スタンフォード研究者ら開発ブロックチェーン「Espresso」が約37億円調達。リードホフマンやエレクトリックキャピタルらから

スタンフォード研究者ら開発ブロックチェーン「Espresso」が約37億円調達

スタンフォード大学の応用暗号研究グループの研究者チームらが開発するレイヤー1ブロックチェーン「エスプレッソ(Espresso)」が、約37億円(3,200万ドル)の資金調達を行なったことが3月7日に分かった。

調達したのはエスプレッソを開発する企業、エスプレッソシステム(Espresso Systems)だ。同社はCEOベン・フィッシュ(Ben Fisch)、COOチャールズ・ルー(Charles Lu)、CSOジル・ガンター(Jill Gunter)らが率いている。

今回の資金調達は、グレイロック・パートナーズ(Greylock Partners)、エレクトリック・キャピタル(Electric Capital)、リンクトイン(Linkedin)創業者のリード・ホフマン(Reid Hoffman)氏がリードし、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)、ブロックチェーン・キャピタル(Blockchain Capital)、スロー・ベンチャーズ(Slow Ventures)らが参加した。

また既存の投資家には、ポリチェーン・キャピタル(Polychain Capital)、アラメダリサーチ(Alameda Research)、コインベース・ベンチャーズ(Coinbase Ventures)、ジェミナイ・フロンティア・ファンド(Gemini Frontier Fund)、パクソス(Paxos)、テラフォーム・ラボ(Terraform Labs)などが存在する。

エスプレッソはEVM(イーサリアムバーチャルマシン)互換で、PoS(プルーフ・オブ・ステーク・コンセンサス)とプライバシー技術のZKロールアップ(ZK-Rollup)を組み合わせ、取引処理と手数料を抑えるためのスケーリング技術を実装するレイヤー1ブロックチェーンだ。

そして現在、同社は「Configurable Asset Privacy for Ethereum(CAPE)」という、あらゆるEVMブロックチェーン上で動作するアプリケーションを開発しているという。

近日中にイーサリアムのテストネット(Rinkeby)上でデモがライブ配信される予定とのことだ。またゼロ知識証明やその他のツールのためのライブラリである「ジェリーフィッシュ(Jellyfish)」もオープンソース化したとのこと。

エスプレッソシステムズは現在のイーサリアムのスケーリング課題に、レイヤー2とは異なる観点で解決していく狙いがあるようで、現状の課題についてリリースで次のように示している。

「現在イーサリアムにおいていくつかのロールアップソリューションが開発されていますが、既存のデザインスペースにはデータの可用性問題があります。ユーザーは新しいトランザクションを構築するためにデータを必要とします。ゼロ知識証明は生のデータ内容を明らかにすることなく取引ブロックの有効性を伝えることができますが、将来の取引を構築するために必要なデータの可用性を保証することはできません。この問題に対処するため、既存のロールアップは生の取引データをコンセンサスに送られるトランザクションに含めるか、Centralized Data Availability Committeeを利用してデータを見たことを署名させるかのどちらかです。どちらも満足のいくものではありません。前者はデータの圧縮に限界があるためスケーリングに限界があり、後者は分散化を損なうものです」

そしてスケーリングの解決方法は次のように説明している。

「スケーリングの課題解決に必要なのは、分散化されたデータの可用性を維持しながらスループットを最大化できるアプローチです。エスプレッソシステムでは、ZK-Rollupスケーリングメカニズムを私たちのPoSに最初から緊密に統合することで、この解決策を開発しています。エスプレッソのZK-Rollupはコンセンサスとネイティブに統合されており、ブラックボックスとして扱う必要がないため、エスプレッソは、ロールアップを基礎となるコンセンサスプロトコルに不可知な独立したモジュールコンポーネントとしてアプローチする他の設計のトレードオフを回避できるのです」

また同社は今後数週間のうちに、スケーリングに対するエスプレッソのアプローチについてさらに説明していくとしている。

そしてエスプレッソ・システムは、コインベース(Coinbase)と、ステーブルコインUSDCを発行するサークル(Circle)の合弁会社であるセンター(Centre)が、開発する分散型ID(DID)プロトコル「ベリテ(Verite)」のエコシステムに参画したことも発表した。

このエコシステムには、コンパウンド(Compound Labs)、コンセンシス(ConsenSys)、レジャー(Ledger)、メタマスク(MetaMask Institutional)、ファントム(Phantom Technologies)、ソラナファンデーション(Solana Foundation)、なども参画している。

参考:Espresso
Images:iStocks/Evgeny-Gromov・BadBrother
デザイン:一本寿和

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。

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