サトシナカモトの功績やDeFi規制など、SEC委員長が米国暗号資産規制動向へ持論展開

サトシナカモトの功績やDeFi規制など、SEC委員長が米国暗号資産規制動向へ持論展開

米国証券取引委員会(SEC)委員長のゲイリー・ゲンスラー氏が「暗号資産と規制」について8月3日にAspen Security Forumに登壇し、持論を展開した。

ゲンスラー氏が話したのはサトシナカモトの功績、トークンの有価証券性、分散型金融、ステーブルコインなどについてであり、以下に発言の要点をまとめて紹介する。

サトシナカモトの功績について

サトシナカモトが数十年にわたって暗号技術者やその他の技術専門家を悩ませてきた2つの謎を解決した。その1つは中央の仲介者を介さずにインターネット上で価値のあるものを移動させる方法、もう1つは、その価値あるデジタル・トークンの二重支払いを防ぐ方法だ。

実際にサトシナカモトは暗号資産とその基盤となるブロックチェーン技術の開発に拍車をかけていった。その過程で、ICOなどによってトークンの誇大広告がたくさん見受けられたが、サトシナカモトのイノベーションは本物だと考えるようになった。

このイノベーションはまだ続いていき、中央銀行や商業銀行などの中央の仲介者がいないお金のあたらしい形を生み出していくだろう。

現在の暗号資産の状況

暗号資産領域の投資家保護は十分ではなく、現時点では西部開拓時代のようなものだ。

詐欺や不正行為が蔓延しており、多くの誇大広告が存在していて、投資家は厳密でバランスのとれた完全な情報を得ることができていない状況であり、暗号資産は価値の交換手段として使われていることが少なく、アンチマネーロンダリング、制裁、徴税など、法律を回避するために使われることが多い。

トークンの有価証券性について

一般的にトークンを購入する人々は利益を期待しており、少数の起業家や技術者が立ち上がりプロジェクトを育成している状況なので、多くのトークンが未登録の有価証券である可能性が高い。

現状、必要な情報開示や市場監視が行われておらず、多くのトークンは証券法の対象であり、証券制度の中で機能しなければならない。

分散型金融(DeFi)について

DeFiプラットフォームの中には証券取引法に関わるものだけでなく、商品取引法や銀行法に関わるプラットフォームもある。DeFiプラットフォームに証券などが含まれている場合、そのプラットフォームはSECに登録する義務が発生する可能性がある。

ステーブルコインについて

ステーブルコインには現状1,130億ドル相当の市場が存在しており、巨大市場となっている。

またステーブルコインは暗号資産の取引およびレンディングプラットフォームに組み込まれているケースも多いことから、アンチマネーロンダリング、税務コンプライアンス、制裁など伝統的な銀行や金融システムに関連する多くの公共政策の目標を回避しようとする人々を促進している可能性がある。

ステーブルコインの動向は、国家の安全保障にも影響する可能性がある。

SECの役割

SECは投資家を保護し、資本形成を促進し、その間にある公正で秩序ある効率的な市場を維持するという3つのミッションを掲げている。

また金融安定性にも重点を置いているが、基本的には投資家の保護を最大の目的としている。

今後の動向について

立法上の優先事項は、暗号資産取引、貸付、およびDeFiプラットフォームを中心に据えるべきだ。

規制当局には、暗号資産取引や貸付に関する規則を作成したり、保護措置を講じたりするための権限が与えられるだろう。

金融の中心にあるのは信頼だ。そして、市場への信頼の中心にあるのは、投資家の保護だ。

暗号資産領域が継続して成長していくためには、あるいは変化のきっかけとなる可能性を秘めているのであれば、公共政策の枠組みの中に取り込んでいくべきだ。

参考:米国証券取引委員会
デザイン:一本寿和
images:iStocks/gstraub・4×6

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。 「あたらしい経済」の編集者・記者。