今週もSBI VCトレード提供の暗号資産(仮想通貨)に関するウィークリー・マーケットレポートをお届けします。
4/28~5/4週のサマリー
- 香港証券取引所がビットコインとイーサリアムの現物ETFを上場
- バイナンスの創設者・元CEOのCZ(趙長鵬)に対し銀行秘密法違反で懲役4か月の判決
- ビットコイン現物ETFは過去最大の日次資金流出額を記録
- グレイスケールのビットコイン現物ETF「GBTC」が上場以来初の純流入に
暗号資産市場概況
4/28~5/5週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比-2.28%の9,784,400円、ETH/JPYの週足終値は同-6.84%の477,955円であった(※終値は4/27の当社現物EOD[4/28 6:59:59]レートMid値)。
先週の暗号資産市場は、マクロ経済指標が主要な変動要因となった。週初は前々週~前週のレンジ範囲内で方向感なくスタート。香港証券取引所におけるアジア初のビットコインならびにイーサリアム現物ETFが上場、一定の成果を収めるも、ビットコイン価格はETF上場付近を頂点に切り下げ、月足の陽線連続記録はビットコイン史上最長となる7カ月をもって幕を閉じた。
香港ETFの立ち上げを期待外れとする声や、香港ETFの不振を続落の一因とする見解もあったが、これは誤りであろう。香港現物ETFの初日取引高は約1,275万ドル(ビットコイン974万ドル / イーサリアム301万ドル)を記録し、米ETFの市場規模に沿って基準を揃えると約20億ドル相当となる。米ETFの初日取引高が約46億ドルであったことから、米ETF対比で半分弱の需要が存在していたことが読み取れる。過去3年間に香港で発売された82のETF中では6位にあたり、全体で上位20%に入る水準だ。既に米ETFが一定の需要を吸収した後の局面であり、半減期通過後であることも加味すると、十分に健闘したといえる。
続落については、前週レポートでも言及していたISM、FOMC等の経済指標を控えたリスクオフが大きく影響したと考えられる。ISMは先月の発表で2022年10月以来の最大値となったことで、インフレ(ならびにインフレ対策としての追加利上げ)が懸念され、追加利上げの有無がFOMCで、今後の方針がパウエルFRB議長発言で示されることから市場参加者の注目を集めていた。
暗号資産だけでなく米株からもリスクオフによる資金退避が進んでおり、ISM発表で市場予測対比弱い結果が確認されると一旦の底打ち、その後FOMCとパウエル議長発言を経て、価格は徐々に回復。この間、ブラックロックのビットコイン現物ETFからは初の資金流出が発生し話題となった。
FOMCでは市場織り込みどおり金利据え置きが確定。パウエル議長発言では、追加利上げの可能性は低いとしながらも、3月の声明時に含まれた「今年のある時点で」の利下げへの言及がなくなり、直近の利下げパスは遠ざかった。また、保有している米国債の残高縮小ペースを6月1日以降月間600億ドルから250億ドルに減額。量的引き締めのペースが市場の期待以上に緩やかになり好感された。
週後半には雇用統計が発表、非農業部門雇用者数が市場予測を大きく下回ったことから、米株もビットコインも大きく買い戻され、資金退避前の水準まで価格を戻すこととなった(円建てで価格が下がっているのは日銀による為替介入の影響である)。Fed(米中央銀行)が最重要視する目標は「物価の安定」と「雇用の最大化」の両輪であり、雇用の弱さが指標に表れたことで、市場が再び早期利下げを織り込みにいった結果であるといえる。ここまでの一連の米株・ビットコイン・金利の騰落は別途下部にチャートを作成したため参照されたい。また、最下部「今週のひとこと」でも金利と暗号資産の関係についてコラムを掲載する。
次週は目立った経済指標が少ないが、FOMCメンバーによる発言は相次ぐため、雇用統計以降の金利方針について手掛かりが示される可能性がある。また、雇用統計後にはグレイスケールのビットコイン現物ETFにおいて史上初の資金流入超が観測された。この点については、前週レポートで記載した「Bitcoin Mini Trust」への期待が後押ししている可能性がある。GBTCからの資金流出に歯止めがかかる場合、ビットコインETFにとって大きな変化となるため、今後の動向には引き続き注目したい。
BTC/USD週間チャート(30分足)
BTC/JPY週間チャート(30分足)
ビットコインの月次リターン
BTC/USD, SPX(S&P 500), US10Y(米金利)週間チャート(30分足 / 米開場時間のみ)
ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格
ブラックロック(運用資産残高2位のビットコイン現物ETF)への資金流入出
グレイスケール(運用資産残高1位のビットコイン現物ETF)への資金流入出
4/28~5/4週の主な出来事
5/5~5/11週の主な予定
【今週のひとこと】金利と暗号資産
本レポートも含め、「市場参加者は利上げを懸念してリスクアセット(株や暗号資産)を売却した」や、「市場参加者は利下げを期待してリスクアセットを購入した」という説明を目にすることがあるかもしれません。
一般に、「金利と株価はシーソーのような関係」という表現があります。「金利が上がると株価が下がり、金利が下がると株価が上がる」ような状態を表した言葉です。必ずしもこの関係が当てはまるケースばかりではありませんが、まずは基本的な関係として上記を念頭に置いておくとよいでしょう。
金利が上がった場合、企業の借入コストは上昇し、業績を圧迫します。将来の業績が下がることを予測した投資家は株式を売却し、株価が下がります。預貯金や債券の利率が上がるため、株式に比べてこれらの運用が相対的に魅力的に映り、資金は預貯金や債券に流れます。
金利が下がった場合、企業は低コストで融資を受けられるようになり、設備投資をはじめ、企業による投資が促進されます。将来の業績が上がることを期待した投資家は株式を購入し、株価が上がります。預貯金や債券の利率が下がるため、株式を購入することが相対的に魅力的になり、資金は株式に流れます。
本文で『Fed(米中央銀行)が最重要視する目標は「物価の安定」と「雇用の最大化」の両輪』であると書きました。中央銀行はこれらの目標を達成するため、「公開市場操作(市場の国債を売買して世の中に流通する通貨の量(マネーサプライ)を調整すること)」や「政策金利のコントロール」といった手段を用います。FOMCで発表される「金利」というのは、「FFレート」と呼ばれる米政策金利のことを指すのです。
したがって、「前回のISMではインフレが強いというデータが発表されたから、次回のISMではもっと高くなるかもしれない → もしインフレがより進むとすれば、Fedは更に金利を上げるかもしれない(金利が上がるとすればFOMCで発表されるかもしれない) → 金利が上がったら株価は下がるかもしれない → ISMとFOMCの前に今持っている株を売却してポジションをフラットにしておこう(リスクオフ)」といった動きや、「雇用統計の結果が想像以上に悪かった → Fedは最大雇用を重視しているから、この状況で利上げには踏み切れないはず、むしろすぐに利下げするのではないだろうか → 利下げするなら今回売ってしまった株を買い戻しておこう」といった思惑が発生するのです。
金利と雇用・インフレ率の関係については、あまりにも長くなってしまうため今回は説明を控えます。一般論としては、金利を上げるとインフレ率(生産)が下がり、失業率が上がる / 金利を下げるとインフレ率が上がり、失業率が下がるというトレードオフが存在するとされています。
ビットコイン現物ETFの台頭によって、伝統的金融の資金が流入したことで、暗号資産は今まで以上にマクロ経済指標の影響を受けるようになりました。経済についての理解を深めることは、先週のような経済指標主導の相場で役立つのではないでしょうか。
このレポートについて
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所「SBI VCトレード」提供の週間マーケットレポートです。毎週月曜日に最新のレポートをお届けします。
<暗号資産を利用する際の注意点>
暗号資産は、日本円、ドルなどの「法定通貨」とは異なり、国等によりその価値が保証されているものではありません。
暗号資産は、価格変動により損失が生じる可能性があります。
暗号資産は、移転記録の仕組みの破綻によりその価値が失われる可能性があります。
当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
当社の取り扱う暗号資産のお取引にあたっては、その他にも注意を要する点があります。お取引を始めるに際しては、「取引約款」、「契約締結前交付書面」等をよくお読みのうえ、取引内容や仕組み、リスク等を十分にご理解いただきご自身の判断にてお取引くださるようお願いいたします。
秘密鍵を失った場合、保有する暗号資産を利用することができず、その価値を失う可能性があります。
暗号資産は支払いを受ける者の同意がある場合に限り、代価の支払いのために使用することができます。