暗号資産マーケットレポート
今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
12/15~12/21週のサマリー
- ビットコインが一時108,000ドルを突破し、史上最高値を更新
- FOMCにおけるパウエルFRB議長のタカ派的利下げにより、 BTCは40時間で10%以上下落
- FOMCの翌日、ビットコイン現物ETFが上場以来最大となる6億8000万ドルの純流出額を記録
- Ripple社が提供する米ドル連動ステーブルコイン「RLUSD」がローンチ
暗号資産市場概況
12/15~12/21週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比▲2.45%の15,153,800円、ETH/JPYの週足終値は同▲12.26%の518,865円であった(※終値は12/21の当社現物EOD[12/22 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、ビットコインが史上最高値を更新した後、およそ15%下落するなど、激しい値動きを見せた。週初は、トランプ次期大統領によるビットコインの戦略的備蓄の可能性を示唆したことを背景に堅調に推移した。また、FOMCにおける25bp利下げも織り込まれていた。
しかし、19日午前4時に公表された12月FOMC声明を起点に市場の雰囲気は一変した。連邦準備制度理事会のメンバーおよび連銀総裁らは、来年の利下げ回数が従来予想の4回から2回に下方修正。来年の緩和的な金融環境を見越していた投資家はリスクオフ姿勢に転じ、暗号資産市場は下落に転じた。利下げペースの鈍化が意識されたことで米国債10年物利回りが上昇し、株式市場では大量の売りを誘発される結果となった。
具体的には、25bpの利下げ決定後のパウエル議長によるタカ派的な声明と、FOMC資料から示唆されたインフレ見通しの上方修正が、リスク性資産に売り圧力と働いた。とりわけ、2025年のコアPCE物価指数の中央値予想が今年9月FOMC時点の2.2%から2.5%へと大幅に上方修正されたうえ、前回最高予想値の2.5%も3.2%に引き上げられた点に注目したい。これは米国のインフレ指標が来年には9月時点の想定ほど改善しない可能性、あるいは利下げ時期が後ろ倒しになると解釈できる。また、トランプ氏による関税引き上げ予想が米国の物価上昇を招き、インフレ率を押し上げるとの見方も、利下げタイミングの後ずれを補強する材料となった。
暗号資産に関しては、記者会見の際に記者がFRBによるビットコイン保有の可能性を問うと、パウエル議長は「FRBがビットコインを保有することは出来ない」と明確に否定した。当日ビットコインは一時99,000ドルまで下落し、100,000ドルを割り込んだものの、米国市場クローズ後に反発。翌営業日の米国市場オープン時には一時95,000ドルまで下落し、同日にはビットコイン現物ETF上場以来最大となる6.8億ドルの純流出を記録した。
金曜日には、12月5日につけた92,000ドルまで下落する場面があったが、22時30分に発表された米国11月コアPCE物価指数が市場予想を下回ったことを受けて反発。97,000ドル付近で週末を迎えた。
今週は週明けよりマイクロ・ストラテジー(以下、MSTR)のナスダック100指数への組み入れが予定されている。年初来で約28%上昇しているナスダック100指数に組み入れられることで、世界的運用会社のETF(Invesco QQQ Trust ETFなど)は同指数内のウェイトに応じてMSTR株を買い付け、MSTRへの資金流入が見込まれる。MSTRは約439,000BTCを保有する企業であり、今月17日には15,350BTCの追加調達を行ったとX(旧Twitter)を通じて発表、平均取得単価は初めて100,000ドルを上回った。
一方、クリスマスや年末休暇に入るため、市場参加者の減少が見込まれており、流動性が低い状態での取引となる可能性が高い。多くの海外市場は、24日(火)のクリスマスイブに早引け、25日(水)に休場する予定だ。米国では11月耐久財受注と新規失業保険申請件数が発表を控えており、暗号資産市場は365日24時間取引されるため、定期的な運用状況の確認が欠かせないだろう。
1) BTC/USD週間チャート(30分足)
2) BTC/JPY週間チャート(30分足)
3) ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格
4) イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格
5)連邦準備制度理事会及び連銀総裁の米国経済展望
6)今週における米国主要株価指数
12/15~12/21週の主な出来事
12/22~12/28週の主な予定
【今週のひとこと】暗号資産における税制改革の動き
政府の政調審議会にて12月19日、「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」が正式承認されたと与党デジタル社会推進本部web3主査の議員がX(旧ツイッター)にて報告しました。主な内容として「暗号資産による損益を申告分離課税の対象へ」、「規制の枠組みの見直し」、「国民経済に資する資産となるためのサイバーセキュリティを強化する取り組み」の3つが盛り込まれています。
特にポイントとなるのは、暗号資産取引の税制の見直しとなる「暗号資産による損益を申告分離課税の対象へ」についてです。課税方法を現行の雑所得(所得税・住民税合わせて最大55%)から申告分離課税(20%)の対象とすること、暗号資産にかかる所得金額からの損失の繰越控除を認める(翌年以降3年間)こと、暗号資産デリバティブ取引(CFD取引など)についても同様に申告分離課税の対象にすることについて、検討を行うべきと提言しています。
翌日の12月20日には、2025年度の税制改正大綱(翌年度以降の税制改正についてまとめた文書)が決定し、その中に「暗号資産税制に関する見直しを検討」することが盛り込まれました。同提言では、「暗号資産の取引口座は今年10月末時点で1,100万口座を超え、利用者預託金も2. 9兆円に達している。これは2005年にFX取引が旧金融先物取引法(2007年に金融商品取引法へ統合)の対象とされた当時の状況(2007年当時約80万口座)と比べても、多くの国民が暗号資産を投資対象として取引していることが伺える」、と記載されています。
現時点では「見直しの検討段階」であるため不確実性は残りますが、今回の動きを受け、暗号資産における制度整備が進んでいると言えるのではないでしょうか。将来、税率20%の申告分離課税や損益繰越制度の導入など、投資家にとって大きな改善が行われれば暗号資産投資家人口も更に増えそうです。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。