暗号屋、NFT関連のデジタルメディアプロトコル「VWBL」発表
ブロックチェーン関連プロダクトの開発を行う暗号屋が、NFT所有者のみ視聴・閲覧が出来るデジタルメディアプロトコル「VWBL(ビュアブル)」を27日発表した。
一般的なNFTアートは、誰でも見られるデジタルコンテンツに紐づいたNFTが取引されているものが多い。しかしVWBLはプレビュー等を公開し、実データを暗号化してNFT所有者のみが復元できる仕組みを提供するとのことだ。
この仕組みはNFTとそれに紐付くコンテンツを、CD/DVDのような記憶メディア(媒体)のように、それ単体で完結して閲覧ができるため、シンプルに流通が可能とのこと。
また画像データだけではなく、音楽、動画、書籍のPDFファイルなど、あらゆるデジタルコンテンツで利用可能とのことだ。
さらにVWBLは完全な分散型であり、プラットフォーム依存せず流通が可能とのこと。オープンソースのビューワーモジュールを組み込めば、どのプラットフォームでも活用できるようになるという。
暗号屋は「従来のNFTアートは誰でも見られるためNFTだけを所有しているという感覚ですが、VWBLはNFTを所有しないと見られないため、デジタルコンテンツごと所有しているという感覚を得ることができます」と説明している。
「VWBL」開発、暗号屋代表 紫竹佑騎氏に取材
あたらしい経済編集部はVWBLを発表した暗号屋代表の紫竹佑騎氏を取材した。
−−アーティストがVWBLを使おうと思った場合、具体的にどういう流れになりますか?
まずVWBLでコントラクトを用意してますので、OpenSeaやRaribleのような独自コントラクトでミント(鋳造/発行)ができるマーケットプレイスで、VWBLコントラクトでNFTを発行いただきます。
そしてNFT所有者だけが見られるコンテンツは、オープンソースのビューワーモジュールを、ユーザーの任意のサイトなどに組み込んでいただくことで、所有者限定で公開することが可能です。
またいろいろなマーケットプレイスとも話を進めたいと思っていまして、VWBLに対応いただけるプラットフォームでは、その中で完結して発行することもできるようにしていきたいと思っています。
−−VWBLが対応するブロックチェーンは?
まずはイーサリアムを検討しています。その後、利用者の多いL2/サイドチェーンなども視野に入れています。またはパートナーシップを望んで頂けるネットワークにも対応したいと思っています。
−−VWBLでは技術的にどのようにコンテンツをNFT所持者だけに閲覧させるのですか?
具体的にはデータはIPFSなどに暗号化し、NFT持ってる人が分散された鍵管理ネットワークの「VWBL Network」から復号鍵を返して貰うことで閲覧できる仕組みです。
「VWBL Network」は、Chainlinkのような分散型オラクルを参考にした仕組みと、DFinityで使われてる鍵分散管理の仕組みを組み合わせて実現します。
−−具体的にこのプロトコルはどんなユーザーに使って欲しいですか?
NFTアートは現代アートのあたらしいジャンルとして始まり、データ自体が公開されている事について問題にしていないのだと我々は理解しています。
VWBLプロトコルはそれでもNFTをアートとして買ってくれた人に何かプラスの特別な体験を得て貰いたい方や、収益化目的で音楽や動画、書籍データ、ソフトウェアを流通させたい方に一つの選択肢として利用して頂きたいです。
−−実際の提供開始予定や利用価格などは?
VWBLを活用したマーケットのサンプル実装として「VWBL Market」を年内にリリース予定です。しかしそれはあくまでサンプルであり、VWBL自体はプロトコル導入可能になった時点で、多くの事業者・個人の方に使って頂きたいと思っています。プロトコル自体は年内には利用可能にする予定です。
価格に関してですが、VWBLのコントラクトをミント時に選んで頂く際、極少量の手数料をいただこうと思っている程度です。
またEIP2981などに対応するため、ロイヤリティの設定も可能です。
NFTとは
「NFT(Non Fungible Token:ノンファンジブル・トークン)」は代替が不可能なブロックチェーン上で発行されたトークンを指す。NFTの規格で発行されたトークンは、そのトークン1つ1つで個別の価値を持つ。そのためNFTを画像や映像などのデジタルデータと紐付けることで、デジタルデータの個別の価値を表現することに活用されている。 なおNFTという言葉は現在幅広く活用されており、活用するブロックチェーンやマーケットプレイスの種類によって、その機能や表現できる価値が異なる可能性があることには留意が必要だ。
取材/編集:設楽悠介(あたらしい経済)
写真:大津賀新也