動画と音声と文字で学ぶ「あたらしい経済」
読者の方のニーズに合わせてコンテンツを提供する企画「動画と音声と文字で学ぶあたらしい経済」。ブロックチェーン/仮想通貨(暗号資産)のキープレイヤーを取材し、さまざななメディア形態でお届けします。今回はイーサリアム財団エグゼクティブディレクターの宮口あや氏のインタビューをお届けます(第3回/全3回)。
イーサリアム財団エグゼクティブディレクター 宮口あや氏 インタビュー #3
イーサリアム財団(Ethereum Foundation)エグゼクティブディレクターである宮口あや(Aya Mitaguchi)氏に「Devconの開催場所を大阪に決めた理由」「宮口氏の今後の具体的な活動」「Ethereum Foundationの今後の具体的な活動」などについて語っていただきました。
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Transcript
竹田:今年Devconが大阪が行われると思うんですけど、なぜ大阪に決めたんですか?
宮口:Devconは毎年、今年で5回目なんですけど、いや0から始まっているから6回目かな。一応次はどのエリアみたいなのは今年まではだいぶ前から決められていたんです。そして私が入る前から今年はアジアとなんとなくですけど決められていました。去年はヨーロッパで今年はアジアっていうのが。だから「私がいるから日本?」と思った人達もいたんですけど。
でも逆に私日本人で、日本出身で、日本の業界を見てきたので。あまり単に日本が観光地として人気があるから「じゃあ日本でDevcon」っていうのは個人的にもちょっと恥ずかしいと思っていました。
ご存知の通りDevconって業界の中でも、自分で言うのもなんですけど、これだけの質でこれだけの大きさ(まあ大きさは実はなるべく小さくして今のサイズなんですけど)、今年5000人くらいの規模で、初回のチケットは2分で売り切れたりしていて。
私がイーサリアム財団に入る前からこのイベントの質の高さというか、本当の業界トップの人達が集結するイベントを日本に持ってくるくらい、はたして日本は準備ができているか、それだけのコミュニティがちゃんとあるのかっていうのは常に気にしていました。だからこそただ単に日本に持ってくるのは、立場的に逆にできないですし。だから日本でやると言った言い出しっぺは私じゃないんですよ(笑)。
日本に持ってくるとなると責任感もありますし、なんか仕事が増えるなと思ってました(笑)。だからどうしようかなって思ったんですけど、うちのメンバーとかコミュニティのメンバーで日本のファンがいて「日本でやってよ」って声があがってから考えるようになりました。去年の東大でイーサリアムのミートアップやった頃ですね。、「あぁ日本でもDevconってありなのかな」って思うようになりました。
でもその頃からコミュニティが今はまだ小さいけれどある程度大きくなるだろうというのがみえないとDevconを日本に持ってこれないと日本の一部の人達には言ってました。日本に頑張ってくれないと、シンガポールや他の国からも開催して欲しいというすごいラブコールもありますし。日本に持ってくる限りは「なんで日本にしたの?」って言われないちゃんと正当化できる理由が必要でした。
去年から今を比べてまだまだこれからかもしれません。日本はオープンソースのコミュニティが広がるの難しい文化じゃないですか、そもそもオープンなこととかにあまりいいとしないし、だから開発者や研究者が個人で頑張るのが難しい国だと思うんですよね。サポートもあまりないし。
でもその中でも頑張ってくれている優秀な人達が出てきて、数はそんなに多くなくても、これからの可能性があるんじゃないかと思えるようになりました。そして私日本出身なので、もしそれでできるんであれば、これが日本のサポートになるんであれば、こんなことができるのって多分最初で最後じゃないかと思って。タイミング的にも今しかないと思ったんで、みんなのリクエストにのっかって、じゃあ日本でやろうと言いました。
そして場所は東京だとちょっとイーサリアムぽくないなと思っていました。今までDevconは去年もプラハだったりとか、ちょっと真正面じゃないところの方が向いているかなという思いもありました。Devconはそもそも1年このためにこれだけは行くっていう人が世界中にいるイベントです。だから大阪だったらアジアからは直行であるし、ちょっとユニークな文化でもあるし、日本の伝統的なものも周りにあるし考えて大阪に決めました。
ある日ヴィタリックに「Devcon大阪開催どう思う?」と聞いてみて、一応彼が「絶対嫌だ」って言ったら考えなきゃと思ってたんですが、彼はまず日本開催にはすごくサポーティブで、「良いんじゃない?」みたいに言ってくれたんです。それであとは私普段日本にいないので、日本にいるコミュニティの人達にサポートしてもらいながら、ここまで来たんですけど。
あとは日本でも技術開発は増えているし、企業の方もイーサリアムに興味をもってきている、大企業が「イーサリアムで色々作って」というのが毎日増えてきていますよね。そんな日本の方々がDevconに来ればイーサリアムが面白いことをやっているのを見られるイベントですし「イーサリアムのコミュニティの雰囲気はこういう風ね」って分かるように、なるべくビギナーでも分かるイベントを作っています。そういった意味も含め日本で今やることに意味があると思っていますね。
竹田:ありがとうございます。次にイーサリアム財団の今後の活動について教えて下さい。
宮口:そうですね、今までやってないことでもう少しちゃんとやりましょうと思っています。それはもう少し伝えることです。
そもそもイーサリアム財団って何やっているのって言われることも多いですし。イーサリアムもあまり売り込むことに美学を感じていないところがあって(ちょっと日本人とそこが合うんですけど)、今まではそれで良かったんですけど、そうすると他の色んな情報に混ざっちゃって、どれを見ていいのか分からないし、イーサリアムの良さが分からないっていう人が多いと思うんですね。
だから今WEBサイトの改善だとか、そこをあまりうちがコントロールしないようにコミュニティで作りながらも、コミュニケーションをより良くしていくっていうのは、努力をしています。
結構コミュニケーションはメインのフォーカスでこ、のようにメディアでお話しするのも一つですし、例えばイーサリアム財団からやそれぞれのチームからのアップデートをみんなに技術の部分で今どこまでいっているのかとかをちゃんと伝わるようにしていきたいです。
あと私が一番個人的に伝えたいのは、本当にトップのレイヤーのアプリケーションレベルで、世の中が変わっている、世の中に良いことが起きているっていうのがようやく起き始めているということです。その例をもっと紹介していきたいっていうのが、個人的にもイーサリアムの財団の活動としてももう少し増やしていこうと思っています。
いかにこっちがコントロールせずにそれをやるかって難しいんですけど、色んなところとパートナー組みながら、情報発信が、メディアの方の力もお借りしなきゃいけないんですけど、できたらなと思っていますね。
竹田:最後に、宮口さん自身がこの一年、個人としてどういうことをやっていきたいかを教えてくださ。
宮口:私は元々プロジェクト側にいるとわくわくする方なんですけど、今はそれができない立場なんですよね。今はプロジェクト側といよりは、いわゆる難民にIDをあげましょうとか、それから保険をブロックチェーンでイーサリアムで提供しましょうとかに取り組んでるプロジェクトをサポートする側にいるんですよね。
ただそういう話を聞くとわくわくして、自分のモチベーションになるので、なるべく直接話をするようにしています。実際Devconでもそういったアフリカとかのプロジェクトを連れてこようと思っているんです。そういう人たちをお金出すだけではなくていろいろとサポートしていきたいですね。それは自分のパッションのためにもなんですけど。
できればそれを現地に行ってやりたいんですけどね。この前もバヌアツで災害地の人達がクリプトをどうやって使えているかっていうのを、インターネットもたまに切れるようなところで、現地でじっくり取り組んでいるプロジェクトがあって。
そういう人たちってあまりスポットライトを浴びないんですよね。私は現地にはいけないけど、ストーリーを伝えるみたいなのは、個人でしたいとずっと思っているんです。なかなか自分一人ではできないんですが、だからなんかしたいと考えてます。
このように短期的な個人のゴールとしてはスポットライトを浴びてないけど、絶対に世の中を変えている人たちのストーリーを伝えることをやっていきたいですね。
(おわり)
→「Ethereumとの出会いから現在」イーサリアム財団エグゼクティブディレクター宮口あや氏インタビュー(1)」
→「Ethereumのスケーリングは”今”起きている」イーサリアム財団エグゼクティブディレクター宮口あや氏インタビュー(2)