アジア開発銀行がブロックチェーン国際証券決済の実証実験
アジア開発銀行(ADB)がブロックチェーンを活用し、国境を越えた多通貨証券決済システムの実証実験を行うことを1月26日発表した。この実証実験はアジア太平洋地域では初の事例となる。
なおこのプロジェクトには米R3、米コンセンシス(ConsenSys)、日本企業の富士通とソラミツの4社が参加しているとのこと。
ADBはアジア・太平洋における経済成長及び経済協力を助長し、開発途上加盟国の経済発展に貢献することを目的に設立された国際開発金融機関だ。
今回実証実験を行うシステムを活用することで、ASEAN(東南アジア諸国連合)+3地域(日本、中国、韓国)の加盟国の中央銀行と中央証券保管機関によって形成されたアジア債券市場イニシアチブ(ABMI)の国境を越えた決済インフラフォーラム(CSIF)の目的を前進させるとのこと。
このプロジェクトでは、ブロックチェーンのネットワーク上で、複数の通貨での支払いではなく、証券が国境を越えて即座に配信されることを検証するという。
ソラミツの発表によると国境を越えた証券決済は、現在、主に米国とヨーロッパにあるセンターを介してリンクされているカストディアンとコレスポンデント銀行(外国為替取引上、自行の海外支店の役割を果してもらう旨の契約を締結した相手銀行のこと)のネットワークを使用して行われているという。関係する多数のタイムゾーンと運用スケジュールは、ASEAN + 3市場自体が近接しているにもかかわらず、地域内の証券取引が決済されるまでに通常少なくとも2日かかるとのことだ。
このような国境を越えた決済に伴うリスクとコストを削減するために、このプロジェクトでは、ブロックチェーンネットワークを使用して、ASEAN +3地域の中央銀行と証券決済機関を直接接続するとのことだ。
この「直接接続」には複数のタイプのブロックチェーン間でトランザクションをブリッジおよび促進できるブロックチェーン「リレーチェーン」を利用するとのこと。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)「バコン」を発行するカンボジア国立銀行などのブロックチェーンベースのシステムをすでに使用している参加者は、これらのシステムを「リレーチェーン」にブリッジする際にプロジェクトより支援されるとのこと。
また現在ブロックチェーンベースのシステムを使用していない参加者はADB協力のソラミツら4社が協力し、システムを設計、テスト、および実装し「リレーチェーン」へ接続するとのことだ。
最終的にすべての参加者が「リレーチェーン」に接続されると、トークン化された証券の即時の国境を越えた配信と、複数のトークン化された通貨での支払いが可能になるとのことだ。
参考:ADB
デザイン:一本寿和
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