暗号資産マーケットレポート
今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
10/6~10/12 週のサマリー
- 米破産判事、FTX再建計画を承認
- Mt.Goxは、弁済期限を25年10月末までと1年間延長
- リップル社は、カストディサービス「Ripple Custody」の拡張を発表
暗号資産市場概況
10/6~10/12週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+2.33%の9,423,200円、ETH/JPYの週足終値は同+3.32%の369,635円であった(※終値は10/12の当社現物EOD[10/13 6:59:59]レートMid値)。
先週は、米破産判事がFTX再建計画を承認。国慶節明けを迎えた中国株が急落し、リスクオフムードが漂う中、暗号資産市場は下降基調が続いた。市場参加者が今後の利下げ動向を推測する材料となるFOMC議事要旨公表、米9月CPI発表を通過して調整は底を打ち、PPI発表後は堅調な展開となった。
週初、デラウェア州連邦破産裁判所のジョン・ドーシー判事が、FTXの破産計画を承認。当計画では、債権者の約98%が請求額の118%強を現金で受け取る見込みだ。好条件にも思われるが、FTX破綻時と比較し暗号資産価格は大幅に上昇しており、現物での弁済は見込まれないことから、暗号資産建て(例えばビットコインの枚数で換算した場合)では大幅に資産価値が毀損しており、債権者グループからの反対意見も根強い(ただし、実態として現物での弁済が困難である点も、動かしがたい事実である)。
金融緩和パッケージの発表以来騰勢が続いていた中国株(9/30号で言及)であるが、国慶節(連休)が明け、国家発展改革委員会の会見が行われると、具体的な財政支出規模についての言及がなかったことから、失望売りが続いた(下部に上海総合指数のチャートを掲載)。中国発のリスクオフ展開は、暗号資産市場にも重石となっていたと考えられる。
週央、公表されたFOMC議事要旨では、9月FOMCにおいて、ボウマン氏以外にも「50bpsではなく25bps利下げの方が適切なのではないか?」と考える参加者が存在していたことが明らかとなり(実際に25bps利下げに投票したのはボウマン氏のみ)、ネガティブ材料となった。
インフレ懸念が再発する環境で発表されたCPIは、事前予想対比若干の上振れとなり、インフレの粘り強さが意識されたが、PPIの発表値は低水準にとどまり、市場の関心はインフレ懸念から米大統領選(ひいては国債価格)へと移っていった。足もとではトランプ氏の当選確率が上昇しつつあり、次期トランプ政権では政府債務の拡大が想定されることから、国債価格にとっては逆風(貨幣価値が下がるため金利が上がり国債価格は下がる)となっている。
CPIと前後し、Mt.Goxから弁済期限を1年間延長する発表が行われた。短期的には市場での売却圧力が軽減された点でポジティブである。今年7月~8月にかけての弁済分で既に残高の約70%程度を分配済である(下部にチャートを掲載)ことからも、長期的には売却圧力の多くを織り込み終えていると筆者は考えるが、次回弁済が発表された際には一定のマーケットインパクトは発生しうるため、記憶にとどめておきたい。
その他ヘッドラインとして、月曜日には、バトルホーン・インベストメンツ社が起こしていたシルクロードのビットコイン(米国政府押収済)の所有権を主張する訴訟の審理が最高裁において棄却された。法的請求から解放されたことで、今後米国政府は約69,000ビットコイン(約40億ドル相当)を売却する自由を獲得した。トランプ氏は演説時に「当選したらビットコインは売却しない」という“国家戦略”も口にしているため、米保安官が不確実性を嫌って選挙前に売却する可能性も考えられる。そのため、シルクロードのビットコインが移動した、というヘッドラインは市場からはネガティブに受け止められるはずだ。
次週以降は第一に米選挙動向、暗号資産関連ではシルクロードから押収されたビットコインの移動状況に留意したい。
1)BTC/USD週間チャート(30分足)
2)BTC/JPY週間チャート(30分足)
3)上海総合指数(SHA: 000001 / CNY) 2週間チャート(30分足)
4)Mt.Goxのビットコイン残高
5)ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格
6)イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格
10/6~10/12週の主な出来事
10/13~10/19週の主な予定
【今週のひとこと】「Ripple Custody」とカストディサービス
先週の11日、リップル社は暗号資産カストディサービス拡張を発表しました。カストディサービスは伝統的な金融市場で重要な役割を果たしており、暗号資産市場においても重要性を増すようになっています。
「カストディ」とは、投資家が資産の保管と管理を第三者に委託するサービスです。銀行預金と異なり、カストディサービスでは有価証券の保管に加えて、資産の決済や配当金の受け取り、議決権の行使など、より広範なサービスが提供されます(※提供範囲はサービスによって異なる可能性があります)。
カストディサービスの代表例として、米国でのビットコイン現物ETFのケースが挙げられます。大手暗号資産取引所コインベースは、複数のビットコインETFにカストディサービスを提供し、顧客資産の安全性を確保しています。
今回拡張されたカストディサービスは、単純な暗号資産の保管業務を超えた「新たな可能性」を内包しています。XRPL(XRP Ledger)上では、RWA(リアルワールドアセット)の発行と管理が可能であり、これにより不動産、カーボンクレジット、石油、金など、実世界の多様な資産のトークン化が進んでいくことが期待されています。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。