選定基準は「イケてるチーム」

平野:國光さんに、ファンドからどういった形で投資するプロジェクトを選定してるのかをお聞きしたいです。

有安:僕も國光さんがどうやってインナーサークルグイグイ入ってるのかが気になります。僕はあまり投資できていなくて、やっぱり現地でインナーサークルに入っていないとソーシングができないなと思うんです。

あと僕は結構普通のスタートアップに投資してるので、彼らはユースケースあるじゃないですか。ユースケースないものに投資することに対する心理的な障壁が意外と大きいっていうのも最近あって。

國光:ソーシングの所は、起業家的に見るとブロックチェーンプロジェクトって調べれば調べるほど、良い意味でも悪い意味でも普通じゃないんです。普通スタートアップって、会社の規模も小さく人数も少ないから大手とやりあったら負けます。だからできる限りステルスで行く、できる限り何も言わずに。きづいて大きくなった時にはもう大手が遅いっていうのが普通ですよね。

でも、今のICOって何も完成していない時点から自分達の事業計画を全部晒すし、挙げ句の果てには、だいたいオープンソースです。これでどうやって大手と戦うのかが全く分かりません。これはある意味、イノベーションを促進させているとも言えますが、これじゃ儲かる形にはできないのではないかと思います。

現状、ここまでみんなオープンにしちゃってるから、差別化でいうと「チーム力」しかないと思っています。チーム力や組織力がある所が勝つんだろうなと。それでいうと、GoogleやFacebookが入ってきたら負けちゃいます。

さっきの質問に戻ると、できる限りイケてるチームを見つけて来るのが必要ですね。

それはやっぱりシリコンバレーか、北京とか深センという所に優れたチームが多くいると思うから、そこのインナーサークルに入ることが必要です。

インナーサークルに入るために必要なのは、彼らにとってのメリットをどう示せるかが重要です。今回幸いなのは日本市場が大きいから、ジャパンエントリーっていうのは彼らに対する大きなインセンティブになるということです。

有安:日本の投資家集めじゃなくてジャパンエントリーが刺さるんですか?

國光:そうです。お金はみんないっぱいあるから。

なので日本へのエントリーにしっかり協力するというのと、アジアは全部わかってるからアジア進出の協力までやっていくというメリットを提示できれば、インナーサークルに入りやすいです。

インナーサークルも今まではクリプト系っていう感じのインナーサークルが強かったけど、こっからはシリコンバレー系の巻き返しが強くなると思っています。

こっからおそらく重要になってくるのは、Coinbaseとa16zとPolyChain Capitalあたりです。この辺のマフィア(卒業生)が強くなってくるような気がしています。

平野:そうですね。a16zに関しては5、6個クリプトファンドにLP出資していて、ほとんどの有用なプロジェクトには彼らのお金が行き渡っています。

一方こういったクリプトファンドとかそういった流れを話すと、ICOのようにパブリックに資金調達ができて今までの資金調達をディスラプトするとか、VCで閉じられたネットワークだけだったものがオープンになるみたいな話がされていたことがあったと思うんですけど。けど今現状は新しいインナーサークルができたりしてるわけじゃないですか。その辺に関してどう捉えられていますか?

 

この先、お金を出すだけのLPは淘汰されていく

有安:是正されると思います。ちょっと前なんかはプレセールでちょっと買わせてもらってクラウドセールになったらバーンて上がって売るみたいなものが多かったです。誰かが必ず損をするババ抜きみたいなICOが多かったように感じます。ただ最近はそういうことも減ってきて、調達額も100億円超えるものは減ってきたので、どんどん健全になっていくという話かなと思っています。

黎明期って意外と短かったんだなっていう印象です。

國光:やっぱり普通のクラウドセールで一般の人が投資するっていうのは間違ってると思っています。なぜなら、そこが詐欺しているかを誰もチェックしない中で投資するのはまさに詐欺師が儲けるための仕組みでしかないから。

普通のベンチャー投資って当然そのチームに会って、そのチームのバックグラウンドなどをチェックした上で、当然その人達が詐欺を働かないという弁護士確認とかもやって、彼らが詐欺を行った場合の訴訟するみたいなシステムにするから、お金を出せるんです。

そのくらいのフェーズのスタートアップに対しては、そこまでの審査がしっかりできる投資家がやりつつ、上場した後にその辺のチェックが全部終わってから一般の人が買えるという形が最適だと思います。

ただ、ここで起こる変化は2つあると思っています。特にアメリカの場合だと、一般の人がお金を出せるのは、1000億とか1兆円とかの規模になる企業くらいです。完全に大きくなってからでしか買えません。日本もまさにそうで、非常に健全ではあります。ただ、今後はそこがより企業の成長段階が早いところで一般の人が買えるという形になるから、そこが大きく変わります。

もう1つの変化はLPですね。今のVCはLPから資金を調達します。LPは生命保険や銀行といったところで、要するに市民のお金がいったん生命保険とか銀行に入り、手数料が抜かれてそこからファンドに入っています。ここ(手数料を抜くLP)は確実にディスラプトされて、直接ファンドに人々が投資できるようになってくるでしょう。ディスラプトされるのは目利きになるVCではなく、生命保険とか銀行のようにみんなから間接的に金を預かっているところです。

 

市場が多少へこんでいる時こそが最高の仕込み時

平野:これから3年か5年くらいの視野でこの業界がどうなるかっていう簡単な展望を教えてください。

有安:非常にポジティブだと思います。今相場はへこんでて、僕の知り合いとかでも日本国内でマイニングやってる友人とか日本でDapps作ろうとしてる人とか海外に行ってたり、詐欺師っぽい人とか撤退しています。

しかし昔からWeb業界の人がみんな言うのが「必ずバブルは一回弾ける。必ず冬は訪れる。そこで頑張ったプレイヤーが次春が来た時に正しい事業をローンチできる」と。なので今は仕込み時期として最高だし、このタイミングでスタートアップできるっていうのは本当に幸せだと思っています。お金も本当にジャブついてるので調達もしやすいし、技術動向とか法律も全部変わっているところで、何か変化が起きるところにはものすごいチャンスが訪れるので、学生で起業を考えてる人は絶対起業した方がいいと思います。

平野:変化が訪れる業界、伸びてる市場に市場選択するって言うのは大事なことですよね。

國光:規制が入ってくるのは凄まじく良くて、個人投資家と機関投資家のお金を比べると桁が3つくらい違う(機関投資家の方が1000倍大きい)から、アメリカ中心に日本も規制が今年には決まってくると思うから、ちゃんとした形での市場が興ってきます。

ここで重要なのは、ブロックチェーンじゃなくてもできることをやることにはなんの意味もないということです。だからブロックチェーンじゃないとできないところをしっかり考えるべきだし、僕が今感じているのはトラストレスで自律的で分散型なネットワークと、デジタルデータ自体がユニークになって資産性を持ったっていうのは間違いなくブロックチェーンしかできないから、そういった領域のところでやっていくのが重要なんじゃないかなって思います。

 

(編集:飯田諒伊藤工太郎

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。 これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。