動画と音声と文字で学ぶ「あたらしい経済」
読者の方のニーズに合わせてコンテンツを提供する新企画「動画と音声と文字で学ぶあたらしい経済」がスタートしました。ブロックチェーン/仮想通貨(暗号資産)のキープレイヤーを取材し、さまざななメディア形態でお届けします。
LayerX CTO 榎本悠介インタビュー #03
LayerXのCTO 榎本悠介氏に「LayerXの事業とゼロチェーンについて」「従来企業がコンソーシアムチェーン を使うタイミング」「LayerXが目指すもの」などについて語っていただきました。
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Transcript
竹田:続いてLayerXの現時点でのプロダクトとか事業の話を聞いていきたくって。まずプロダクトの話を聞いていきたいなって思っていて、Zerochainです。今の話の流れだったら、コンソーシアムチェーンが今後2~3年後普及して、その後にコンソーシアムじゃなくて。
僕の考えとしては、やっぱりパブリックの中でも見られたくないデータってたくさんあるから秘匿化しないといけないっていうところの1つの解決策が、僕自身Zerochainかなって思っているんですけど。
まだまだ全然仕組みの部分、理解できない部分が多いので、Zerochainの仕組みというか、なぜ作ったのかというところからお伺いできればと思います。
榎本:正直、欧佑さん自身に語ってほしいというのが正直なところがありつつも。結構おっしゃる通り秘匿化がすごい大きなテーマだと思っていて。パブリックチェーン文脈でもすごい昔から言われていたことですよね。ビットコイン自身が完璧に匿名性があるかと言うとそうではない、インデックスを完全に追っていけば分かるところ多いんじゃないかみたいな。
BUIDLさんが作っているSHIEDLだとかっていうので、結構このUTXOを伝えばわかるだとか、トランザクションの存在自体は実は見えちゃうよねだとかっていうのが課題なので、まずはZcashだとか色んな匿名系のチェーンが生まれたと思っていて。
なのでパブロックチェーン文脈でも一つの大きなテーマでしたと。一方でコンソーシアム文脈でもよくあるのがフリーライダー問題みたいなところ、みんながデータを共有するとして、なんか大きな企業ほど共有したがらないみたいな。
強いプレイヤーほど乗っかりたがらないみたいなところで、本当は全体最適で、みんなが乗っかるのが全体からしたら最適かもしれないんだけれども、なんでこいつにデータを渡さないといけないんだろうみたいな。
こいつ絶対タダ乗りしているだけなんじゃないのとかが見え隠れして、結局コンソーシアムが成立しないみたいな。個人的にコンソーシアムチェーンの難しさは技術もまだまだあるとは思いつつも、どうやってそこに行きつくかみたいなところだと思っていて。
複数社が本当に上手いこと組んで、特に大きい企業ほど難しいと思うんですけど、システム的にも全部協力してもらって、本当にノードを立ててもらってリアルなワークフローをみんなで組んでもらうみたいな。
やっぱりその難しさを感じていて。なのでそこの助けの1つというか、秘匿化っていうのがあった時にそれが一段とブーストして、色んな課題を解決していくといいんじゃないかと思いますね。
竹田:いま最初に榎本さんがファシリテーターっていう話を最初にされていたと思うんですけど。
榎本:ちょっと言いすぎな気がする、やめときます。
竹田:そこの中で今どういう役割に直面しているのかなっていうところ。あとは多分事業の話に関わってくると思うんですけど、今の現実問題としてどういう課題に直面しているのかっていうところを聞きたいです。
榎本:まず絶対やることとしてブロックチェーンってこういうものですよねっていうのは、すごい企業さんに口酸っぱくお伝えするみたいなのはありますよね。
やっぱり当然ですけど銀の弾丸ではないので、いわゆるデータベースみたいな役が期待されているんだったら、全然使う意味はないですし。なので何が向いてて何が向いてないかみたいな。
やりたい課題とか見ている世界に対して、それ別にブロックチェーンやらなくていいですよとか普通に言うんですよね、こうやった方がいいですよみたいな。ただ合っている部分があれば、じゃあこうしたらいいじゃないですかみたいな話をして、それを一社だけじゃなくて複数社に対して話していくみたいな。
それによってコンソーシアムの区分を促進できたらいいなとは思っていて。ちょっと話がずれちゃうんですけど、クラウドの役割もめちゃくちゃ大事だと思っていて。LayerXはMicrosoftさんとパートナーシップを結んでいるんですけど。
Microsoftさんはじめ、クラウド業者の果たす役割はめちゃくちゃ大きいと思っていて。やっぱり企業のシステム部門とかからすると、訳の分からない新しいシステムを構築して、なんか運用体制組んでとかって、それだけで1つの大きなハードルになるとわけですよね。
そこがマネージドで一旦動きますよみたいな。本当にプロダクション乗せるかはさておき、すごいイメージのわくものがパって各社組めますよみたいな。やっぱり今のマネージドなAzureさんだとか、AWSが提供しているマネージドな仕組みって結構すごくて。
本当にコンソーシアムを気軽にインビテーションみたいな形で送れるんですよね。このAWSアカウントIDに送るとか、Azureのサブスクリプションにコンソーシアムの招待を送るとか、参加しますってやったら、もうそこでコンソーシアムを組めちゃうみたいな。
すごい手軽にデモみたいなのができるようになっていて。そういう手軽さみたいなのがかなり今後の可能性を広げるんじゃないかとは思っています。
竹田:なるほど。その中で、いま最後コンソーシアムチェーンでいま事業としてLayerXでやられてると思うんですけど。企業さんが最後に納得感を持って、じゃあ一回ブロックチェーン、コンソーシアムでやってみるわってなるタイミングってどういうタイミングなんですか?
榎本:さすがに企業さん依存、それぞれなところはあって。倫理が通った時とか言ってもなんかつまらないんですけど。イメージですけど、やっぱり時間のかかるものは多いかなと思っていて、その未知な技術と未知なパラダイム。
やっぱり今まで一社で完結して全てコントロール下にあったから、何かの課題を解決するって目標も見積もりやすいみたいな。今までがこういうフローだったからここが削減できてこうだよねみたいなのが、一気に複数社関わるってなっただけでめちゃくちゃ解像度が低くなる。
そもそも今までのフローを全部把握しているやつなんていないぞってところから始まるみたいな。改めて洗い出してみて絶望するみたいなのがあったりだとか。っていうので結構時間はかかるし、普通のプロジェクトに比べたら難易度は跳ね上がるなとは思っていて。なので今のところ、時間はそこそこかかるなとは思ってます。
竹田:どれくらいの時間ですか?
榎本:数か月とかは、ものによってはかかるなみたいな。
竹田:最初に企業さんと接点を持ってから数か月くらいコミュニケーションを取って、そこからやっと使ってみる、なにかしらの使わないなのか、どちらかの結果が出るってことですか?
榎本:もちろん既に企業さんがすごい解像度高く持ってきた場合とかは早くできますし。本当に小さい単位でいいからまず見たいんだとかだったら別なんですけど。
かなり先を見据えて、かなり上のレイヤーまで巻き込んだ大きなプロジェクトになるとそのくらいは絶対かかってくるなとは思っています。
竹田:わかりました。最後の部分で、Zerochainのプロダクトの部分のお話を聞いていきたいなと思っていて。Zerochainが目指しているビジョンってどういうところですか。
榎本:Zerochain自体はSubstrateというフレームワークを使っていて、自分たちで一からブロックチェーンを作るんじゃなくて、そういうブロックチェーンを作るフレームワークみたいななのに乗っかって作っています。
ある意味、開発コストの削減とエコシステムに乗っかるためですね。というので、色んな可能性が生まれていてPolkadotのParachainとして動いていくみたいな、Polkadotのネットワークの中の秘匿化部分をにらむモジュールとして使ってもらうみたいな手もありますし。
単純に単体で、企業さんの秘匿化技術として使ってもらうみたいな手もあって。今のところすごい絞っているわけでは正直なくて、まずその技術に割と真摯に向き合っている状態。何が難しくて、何が今まずできることなのかみたいなっていうのを一歩一歩。
結構やっぱり秘匿化って絡むと、例えばガスコストを払うだけでも実はちょっとめんどくさかったりするみたいな。払ってるガスコストも秘匿化の範疇みたいな。なので結構一歩一歩、欧佑さん中心に抽出をしている段階で。
なので最終的にこう目指したいっていうのは、もちろん2つ、パブリックチェーンで言うと(Polkadot、Parachain)、コンソーシアムチェーンで言うと企業の秘匿化の柱になるっていうのがありつつも、現時点だと本当に一歩一歩やっていくっていう状態ですね。
竹田:そこの部分で、今までの秘匿化の部分との大きな違いっていうのはどういうところなのかなっていうところを聞きたくて。僕自身調べてて分からなかったところが、UTXOの秘匿化っていう部分が今まだZcashとかMoneroとか。そういうGrinであったりとか、そういう通貨っていうところだったんですけど。今度アカウントベースの秘匿化っていうところをZerochainは言っていて、自分の中でもアカウントベースの秘匿化ってなんなんだろうってところがあまり理解できてなくて。そこを教えていただけたらなと思います。
榎本:アカウントベースって、スマートコントラクトみたいなのが作りやすくなるっていうのが一個面白…。そうですね、イーサリアムみたいなのが全部アカウントベースじゃないですか。
というので、結構みんなが慣れ親しんでるスマートコントラクトみたいなのが作りやすくなって。結局なにか送金するだけじゃないんですよね、ニーズって。送金だけじゃなくて、もうちょっと色んな整理を加えたいみたいなのがどうしても必要になってくる。
例えば利払いとかって、送るだけじゃなくてちょっと利率度を計算するのとか、多分色んなソフトウェア的な制御があるじゃないですか。ってなってきたときにスマートコントラクトみたいな相性が良いっていうのは結構大きいんじゃないかなっていうのは思っていて。
竹田:最後の質問の部分で今後のLayerXのビジョンですね。どういう…?
榎本:結構2つチームがあるっていう話をしたんですけど、事業開発とR&Dみたいなところが、やっぱり両輪が上手く回る会社がすごくいいなとは思っていて。
現時点できっとこの技術来るはずだみたいな、こういう課題があるはずだって言ってR&Dに踏み切るのも結構危険な気はしていて。やっぱりリアルなビジネスを作る中で見えてくる課題みたいなところをR&D側に持って行って。
例えば秘匿化とかリアルな課題なんですよね、どこと話聞いても出てくるような課題がリアルにそこのR&Dの方にいって、それの成果がまたビジネスの方にいってみたいな、いい感じに両輪が回るといいなとは思っていて。
おこがましいですけど、Googleとかって検索エンジンみたいなのがあって、そこから機械学習みたいな技術がめちゃくちゃ発展して、それがまた広告にいったりだとかっていう、その両輪が上手く回ることでどんどんビジネスへと広がりつつ、徳もたまっていくというか。
業界の技術発展に貢献できるみたいな。それによって見晴らしの良いところにはいたいなって思っていて。ビジネスの話も技術の話も、全ての最初の話がやっぱり集まるような見晴らしのいい場所にLayerXとしていたいなとは思っている感じですね。
竹田:どのくらいの規模の会社を目指しているんですか?
榎本:それはもうGoogleくらいですよね。
竹田:というと時価総額どれくらいでしたっけ、Googleって。
榎本:どれくらいでしたっけ。何十兆くらいでしたっけ。
竹田:20兆、30兆…。
榎本:30兆大台でしたっけ。
竹田:そのあたりか。じゃあ目指すところはGoogle、Facebook…。
榎本:これ恥ずかしいね。僕自身はキャリアとか最初にテーマがあって、実はドキドキしてたんですけど。物作っているのが好きな人間で、リアルな課題解決していくのが好きな人間なので、あんまりキャリアとか考えたことないんですよね。ぶっちゃけ面白いからやっているみたいな感じで。
設楽:今回のLibraの公聴会とか見てても、世の中のそれに対する反応とか、色んな報道とか、あとは色んなハッキング事件とか。いわゆるブロックチェーン・暗号資産・クリプトカレンシーに関することに関して、まだ非常にマスのものではないなっていうのを感じていて。
榎本さん的にどういうことをしていけば…。一つは恐らく、広く言うエンジニアの中でブロックチェーンが広まるためにこういうアクションが必要っていうポイントと。もう一個は一般の色んな人がブロックチェーンに、企業が参入してくるっていう二つでどういうアクションが業界として必要だと考えられてるか。
榎本:もう良いユースケースを作るのが一番かなって正直思っていて。結構リアルにこれブロックチェーン技術、裏側にあるから便利になったよねみたいなのがパッとイメージできるのか一番かなって思っているんですよ。
結構日本だと別にビットコインとかなくても、送金とかそんなに困らないじゃないですか。別にお金送るのにそんなに信頼できない人とかそんないないしみたいな。なにか送金にすごい手数料かかるとか…。国内だけだとあれなんですけど。
じゃあ送金1つとっても中国にいる家族に、出稼ぎに行って送金したりっていう立場だと、実は全然感じ方違うなとか。自分、銀行口座持ってない中でどうすればいいんだっけとか。っていう結構リアルな困りごとを解決してくれる技術じゃないと、なかなか今後の広がりって難しいのかなとは思っていて。
なのでLibraだったら、多分日本人というよりは、本当にアンバンクトな人達、違う国の、本当に銀行の支店に行くのに車で1時間かかりますとか。オラの島に銀行はないです、いたいな。
支店はないですみたいな人にとっての視点の方がなんかいいのかなっていう気はしてて。ブロックチェーン技術も、送金じゃないとしたら、リアルにこの企業が薬剤データを共有したから、本当に安く安心して薬剤を買えるようになったよねだとか。
本当に何かが安くなった、何かのオペレーションがめちゃくちゃ早くなったとか。なんかわかりやすいユースケースがあれば、企業もどんどん入ってくるし、ユーザーもどんどん慣れ親しんでいくんじゃないかな。
どうしても難しいのは一般の人にとってのブロックチェーンと仮想通貨がすごい密に結合しちゃっていることな気はしていて。どうしても仮想通貨が投機的な文脈に見なされがちなので、なんかブロックチェーンもそうなんでしょみたいな感じに、まだそういうのはあるのかなという気はしている。
こういうのって難しいですよね。AIとかも一般人からすると、なんか最強の魔法みたいな。なんかAIに全部仕事奪われるからどうするんだとか、AIに支配されるみたいな。普通にエンジニア視点で言うと、別に魔法とかではなんでもなく。
特定のドメインの問題に強いソフトウェアみたいに別に見てもいいのかなとは思っています。そういう、どうしてもやっぱり一般の理解とのギャップはあるとは思うんですけど。結局、繋げてくれるユースケースなんじゃないかなとは思ってますね。
(おわり)
編集:竹田匡弘(あたらしい経済)
→前回の記事はこちら「パブリックチェーンとコンソーシアムチェーンの違い」LayerX CTO 榎本悠介氏インタビュー(2)」