米利下げ受け 上昇した暗号資産市場 | SEC承認の「ビットコイン現物ETFオプション取引」とは?(仮想通貨市場レポート 9/24号)

特集 暗号資産 週間マーケットレポート

暗号資産マーケットレポート

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

9/15~9/21週のサマリー

  • 米FRB、9月19日に開催されたFOMCにおいてFF金利の誘導目標上限を50bps引き下げ
  • 日銀、金融政策決定会合で金融政策の維持を決定
  • 米国証券取引委員会(SEC)、Black Rockのビットコイン現物ETF(IBIT)オプションの上場を承認

暗号資産市場概況

9/15~9/21週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+7.21%の9,072,700円、ETH/JPYの週足終値は同+8.13%の368,385円であった(※終値は9/21の当社現物EOD[9/22 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場は、米国金融政策の不透明感の払拭によるリスク性資産への資金流入を背景に堅調に推移し、BTCは節目となる64,000ドルを一時ブレイクアウトした。

19日に開催されたFOMCでは、利下げ幅の市場予想が25bpsもしくは50bpsの双方で拮抗していたが、結果としてFRBは積極的な緩和姿勢を示し50bpsの利下げ幅を発表。パウエル議長は50bpsの利下げが新たな利下げペースではないことを付け加え、当局者19人のうち10人が年内に予定されている会合においてにさらなる50bpsの利下げを支持した。今回の会合ではボウマン理事が25bpsの利下げを主張し、決定に反対票を投じた。政策決定に理事が反対したのは2005年以来であり2022年6月以来の全会一致が崩れたことから、今回の決定がFRB内においても意見が割れていたことが伺える。CME Fed Watch Toolでは、次回11月FOMCの利下げ幅についても50bpsと25bpsの双方で予想は拮抗している。

今回は6月以来となるFRB理事らによる政策金利の見通し(ドットプロット)も併せて公開された。ドットプロットによるとFRB理事の多くは2024年内4.0%-4.5%台、2025年は3.0%台前半での推移を見込んでいることが確認できる。前回の2024年6月に公開されたドットプロットでは2025年の金利水準の中央値が4.0%前半であったため、前回に比べ利下げの姿勢が強まっていることが伺える。しかし米国において依然インフレ率は高い水準で推移している状況であり、FRBも一旦大きく利下げをしてその後は指標を確認しつつ慎重な姿勢を見せる可能性も残されており、過度な利下げサイクルへの期待は控えておいたほうがよいだろう。また大統領選挙に伴う政策変更は織り込まれておらず、特に2025年以降の見通しについては相当の幅を持ってみる必要がありそうだ。

併せて注目された日銀の政策決定会合では金融政策の維持が決定された。消費判断を若干引き上げたものの、利上げ継続方針は維持され大きなサプライズはなく通過。発表後の為替市場はドル円が円安方向に推移する格好となった。

BTCは前週に引き続き世界的なマクロ環境の変遷に追従し、週を通して一時約4,000ドル幅の上昇を見せる週となった。暗号資産市場の重要な出来事として、米国証券取引委員会(SEC)が、Black Rockのビットコイン現物ETF(IBIT)オプションの上場・取引を承認したというトピックに注目したい(*IBITのオプション取引については別項「今週のひとこと」で解説)。

次週は米GDP成長率・米個人消費支出(PCE)価格指数の発表を控えている。FRBの米国経済への政策の正しさを裏付けることができる内容になるのかという観点から、指標の発表を注視する必要があるだろう。次週も引き続き米国の今後の金利政策動向の行方に注意を払った投資判断を行いたい。

1)BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

2)BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

3)次回FOMCにおける金利織り込み(25bps利下げ48.6%、50bps利下げ51.4%)

CME FedWatch Tool提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

4)2024.9.18 開催のFOMCで発表されたドットプロット

米連邦準備制度理事会の公開資料にてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

5)ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 紫線がビットコイン価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

6)イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 紫線がイーサリアム価格)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

9/15~9/21週の主な出来事

9/22~9/28週の主な予定

【今週のひとこと】ビットコイン現物ETFのオプション取引

今週、米国証券取引委員会(以下、SEC)は資産運用会社ブラックロックのビットコイン現物ETF(以下、IBIT※正式名:「iシェアーズ・ビットコイン・トラストETF」)に対し、Nasdaq ISEでのオプション取引を承認しました。今回のIBITオプション取引の承認は、主に投資家の価格変動リスクを管理する手段が増えることを示唆しています。またNasdaq ISE以外の取引所にも申請を行っているため、今後オプション商品の多様化が期待されています。

一般的に、オプション取引は先物取引とは異なり、資産を買う権利や売る権利の売買を意味します。詳細な説明は省略しますが、主に資産の価格変動リスクをヘッジする目的で利用します。実際に米国取引所Nasdaq ISEは、ビットコイン及びビットコイン関連商品のポジション・リスク管理ツールを提供するとSECに報告しました。

SECの承認内容によりますと、IBITオプションの決済方法は現物の引き渡しで行われ、既存のETFオプションと同じ規則に基づいて取引される予定です。この規則には、上場基準、満期日、取引の中断手続きなどが含まれています。現時点(9月末時点)では、 IBITオプションのポジション限度は25,000契約と試算されており、IBITと同程度の市場規模を持つ商品のオプション契約限度が400,000契約であることに対して、比較的保守的な水準となっています。Nasdaq ISEは、この水準に設定することで、全ての契約が権利行使された場合の影響がビットコイン市場全体の0.01%未満、IBITの流通量の約0.4%にとどまると試算しています。

このオプションが取引されるには更に2つの機関の承認が必要ですが、今回SECの承認という大きなハードルをクリアしました。残り2ヶ所はオプションズ・クリアリング・コーポレーション(OCC)と米商品先物取引委員会(CFTC)です。すぐに取引が開始されるわけではありませんが、今後の暗号資産関連デリバティブ(金融派生商品)の展開において、重要な出来事であることには間違いありません。

このレポートについて

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この記事の著者・インタビューイ

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