競争激化する「スポーツ×NFT」、ダッパーラボが約270億円調達と、スペインサッカーリーグと提携を発表

ダッパーラボ、約270億円調達とスペインサッカーリーグと提携を発表

人気NFTゲーム「NBA Top Shot」やブロックチェーン「Flow」の開発しているダッパーラボ(Dapper Labs)が、約270億円(2億5,000万ドル)の資金調達と、サッカースペインリーグの「LaLiga」との提携を9月22日に発表した。

ちなみに9月中旬にGoogle CloudがFlowのクラウドプロバイダーになっている。

資金調達に関して

この資金調達はCoatueがリードし、既存の投資家であるa16z、GV(旧Google Ventures)、Version One Venturesも参加。また新規投資家として、BONDやGICが参加した。

なお発表によれば「NBA Top Shot」では、これまで約800億円(7億8,000万ドル)以上のNFTカードコレクティブルズが売買されてきたとのことだ。

LaLigaとの提携に関して

そしてサッカースペインリーグ「LaLiga」との提携により、ダッパーラボはNFTマーケットプレイス「Official Football NFT Collectible Highlights」を開発することが明らかになった。サービス提供は2022年6月が予定されている。

「Official Football NFT Collectible Highlights」は、「NBA Top Shot」のチームが制作・開発するとのことで、LaLigaの10シーズンの中で、試合中に話題となった瞬間や象徴的な瞬間を集めて、ユーザーがNFTコレクティブルズとして所有する機会を提供するものだ。

まさにスペインサッカーリーグ版「Top Shot」と言ってもいいだろう。

このマーケットプレイスには、レアル・マドリード、FCバルセロナおよびアトレティコ・マドリードなどLaLiga全クラブが参加する予定だ。ファンは自分のコレクションの一部を売買することも可能とのこと。

また「Dapper Wallet」を介してクレジットカードでNFTの購入にも対応するようだ。

さらに特定のNFTの所持者はこのマーケットプレイスで企画されるイベントに参加できる権利も入手できるようだ。バルセロナのスタジアムであるカンプノウのVIPボックスで、世界最大のサッカーゲームであるエルクラシコを観戦する機会などが例として発表されている。

LaLigaの社長であるハビエル・テバス(Javier Tebas)氏はダッパーラボとの提携について次のようにコメントしている。

「LaLigaとDapper Labsのパートナーシップにより、成長著しい新しいメディアを通じて、世界中のファンと最も近い関係を築くことができ、またNFTムーブメント全体を創造し、スタートさせた業界のパートナーと一緒に活動することができます。

この体験は、世界中のサッカーファンが中心となり、LaLigaへの情熱をユニークな方法で楽しみ、表現するためのプラットフォームと製品を提供するものです」

またバルセロナの元キャプテンであるカルレス・プジョル(Carles Puyol)氏は発表で次のようにコメントしている。

「10年間バルセロナのキャプテンとして、私はリーガ・エスパニョーラの最高の瞬間をいくつも味わいました。しかしそれはファンがいなければ成立しなかったと感じます。

ファンは、私たちにあきらめないためのエネルギーを与えてくれます。何も残っていないときには頑張れと言ってくれ、必要なときにはサポートしてくれます。

プレイヤーが最大の支持者に一歩近づくための経験に参加できることは、エキサイティングで意味のあることです。この関係がもたらすものを楽しみにしています」

Dappr Labsのこれまで

ダッパーラボはNFTのファーストペンギンとして知られるクリプトキティーズ(CryptoKitties)を2017年にローンチした。

まだブロックチェーンゲームが少なかった当時、デジタルな猫(キティ)の情報をNFTで表現し、ブロックチェーンに記録しながら、交配、トレードなどを行うこのゲームは大きな話題を呼んだ。

そしてこのクリプトキティーズの経験を生かし、ダッパーラボは「NBA Top Shot」などを開発。「NBA Top Shot」は売り上げを伸ばし、今年の世界的なNFTブームの火付け役の1つにもなった。そして現在もダッパーラボはNFT領域の先駆者として、世界中のコンテンツホルダーから注目を集めている。

なおダッパーラボの現在のパートナーには、NBA、NBPA、WNBA、WNBPA、Warner Music Group、Ubisoft、Genies、UFCなどが存在している。

そしてダッパーラボの既存の投資家には、a16z、Coatue、Union Square Ventures、Venrock、Google Ventures(GV)、Samsungのほか、Dreamworks、Reddit、Coinbase、Zynga、AngelListなどの創業者が明らかになっている。

今年の3月にもダッパーラボは約330億円の資金調達を実施している。リード投資家は今回と同様でCoatueだ。

またその時の調達ラウンドでは、NBAレジェンドのマイケル・ジョーダンや現役NBA選手のケビン・デュラント、アンドレ・イグダーラなど合計12選手が参加した。

またMLBやNFLの選手も参加した。著名人やアーティストもそのラウンドに参加しており、ウィル・スミスと本田圭佑のDreamers VC、ショーン・メンデスとアンドリュー・ガートラーのAG Venturesの参加が明らかになっている。

そして今年8月には全米女子プロバスケリーグWNBA選手のNFTが「Top Shot」で取扱開始されている。来年の6月にはLaLigaでNFTが取り扱われるということで、スポーツ業界でのNFTの活用はより進んでいくだろう。

加熱するプロスポーツとNFTやファントークン

順調に有名スポーツチームと提携を進め、資金調達をしているダッパーラボだが、そのライバルともいえる企業の存在も多い。

NFTを利用したファンタジーフットボールゲームを提供するソーレア(Sorare)も今月9日に「LaLiga」との提携を発表した。

なおソーレアは日本でもJリーグと提携し、Jリーグに所属するすべての選手のNFTカードを発行することを昨年8月に発表している。

そしてソーレアはソフトバンク(SoftBank)が主導する資金調達ラウンドにて6億8000万ドル(約745.2億円)を調達したことを21日に発表したばかりだ。

またスポーツチームの発行トークンなどを活用したファンエンゲージメントプラットフォーム「Socios.com(ソシオスドットコム)」を運営するチリーズ(Chiliz)も今月14日に「LaLiga」との提携を発表している。

スペインのサッカーリーグでは、これからダッパーラボを含め大きな3つのプロジェクトが今後競合していくことになるだろう。

サッカーをはじめとした世界的なビッグマーケットであるプロスポーツの分野においての、今後ブロックチェーンプロジェクト同士の戦いからも目が離せない。

images:iStocks/artacet・ChrisGorgio・LongQuattro
デザイン:一本寿和

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。