NFTの2021年売上は250億ドル、ただ成長は鈍化か

NFTの2021年売上は250億ドルに

昨年2021年、NFTは投機的なデジタル資産として人気が爆発し、1年間の総売上高は約250億ドル(約2.9兆円)に達した。しかしその売上は年末にかけて成長が鈍化する動きが見られたことが、複数のブロックチェーン上の取引を追跡するプラットフォームであるダップレーダー(DappRadar)のデータにより明らかになった。

昨年は、画像や動画、さらにはメタバース上の土地などがNFTとして取引され、価格が急速に上昇した。投資家は数日で利益を得るためにフリップ(通常より高値で購入し意図的に価格を引き上げて転売)をすることもあった。

またNFTはアートの世界でも、昨年3月にデジタルアーティストのビープル氏のNFTアート作品が、大手オークションハウスのクリスティーズ(Christies)に出品され、デジタルアート作品の過去最高額となる6,950万ドル(約78億円)で落札されたことも大きな話題となった。

さらにコカ・コーラやグッチなどといった世界を代表するトップブランドも昨年NFTの販売を開始した。

ダップレーダーの今年1月10日の発表によると、2020年のNFTの全体の売り上げが9,490万ドル(約109.4億円)だったのに対し、2021年では249億ドルに達したという。なおダップレーダーでは、現在30種類のブロックチェーンのデータを収集しており、誰がNFTを所有しているかを記録するために使用されているNFTの売上高は第4四半期に116億ドルに上昇 – ダップレーダー

さらにダップレーダーは、2021年にNFTを取引したウォレットは約2860万件で、2020年の約54万5000件から増加したとも説明をしている。

しかし、この数字についてはアグリゲーターによって異なる場合もある。例えばオークションハウスでの大規模なNFTアートの販売などは「オフチェーン」で行われることもあり、その取引データは換算されていないことが多い。

ダップレーダーと同じく複数のブロックチェーン・NFTデータを追跡しているクリプトスラム(CryptoSlam)では、2021年のNFT総売り上げは183億ドルであると発表しており、またイーサリアムのみを追跡しているノンファンジブルドットコム(NonFungible.com)では157億ドルとしている。

しかしながら、2021年にNFTに利用された資金額は、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で各国が石炭の段階的廃止を支援するために誓約した資金や、世界銀行が新型コロナウィルスワクチンを購入し配備するために用意した資金とほぼ同等の額である。

NFTマーケットプレイス最大手であるオープンシー(OpenSea)のデータによると、21年のNFTの売り上げは8月にピークを迎え、その後9~11月に減少し続け、12月に再び上昇したとのことだ。9月から11月にかけてビットコインやイーサリアムの価格が上昇したが、NFTを購入する際に使われる暗号資産の価格変動はNFTの売り上げと相関関係はないとされている(オープンシーでのNFTの販売状況グラフ)。

NFTはオンラインの世界における所有権の未来であり、NFTを購入することはWeb3.0やメタバースが発展する未来を信頼する証であると考える人がいる一方で、物理的に存在しないアイテムに対して、何故これほどまでに資金が費やされるのかと困惑する人もいる状況だ。

NFT取引全体の85%は、わずか10%のトレーダーが締めているという研究結果をネイチャー(Nature)誌が発表している。

ノンファンジブルドットコムによるとNFTの一般的な価格帯は100~1,000ドルだが、コレクタブルNFTであるクリプトパンク(CryptoPunk)の平均価格は7月に約10万ドルだったが11月には50万ドルまでに上昇し、12月には約35万ドルまで下落した(NFTの価格帯グラフ)。

NFTの最も人気のあるカテゴリーはこのようなコレクタブルNFTで、次に美術品となっているとのことだ。

なおオープンシーの1月10日時点での月間NFT取引額は13.6億ドルを超えており、過去最高の月間取引額を記録した昨年8月の31.6億ドルを超す勢いであることがメディア「TheBlock」によって報じられている。

NFTとは

「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」とは、代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。

なおNFTという言葉は現在幅広く活用されており、活用するブロックチェーンやマーケットプレイスの種類によって、その機能や表現できる価値が異なる可能性があることには留意が必要だ。

参考:ロイターTheBlock

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。

翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
images:Reuters

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。