米マスターカードがサイファートレース買収へ、デジタル資産領域への展開進む

米マスターカードがサイファートレース買収へ

米マスターカード(Mastercard)が暗号資産分析ツールなど提供のサイファートレース(CipherTrace)と買収契約を締結したことが9月9日に分かった。

サイファートレースは暗号資産関連のAML/CFTやリスクマネジメントツールを金融機関や暗号資産取引所などに提供している企業だ。日本では楽天ウォレット株式会社や株式会社DMMビットコインが同社のソリューションを利用している。

マスターカードの同社買収はデジタル資産分野におけるマスターカードの戦略の一環であり、顧客、加盟店、企業にデジタル価値の移動方法に関する選択肢を提供することを目的としているようだ。

マスターカードのサイバー&インテリジェンス部門の社長であるアジャイ・バラ(Ajay Bhalla)氏は、買収契約締結に関して発表文で以下のように説明している。

「デジタル資産は、支払いや支払いを受けるといった日常的な行為から、より包括的で効率的な経済への変革に至るまで、商取引を再構築する可能性を秘めています。デジタル資産のエコシステムの急速な成長に伴い、その信頼性と安全性を確保する必要性が生じています。

私たちの目的は、マスターカードとサイファートレースの相互補完的な能力をもとに、デジタル時代における商取引のあり方を構築していくことです」

またサイファートレースのCEOであるデイブ・ジェバンス(Dave Jevans)氏は以下のようにコメントしている。

「当社は銀行や暗号資産取引所、政府の規制当局や法執行機関らが、暗号資産経済を安全に保つための支援を行っています。当社とマスターカードは、エコシステム全体にセキュリティと信頼を提供するというビジョンを共有しています。

私たちはマスターカードファミリーに加わり、サイファートレースのソリューションのリーチを世界中で拡大できることをとても嬉しく思っております」

マスターカードの暗号資産領域への取り組み

マスターカードは近年、暗号資産関連への動きを加速させている。

スタートアップ領域では、ブロックチェーンおよび暗号資産関連企業の支援に特化した新しいアクセラレーションプログラム「スタート・パス(Start Path)」を7月に開始した。それに選出されたスタートアップは、GK8、Domain Money、Mintable、SupraOracles、STACS、Taurus、Upholdの7社だ。米国、シンガポール、スイスからそれぞれ2社、イスラエル1社が選出された。

さらにイーサリアム関連技術開発のコンセンシスへの出資も行なっている。コンセンシスへの出資に際して、マスターカードのデジタルアセットおよびブロックチェーンプロダクトのパートナーシップ部門EVPであるラージ・ダモダラン氏は「コンセンシストへの出資によって、セキュアでパフォーマンスの高いエンタープライズ・イーサリアム機能を私たちの顧客に提供することができるようになります」とコメントしていた。

またマスターカードは暗号資産取引所ジェミナイとクレジットカード発行のためのネットワークパートナーにもなっている。

米ドルステーブルコインUSDCの発行するサークル(Circle)や、ブロックチェーンのインフラを提供するパクソス(Paxos)などと協力して、が暗号資産支払いをより簡単にするカードプログラムのテストを実施することも発表している。

2月にマスターカードは今年中に暗号資産支払いのサポートを開始することを発表している。当時の発表では「ビットコインなどの裏付けのない暗号資産ではなく、コンプライアンス対策が徹底されており信頼性の高いステーブルコインを中心に導入する」考えが示されていたが、長期のロードマップではビットコインなども視野に入れていることだろう。

暗号資産支払いのサポート向けて着実に準備を進めている状況が伺える。

参考:プレスリリース
デザイン:一本寿和
images:iStocks/jbk_photography

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。