伊藤忠、天然ゴムのブロックチェーントレーサビリティ 「PROJECT TREE」商用展開

伊藤忠、「PROJECT TREE」商用展開を開始

伊藤忠商事がブロックチェーン活用による、天然ゴムのトレーサビリティおよびサステナビリティの実現を目指す取り組み「PROJECT TREE(プロジェクトツリー)」の商用展開を開始したことが12月1日分かった。

このプロジェクトにおけるブロックチェーンを活用したトレーサビリティシステムは、伊藤忠テクノソリューションズが開発しており、また天然ゴム業界初の試みとなるようだ。

発表によると「PROJECT TREE」は、伊藤忠の事業投資先であるインドネシア天然ゴム加工会社PT. Aneka Bumi Pratama(ABP)と英タイヤ卸・小売事業会社EUROPEAN TYRE ENTERPRISE LIMITED(ETEL)のバリューチェーンを活用するようだ。

具体的な仕組みとしては、ABPが調達する天然ゴム原料が当該システムのスマートフォンアプリによって取引内容・日時・位置情報などがブロックチェーン上に記録され、地図上に表示される。その後ABP工場内で加工され、原産地情報付きの天然ゴムとしてタイヤメーカーへ販売。これによりタイヤを生産するメーカーは責任ある原料調達を証明できることになる。

またこのタイヤメーカーで生産される協賛タイヤの売上の一部から原料サプライヤーへ対価を支払う仕組みを実装するとのこと。またスマートフォンや銀行口座を持たない生産農家に対しては、農具や肥料、生産性向上のための研修が提供されるという。これらの仕組みにより世界生産量の約85%を小規模農家に依存するタイヤ生産を持続可能(サステナブル)にする狙いのようだ。

またこのプロジェクトでは国際NGO団体のプロフォレスト(Proforest)とSNVによるコンサルティング・監査を受けながら、サプライチェーンにおけるリスクアセスメントの結果に基づく改善計画も順次実行するとのことだ。

現状このプロジェクトでは販売したタイヤのトレーサビリティは確保できていないようだが、発表によると同業の天然ゴム加工会社や、タイヤ卸・小売・自動車メーカー、消費者等、天然ゴムに関わる全てのステークホルダーに広げていく構想であるとしている。

なお「PROJECT TREE」で協賛するタイヤ製品は、環境意識の高い欧州地域から順次世界展開を目指すとのことで、プロジェクト商用展開の第1弾は今月12月より英国市場で販売を開始するとのこと。販売には伊ピレリ(Pirelli & C SpA.)の英国法人ピレリUK(Pirelli UK)が協賛に入る。また今後は韓国のハンコックタイヤ(Hankook Tire & Technology Co., Ltd.)もこのプロジェクトへ参加する予定とのことだ。

伊藤忠は今後このプロジェクトが、持続可能な天然ゴムのための新たなグローバルプラットフォーム「Global Platform for Sustainable Natural Rubber(GPSNR)」のポリシーおよび目標達成に貢献する事も期待できると説明している。

なお「あたらしい経済」編集部はこのプロジェクトにおけるトレーサビリティシステムで採用されているブロックチェーン基盤について、現在伊藤忠商事へ問合せを行っている。回答が得られ次第、この記事に追記させて頂く予定だ。

以下回答追記(2021.12.2 17:50)

「PROJECT TREE」に採用しているブロックチェーン基盤は、エンタープライズ向けブロックチェーンのハイパーレジャーファブリック(Hyperledger Fabric)です。

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参考:伊藤忠
デザイン:一本寿和
images:iStocks/sumkinna・TTStock

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者 ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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