NYCB、銀行口座残高をトークン化し株式取引デジタル決済に成功

NYCB、銀行口座残高をトークン化し株式取引デジタル決済に成功

米ニューヨーク・コミュニティ・バンコープの銀行子会社ニューヨーク・コミュニティ・バンク(NYCB)が、銀行口座残高をトークン化し、株式取引のデジタル決済に成功したことが9月13日に分かった。

発表では銀行口座残高をトークン化したものは「USDForward(USDF)」と呼称されている。なお米国では一般的に「USDF」のようなNFTをデジタルマーカーと通称されているようだ。

この決済取引はフィギュア・テクノロジーズ(Figure Technologies)のプロヴィナンス・ブロックチェーン(Provenance Blockchain)を基盤にして実施されたとのこと。具体的には米国証券取引委員会(SEC)に登録された代替取引システムである「Figure ATS」を利用して、デジタル株式のリアルタイムの流通取引が行われた。

代替取引システムとは証券取引所以外の株式の私設取引プラットフォームのことだ。そして「Figure ATS」で行われるすべての取引は、SEC規制に準拠して行われることになっている。ちなみにニューヨーク・コミュニティ・バンコープとフィギュア・テクノロジーズは8月16日にブロックチェーンに関する取り組みを共同で行うための戦略的パートナーシップを締結していた。

また発表によれば今回の決済取引が成功したことで、銀行のデジタルマーカー決済プラットフォームが、プロヴィナンス・ブロックチェーンの分散型金融(DeFi)ツールとして重要な機能を持つことが確認されたとのこと。これは「銀行がデジタルマーカーの取引をさらに進める計画や、フィギュアのDeFiエコシステムの拡大計画を後押しすることになった」とNYCBは発表している。

ニューヨーク・コミュニティ・バンク(NYCB)CEOのトーマス・カンジェミ(Thomas Cangemi)氏は今回の取り組みについて次のようにコメントしている。

「フィギュア・テクノロジーズとの最初の取引を非常に喜ばしく思います。 銀行のデジタルマーカープログラムとフィギュアのセカンダリー・トレーディング・プラットフォームの組み合わせは、先日発表したパートナーシップを大きく前進させるものであり、フィギュアとのコラボレーションが将来生み出すであろうものにとって非常にポジティブな始まりとなりました。最初のユースケースの取引が成功したことは、NYCBがデジタル戦略を実施する上で重要なマイルストーンとなります」

またフィギュア・テクノロジーズのCEOであるマイク・カグニー(Mike Cagney)氏も今回の取り組みについて次のようにコメントしている。

「今回の取引は、ニューヨーク・コミュニティ・バンクとの一連の画期的な取引の第一弾です。ニューヨーク・コミュニティ・バンクのデジタルマーカーとFigure ATSの組み合わせは、カウンターパーティーや決済リスクのないリアルタイムでの未公開会社株式の取引と決済の顕著な可能性を示しており、ブロックチェーンが公開株式市場を含むグローバルな取引所にもたらす大きな混乱の前兆です」

通常の株式取引では2日(T+2)がかかるが、今回の取り組みはブロックチェーンを活用してそれを短縮したことに大きな意味があるだろう。またこの取り組みがSEC規制に準拠した形で行われたことも大きなポイントだ。

参考:プレスリリース
デザイン:一本寿和
images:iStocks/NCemile-Bingol・Tzido・Ninja-Studio

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。