日本IBMと三井化学、ブロックチェーン活用のプラスチック資源循環プラットフォーム構築へ
日本アイ・ビー・エム株式会社と三井化学株式会社が、ブロックチェーン技術を活用したプラスチック資源循環プラットフォーム構築に向けて協働を開始したことを4月26日発表した。このプラットフォームにはIBM® Blockchain Platformと、その基盤としてIBMのパブリッククラウドであるIBM Cloudが利用される計画だ。
今回両社が検討する資源循環プラットフォームでは、モノマー・ポリマー等の原材料から製品の製造・販売・使用、及びその後に回収から解体・破砕を経てリサイクル原料となり製品製造に再利用されるまでの、資源ライフサイクルにおけるトレーサビリティを担保するとのこと。またリサイクル原料の製造工程や検査工程、物性情報や品質情報等も併せて可視化することで、円滑な流通を支援することを目指すという。
このトレーサビリティーシステムにブロックチェーン技術を活用することでサプライチェーンの透明化を図るとともに、各ステークホルダーは中立性と公平性を担保しながら、取引や監査業務の効率化、ペーパーレスといったメリットを享受することが可能になるとのことだ。
三井化学株式会社のDX推進室、担当執行役員である三瓶雅夫氏はリリースにて「三井化学は気候変動とプラスチック問題を重点的に取り組むべき重要な社会課題と捉えています。これらの課題解決には、資源を消費して廃棄するという一方通行の経済から、資源を回収して再生・再利用する循環型経済への転換が必須です。
三井化学がこれまで培ってきたモノマー・ポリマー等に関する豊富な知見やスキル、現在開発を進めているリサイクルを含む環境対応技術やノウハウを活用し、ブロックチェーンに代表されるDX関連技術を積極的に取り入れることで、素材トレーサビリティシステムである資源循環プラットフォームを構築し、循環経済の実現に寄与します」とコメントしている。
編集部のコメント
三井化学株式会社は今年3月に世界最大規模の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の国内株式の運用を委託している運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」に2年連続で選出されています(GPIFは直接の運用は行わないため運用は委託されています)。
約160兆円の公的年金を運用するGPIFは日銀と並ぶ日本の巨大機関投資家(クジラ)です。2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESG(環境・社会・ガバナンス)を投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱し、GPIFは2015年にPRIに署名を行っています。
これはGPIFがESGを評価基準に資金運用を行うことを示しています。 つまり三井化学は以前よりESGに課題を持ち、その配慮が大きく評価されている企業ということになります。
今回のニュースでは、このような日本企業が資源循環への取り組みにブロックチェーンを取り入れた事例のひとつとなりました。
参考:三井化学リリース・三井化学「三井化学 GPIFの国内株式運用機関が選ぶ「優れた統合報告書」と「改善度の高い報告書」に選出」
コメント:大津賀新也(あたらしい経済)
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