日本取引所グループが「環境債」の証券トークン化検討、ブーストリー「ibet for Fin」で

JPXがデジタル証券で環境債の発行検討

東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所等を傘下に持つ、日本取引所グループ(JPX)が、「環境債」をセキュリティトークン(ST)として発行する検討を開始したことが分かった。この「デジタル環境債」は「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」の名称で発行検討される。

「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」は、これまでの環境債で発行体・投資家双方で課題と認識されているグリーン投資にかかるデータの透明性やデータ収集にかかる作業の煩雑性に対し、ブロックチェーンなどデジタル技術を活用して、透明性の向上及びデータ収集の効率化を目指す債券とのことだ。

発行にはブーストリー(BOOSTRY)のセキュリティトークンプラットフォーム「ibet for Fin」を用いることが予定されているという。なお「ibet for Fin」にはエンタープライズ向けブロックチェーン基盤「クオーラム(Quorum)」が採用されている。

2月14日の発表によると、この「デジタル環境債」発行の検討は、デジタル化を通じた債券発行に係る事務全体の効率化をする他、JPXがグループ全体で2024年までに達成を目指すカーボンニュートラルに向けた資金調達を目的としたものだという。

JPXはカーボンニュートラルへ向け、再エネ発電設備の保有も検討しており、太陽光発電への投資、廃食用油を燃料とするバイオマス発電設備への投資金額の一部を「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」として調達するとのことだ。

「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」では、発行により調達した資金使途の透明性を高めるため、太陽光発電設備・バイオマス発電設備の発電量を自動的に計測し、CO2削減量に換算する仕組みを構築するとのこと。また発電量/CO2削減量を「ibet for Fin」上に記録することでデータの信頼性を高めることが可能となるという。これにより投資家がいつでも外部からモニタリングできる仕組みも構築し、年次のレポーティングだけではない透明性を目指すとのことだ。

その他投資家の保有状況を即時・正確に把握できるセキュリティ・トークンの特性をIRにも活用していく予定としている。

「グリーン・デジタル・トラック・ボンド」発行の詳細については今後検討し、追って案内する予定とのことだ。

JPXはこれまでもブロックチェーンに関する取り組みとして、同社による業界連携型DLT実証実験環境を活用した、証券ポストトレード領域におけるDLT情報共有基盤の実機検証プロジェクトを20年4月に立ち上げている。

また20年3月には証券保管振替機構(ほふり)や野村証券、みずほ証券、三菱UFJ銀行など19社の金融機関と共に、投信信託の事務作業にブロックチェーン技術を活用する実証実験を行っていた。

なおBOOSTRYは野村HDと野村総合研究所(NRI)のジョイントベンチャー(JV)として設立された企業だ。20年12月よりSBIホールディングスが出資参加しており、各社のBOOSTRYへの出資比率は、野村ホールディングス56%、NRI34%、SBIホールディングス10%となっている。

また昨年4月には、BOOSTRY開発の「ibet for Fin」を軸にしたネットワークを運営するコンソーシアム「ibet for Finコンソーシアム」をSMBC日興証券、SBI証券、野村證券、BOOSTRYの4社が設立している。

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参考:JPX
デザイン:一本寿和
images:iStocks/Sushiman・undefined-undefined

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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