中国人民銀行、金融分野のブロックチェーン応用例や問題点を公表

中国人民銀行、金融分野のブロックチェーン応用例や問題点を公表

中国の中央銀行である中国人民銀行が、国内のデジタル金融発展におけるブロックチェーン技術運用について、現状と問題点を公表した。

このことは同行のデジタル通貨研究所副所長であるディ・ガン(Di Gang)氏が、9月10日に開催されたイベント「2021中国(北京)デジタル金融論壇」にて公表したものだ。

同氏によると、中国ではブロックチェーン技術による成果の増加、より多くの政策支援、初期の標準システムなど、すでにブロックチェーン開発による初期段階の効果が出ているとのこと。

まず中国人民銀行はデジタル人民元の発行にブロックチェーンを利用したことで効率を向上させたと説明した。また多国間における中央銀行デジタル通貨(CBDC)の利用にもブロックチェーン導入を検討しているとのこと。 なおこれには国際決済銀行(BIS)イノベーションセンターの支援を受け利用テストを行った結果であるとのことだ。また同研究所は昨年9月に貿易金融のためのブロックチェーンプラットフォームも構築している

一方で、ディ・ガン氏はブロックチェーンの利点は信頼問題を解決することだが、万能ではないとも指摘した。

同氏は「ブロックチェーンは、ストレージ、コンピューティング、信頼の構築を犠牲にしており、多くの点で欠陥があります。その強みは、信頼問題を解決するシナリオですが、高い並行性や、プライバシーやパフォーマンスの要求が高いシナリオにはあまり適していません」と述べている。

また同氏は、ブロックチェーンの技術面の分散化と管理面の分散化がイコールではなく、ブロックチェーンは技術として管理可能な分散型アーキテクチャであるべきと強調している。

さらにディ・ガン氏はブロックチェーンにとって金融運用の面では多く技術的な挑戦があると述べており、具体的には以下のように説明されている。

  •  パフォーマンスとスケーラビリティにはまだ多くの問題がある。サイドチェーン、マルチチェーン、ハードウェアアクセラレーション、オンチェーンとオフチェーンのコラボレーションなどのソリューションに注目する必要がある
  • プライバシー保護について、現在主流となっているゼロ知識証明、準同型暗号、セキュアマルチパーティコンピューティング、機械学習の一つである連合学習などのプライバシー保護技術では限界がある
  •  情報セキュリティについて、ブロックチェーンは自律制御、オープンソースライセンス、量子コンピューティングなどの課題に直面しており、セキュリティ技術の革新を強化する必要がある
  • ブロックチェーンのノードの多くは匿名で密集しており、分散化されていて監督が難しくなる
  • ブロックチェーンの相互運用性(インターオペラビリティ)が乏しく、コア技術標準とアプリケーション標準が不十分であり、標準システム構築の強度を高める必要がある

参考:央行数研所谈区块链:技术上去中心化并不等于管理去中心化
デザイン:一本寿和
images:iStocks/liulolo・Ninja-Studio

この記事の著者・インタビューイ

呉心怡

「あたらしい経済」編集部 中国・浙江省出身の留学生。東京女子大学 人文学科に在学中。 文章を書くことが好き。中国語、英語、日本語の3か国語を話す。あたらしい経済では持ち前の語学力を活かし、ニュース記事を執筆。ブロックチェーンや経済分野については勉強中。

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