じわじわ下げたビットコイン、現物ETF純流出継続や独政府のBTC取引所移動など(仮想通貨市場レポート 6/24号)

特集 暗号資産 週間マーケットレポート

今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。

6/16~6/22週のサマリー

  • MicroStrategy社、11,931BTCを追加購入し合計保有高は226,331BTCに
  • SEC、イーサリアムの調査を取り下げ
  • 独政府、1.3億ドル相当のビットコインを複数の海外取引所へ移動

暗号資産市場概況

6/16~6/22週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比-1.22%の10,277,000円、ETH/JPYの週足終値は同-0.04%の560,030円であった(※終値は6/22の当社現物EOD[6/23 6:59:59]レートMid値)。

先週の暗号資産市場はビットコイン現物ETFの純流出継続、欧州政治の不確実性の持続および景気回復の失速シグナル、米経済の堅調さを背景に暗号資産のポジティブニュースが相殺される格好となり、じわじわと値を下げた週であった。

週初ビットコインは先々週の米国5月CPIとFOMC記者会見を通じ、利下げを意識した市場参加者によって65,000ドル台でサポートされ、2,000ドル上昇した67,000ドルに付けるも現物ETFの純流出継続が確認されると65,000ドルへ値を戻した(下記3,ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計)。

火曜日には米国5月小売売上高が出され、家計消費の逼迫を示唆。28日発表のインフレ指標である米消費支出(PCE)の減速による利下げ期待が意識されたが、PCEの結果を待つリスクオフ(ポジションを軽くする)ムードが広がったことによりビットコインは弱含み推移に。

週央にはSECのイーサリアム2.0に関する調査が終了されたことを受け、ビットコインとイーサリアムが小幅な上昇に転じるもドイツ政府が1億ドル相当のビットコインをCoinbaseやKrakenといった複数の海外暗号資産取引所への移動を確認。価格上昇へのシフトが断たれる格好となった。

ドイツ政府による大規模なビットコイン売却ニュースは時間が経つにつれて価格下落圧力としての力を失い、じわじわと66,000ドル台へ上昇。世界最大ビットコイン保有企業MicroStrategy社の11,931BTC追加購入のニュースが流れるとマーケットは上昇材料が無くなったと判断され、元の65,000ドルへと跳ね返される展開となった。

21日にカナダ大手資産運用会社3iQがソラナETP商品の仮目論見書をカナダ当局へ提出。マーケット参加者に注目されるも再びドイツ政府によるビットコインの移動が相場下落要因として作用した。

週末前、欧州市場における欧州6月製造業PMIがマーケットの予想を下回り、欧州景気回復の失速への懸念とフランス政治の不確実性を背景に欧州株は下落し、ドイツ債および米国債に買いが向かった。21日の終盤、フィデリティなど複数の資産運用会社がイーサリアム現物ETF審査書類の修正案を提出。同日には米6月製造業・非製造業PMIがマーケット予想をやや上回る結果が出され、米国経済の堅調さを確認。修正案による暗号資産価格への反応は限定的であった。

先週はよりマクロ環境(経済と政治)の動向に注意した値動きが特徴的だった。足元の価格は弱いモメンタムに入ったと考えるよりも、慎重に構えていると見るほうが合理的であろう。今週はフランス下院選の第1回投票が30日に実施され、米国インフレ指標の個人消費支出(PCE)と個人所得・支出が同日(28日)に発表予定。

ビットコイン先物マーケットは未決済建玉が$29B以上とATH時の$32.3B付近と同等の高水準を維持している(表4,Bitcoin:Futures Open Interest [USD] – All Exchanges,2020/12/11-2024/6/22)。この未決済建玉にはベーシス取引による建玉が多く含まれている可能性はあるものの、ビットコインが現在のレンジ範囲を突き抜けるような動きを見せた際にはさらなる価格変動の原動力となる可能性が含まれている。経済指標や政治動向が価格変動の起点となるシナリオも考慮する必要があることから引き続きマクロ環境を注視したい。

1)BTC/USD週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

2)BTC/JPY週間チャート(30分足)

TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成

3)ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計)SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

4)Bitcoin: Futures Open Interest [USD] – All Exchanges,2020/12/11-2024/6/22

(黄色のバーが未決済建玉 / 黒線がビットコイン価格)Glassnode提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成

6/16~6/22週の主な出来事

6/23~6/29週の主な予定

【今週のひとこと】Consensys(コンセンシス)とSECの焦点

今週の19日(日本時間)、米国証券取引委員会(以下、SEC)はConsensys社(以下、コンセンシス)のイーサリアム2.0に関する調査を終了するとの報道がありました。これを受け、暗号資産業界では「SECがイーサリアムを有価証券として取り扱わない」ことがコンセンサスになりつつあります。本号では暗号資産業界で注目が集まっているSECとコンセンシスについて説明をします。

今年4月、SECはコンセンシスが提供するWeb3ウォレット「MetaMask」を通じたMeta Swaps機能やステーキングが取引所法および証券法に違反しているとして、コンセンシスへウェルズ通知を送付しました(ウェルズ通知については当社の週間レポートを参照されたい)。

SECはそれぞれのサービスを次のように指摘しています。MetaMask Swaps:「ブローカー・ディーラーとして未登録につき取引所法違反」、MetaMask Staking:「未登録有価証券の提供につき証券法違反」です。

これに対し、コンセンシスは先手を取る形でSECを提訴しました。同社は「MetaMaskウォレットは単なるインタフェース」であり、「顧客の暗号資産を保有または取引ができる機能を持たない」としてブローカーとしての機能を否定しました。また、コンセンシスはイーサリアムが証券ではないというスタンスから、SECがイーサリアムを証券であるという考えを基にコンセンシスを調査すること自体が法を侵害しているとして裁判所に対して「イーサリアムが証券ではないこと」の宣言を求めました。

コンセンシスとSECに関する一連の流れをまとめると4月10日にSECがコンセンシスに対してウェルズ通知を送付、4月25日にコンセンシスがSECを提訴、6月中旬にSECが「コンセンシスへの法的措置勧告の不実施」、「イーサリアム2.0に関する調査の終了」をコンセンシスに通知しました。

約2か月という短い期間で事態は決着したように見えますが、SECは2023年初頭からイーサリアムの証券性について調査を行っていたとする報道もあり、イーサリアム現物ETFがローンチされる前にイーサリアム2.0関して最終判断を示したかった意図が伺えます。

SECから調査の終了通知を受け取ったコンセンシスですがSECに対する訴訟について継続する方針を示しており、SECのイーサリアムに対する明確な位置づけを公にしておきたいという同社の意図も伺えます。訴訟の結果次第では暗号資産市場に大きな影響を与える可能性があるため引き続き本ヘッドラインに留意する必要があるでしょう。

このレポートについて

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<暗号資産を利用する際の注意点>
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暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
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この記事の著者・インタビューイ

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