IMF、暗号資産市場の分析含む「国際金融安定性レポート」公開

IMF、暗号資産市場の分析含むレポート公開

IMF(国際通貨基金)が、暗号資産市場に関するリスク分析や政策提言などを盛り込んだ「国際金融安定性レポート(Global Financial Stability Report)」を10月1日に公開した。このレポートでは、1章分が暗号資産に関する分析に充てられている。

レポートでは、初めに暗号資産市場の現状が説明され、その後暗号資産の課題を分析、最後に暗号資産に関する政策提言が行われる構成になっている。

まず暗号資産市場の現状については、昨年10月と比較して市場全体の時価総額が約3倍の2.5兆ドルに達しているため、市場は大幅に成長しているとレポートで結論付けられている。

また、新興市場や発展途上国を中心に「クリプト化(Cryptoization)」が進んでおり、暗号資産取引量が国内の証券取引所の取引量に匹敵するほど増加している国もあるとのことだ。このような暗号資産市場の成長要因はステーブルコインの増加、スマートコントラクトの普及、DeFi(分散型金融)に対する関心の高まりなどがあると説明されている。

続いて暗号資産市場に関する課題については、暗号資産が金融安定性へもたらす影響を中心に分析されている。2018年時点では暗号資産市場はマクロ経済に影響するほど大きな力を持たないとされていたが、現在は市場の成長により取引量が増えているため、マクロ経済に対する暗号資産の重要性は高まっているとのことだ。

さらに暗号資産に投資する金融機関が増えていることから、銀行システムなどにも影響が出てくる可能性があるとのことだ。また、ステーブルコインの導入により、今後支払いや決済が暗号資産へと大幅に置き換わる可能性があり、これらが金融安定性にもたらす影響を注視する必要があるとされている。

さらに投資家保護の観点からの課題としては、暗号資産専門のプロバイダーが抱える運用リスクやサイバーリスクなどが挙げられている。またステーブルコインについても情報開示不足や準備金に関する監査不足などが指摘されており、商業銀行レベルの情報開示基準を満たすために大幅な改善が必要とされている。

レポートの最終節は「クリプトエコシステムの監視、監督、規制」「ステーブルコイン固有のリスク」「新興市場におけるマクロ金融リスクの管理」という3分野の8つの政策提言で締めくくられている。提言の概要は以下の通りである。

(1)クリプトエコシステムの監視、監督、規制
・各国の規制当局は、暗号資産に適用されるグローバル・スタンダードの導入を優先すべきである。
・規制当局は、特にシステミックな重要性を持つ分野において、暗号資産のリスクを管理する必要がある。
・各国の規制当局間の協力は、効果的な執行と規制の齟齬を減らすために重要である。
・規制当局は、より良い政策決定のために、データギャップに対処し、クリプトエコシステムを監視すべきである。

(2)ステーブルコイン固有のリスク
・ステーブルコインの規制は、そのリスクを考慮し、かつ世界のステーブルコインの規制に沿ったものにすべきである。
・規制当局は、情報開示義務の強化、準備金の独立監査、ネットワーク管理者や発行者の適合性と適切性に関する規則の制定などの措置を検討すべきである。

(3)マクロ金融リスクの管理
・新興国は金融政策の信頼性向上、健全な財政状態、効果的な法規制措置、中央銀行デジタル通貨の導入などの脱ドル化政策を実施する必要がある。
・資本流入規制については、その有効性を再考する必要がある。

参考:IMF
デザイン:一本寿和
images:iStocks/artsstock・Maximusnd

この記事の著者・インタビューイ

小俣淳平

「あたらしい経済」編集部 一橋大学2年生 真面目で温厚な20歳。大学1年生のころにブロックチェーンに出会い、その革新性に衝撃を受け、ブロックチェーン業界に足を踏み入れた。勢いのままに学内で「OneLab」というサークルを立ち上げ、週一で活動している。