【解説】Mantle(マントル)とは? 今、急成長するブロックチェーン・エコシステムを探る

特集 Mantle Topics

設楽悠介

Mantle(マントル)とは?

Mantleは、レイヤー2ブロックチェーン「Mantle Network」を基盤にした、DAOによるガバナンスやトレジャリーを含めたWeb3エコシステムだ。この記事では、今急成長しているMantleについて解説していく。

Mantle Networkとは?

Mantleのエコシステムにおけるコアなプロダクトが、Mantle Networkだ。Mantle Networkは、いわゆるイーサリアムのレイヤー2に分類されるブロックチェーンだ。

ロールアップという、一定のトランザクション(取引)を1つにまとめてレイヤー1ブロックチェーン(マントの場合はイーサリアム)に記録する仕組みがある。Mantleはその主要なロールアップ技術の一つ、オプティミスティックロールアップ(Optimistic Rollup)でを採用している。

※もう一つの主要なロールアップ技術として、ゼロ知識証明を活用したZK Rollupがあるが、Mantleはそれについてもリサーチを続けている。後述するモジュール型のため、将来このロールアップ技術を変更することなども可能だ。

Mantleはこのロールアップ技術で、イーサリアムよりも速いトランザクション処理と低コストな手数料を実現している。

なおロールアップを活用したイーサリアムのレイヤー2サービスは、現在は複数存在する。その中でMantleが特徴なのが、モジュール型であるという点だ。

モジュール型ブロックチェーンとは、従来のブロックチェーンにあるトランザクションの実行やデータ可用性などの各機能を、別々のレイヤーに分けて、特化したタスク処理をできる仕組みのチェーンを指す。役割ごとにパーツを分けて組み立てるような構造をイメージすると分かりやすいだろう。

Mantleはこのモジュール型を採用し、ブロックチェーンの機能として重要なトランザクションの実行、データ可用性、トランザクションのファイナリティーを異なるパーツに分けている。例えばデータ可用性レイヤーには、現在イーサリアムのリステーキングプロトコルとして話題のアイゲンレイヤー(EigenLayer)のEigenDAモジュールを採用している。

このようにレイヤーを分けリソースを分割することで、ネットワーク効率やパフォーマンスを向上させている。

現在多くのレイヤー2ブロックチェーンは、それぞれのパーツが分離していないモノリシックなアーキテクチャだ。そのため、高度なスケールを実現することは簡単ではないと言われている。

一方Mantleネットワークは、ロールアップによるレイヤー2に、モジュール型の仕組みを組み合わせ、ハイパースケールのパフォーマンスと、高いセキュリティを実現している。

Mantleネットワークは、イーサリアムのスケーリングへの新しいアプローチと言えるだろう。

Mantleは誰がどう運営している? DAOとトレジャリー

ここまでMantleのコアプロダクトであるMantle Networkについて解説してきた。ではMantleのエコシステムは誰がどう運営しているのだろうか?

Mantleのエコシステムをガバナンスしているのは、Mantleが発行するガバナンストークン「MNT」の保有者らによるDAO(自律分散型組織)だ。

エコシステムにおける新しい取り組みの立ち上げから、トレージャリーのリソースの譲渡・回収、オペレーションチームに対する権限の付与・変更、是正措置の実施に至るまで、すべての決定は「MNT」保有者による提案と投票に基づいて行われる仕組みだ。

そしてその活動の原資となるのがMantleの管理するトレジャリーだ。記事執筆時点でMantleエコシステムの全体のトレジャリーに36億ドル超の暗号資産がプールされている。

またMantleはそのエコシステムの拡大のため、助成金プログラムも実施している。「Mantle Scouts Program」という高品質のプロジェクトに 100万ドル相当の「MNT」を支給するものや、パブリックグランツとしてMantleでの取り組みを開始するために最大2万ドル相当の「MNT」を支給するプログラムなどがある。

また助成金プログラムに加え、「Mantle EcoFund」という、Mantleでアプリケーションなどを開発するプロジェクトに投資を行う2億ドル規模のファンドも運用している。

その他、エコシステム拡大のため大学の研究グループなど教育機関に資金とリソースを提供する「EduDAO」や、Web3領域におけるゲーム領域の発展を目指した「GAME7」なども支援している。

Mantleの歴史

これまでの歴史とバックボーンについても振り返ってみたい。Mantleは、大手暗号資産取引所バイビットによってインキュベートされたトークンによるDAO「BitDAO」からはじまった。その後「BitDAO」における投票により、ガバナンスは現在のMantle DAOにリブランディングされた、当時のガバナンストークンであった「BIT」は「MNT」に交換された経緯がある。

そしてMantleとして現在のイーサリアムレイヤー2が開発され、昨年7月にメインネットローンチした。L2としてはやや後発のチェーンではあったが、ローンチ以来DeFi領域の時流にあったナラティブに対応し、Mantleはレイヤー2領域でTVlがベスト10に入る規模まで拡大している。

これまでMantleの機能的な部分を紹介してきたが、潤沢な資金のある大手取引所がサポートしている点もエコシステムの優位性だろう。

Mantleのコミュニティを盛り上げる仕組み(LSP/特典)

またMantleは、Mantle Liquidity Staking Protocol(以降 Mantle LSP)というエコシステムにおける第二の主力プロダクトも昨年12月にローンチした。

このリキッドステーキング(Liquidity Staking)とは、トークンをステーキングする(預け入れる)ことで、取引や運用が可能な「預かり証のようなトークン」を受け取れるサービス。これによりステーキングの報酬を受け取りつつ、受け取ったトークンで資産運用を続けられる仕組みになっている。

Mantle LSPでは、利用者がイーサ(ETH)をステークすることでリキッドステーキングトークン「mETH」を受け取れ、ネイティブAPYに加え、さまざまなDeFi戦略で運用することもできる。

このプロダクトは、Mantleエコシステムでの開発者だけでなく、エコシステムに参加する、多くの個人を含めた投資家らを盛り上げる取り組みと捉えられる。

さらにMantle LSPに加え、MNTトークンをロックして限定のトークンリワードを得られる「Mantle Rewards Station」や、クエストを達成することで特典が得られる「Mantle Missions」などのサービスも展開している。

どんなアプリがエコシステムにある?

ここまでMantleのアーキテクチャとDAO、そしてコミュニティを盛り上げる仕組みなどについて解説してきた。それではMantleエコシステムにおいてどのようなアプリケーションがあるのだろうか?

こちらは最新のエコシステムマップだ。ブロックチェーンインフラやツール、DeFi(分散型金融)、ソーシャルとコミュニティ、クロスチェーン、NFTやゲームなど、多岐にわたるアプリケーションが存在している(dApps一覧)。

なおMantle Network上のアプリケーションに預けられたトークンの総額(TVL)は記事執筆時には360,000,000ドルを超えている。

引用:DefiLlama

TVLの上位には、トークンの元本と利回り部分を切り離して取引できる「Pendle」、流動性フック型マネーマーケット「INIT Capital」、分散型取引所の「Merchant Moe」や「Agni Finance」、リステーキングの「Karak」やRWA(現実資産)領域で注目の「Ondo Finance」などがランクインしている。

ゲームプラットフォームとしてのMantle

Mantleには前述の通り様々なアプリケーションが構築されているが、ゲーム領域についても言及しておきたい。昨今、GameFi領域は停滞しているという意見などもあるが、その停滞の障壁となっている課題をMantleでは解決可能だ。

まずゲームにとって大切なのはユーザー体験だ。これまでのご紹介してきたMantleのロールアップでモジュラー型である点が、ゲームのプラットフォームとしての優位性を築いている。

簡単にいうとMantleの処理が早くて手数料も安いことが、ゲームにおける高いユーザー体験をサポートする。そしてモジュラー型である点で、開発者視点のユーザー体験も向上させる。ゲームの状況に合わせて採用するブロックチェーンの機能などを変更できるからだ。

なお手数料の点ではMantleはメインネットのアップデートで、今年の初めにメタトランザクションを導入した。これはゲームユーザーではなく、開発元が手数料を負担できる仕組みだ。これによりMantle上のゲーム開発者は、参入障壁を減らした更なるユーザー体験を提供できるようになった。

そしてこれらの機能に加え、Mantleにはゲーム領域に経験が豊富なチームがある。Mantleのチームはこれまで、HyperPlayMetaCeneCatizenなど、Web3ゲーム業界において影響力のあるゲームに携わってきた。

例えば「Catizen」はTelegram上の猫をテーマにした没入型ゲーム。ユーザーは猫の繁殖、釣り、コインの収集などのアクティビティに参加して、リワードが得られる。「Catizen」はローンチ以来Mantle上でトランザクションとユーザー数で最も高いパフォーマンスを記録している。現在、ネットワーク上で48万7000人のアクティブユーザーがいる。

さらに、Apple Arcade、League of Legends、Ragnarok、TapTapなど、Web2ゲーム業界の大手企業での経験もいる。この専門チームが、Mantle上でゲームを開発するパブリッシャーらをサポートする。

そして前述の通り、Mantleではクラウドソーシングを通じてWeb3ゲームの導入を加速させるために設計されたコミュニティ形成アプリケーションである「GAME7」を支援している。

※「あたらしい経済」では、MantleのHead of gamingであるGeezee氏のポッドキャスト・インタビューも公開している。ぜひ合わせてチェックいただきたい。
→「Web3ゲーム業界が今、再考すべきこと」大手ゲーム企業を経て Mantle のゲーム責任者になった Geezee に訊く

「FBTC」というDeFiを加速させる動き

また今年4月、Mantleはオムニチェーンビットコイン資産「FBTC」を発表した。Mantleと機関投資家向けの信頼性の高いデジタル資産技術プラットフォーム「Antalpha Prime」がコアコントリビューターとしてサポートする新たなビットコイン系の資産だ。

「FBTC」はビットコインと1:1のペッグ(1FBTC=1BTC)した、さまざまなチェーンに対応して、クロスチェーン相互運用が可能となる。流動性が高く、様々な利回り向上戦略において容易に組成可能なビットコイン資産を提供することで、単純な保管価値以上の有用性を高めることを目的としたプロジェクトだ。

今年予定されているローンチフェイズでは、イーサリアム(L2のMantle、Arbitrum、Optimism OP Mainnet、Base、Lineaなどを含む)、Solana、Aptos、Sui、Merlin Chain、BNB Smart Chain、Polygon POSなどのブロックチェーンに展開される予定だ。

ビットコインにどのように新たな利回りをもたらすか、ビットコインL2やDeFiも現在の業界の大きなナラティブの一つであり、Mantleのエコシステムを超えた新たなこの取り組みにも注目である。

おわりに

今回の記事ではMantleのエコシステムを紹介してきた。ぜひ興味を持ったユーザーや開発者はこれを機会にMantleエコシステムにダイブしてみて欲しい。Mantleの最新情報については公式サイトはじめとした以下から入手することが可能だ。日本語のXやミディアムもあるのでぜひチェックいただきたい。

Website: https://www.mantle.xyz/ja
Discord : https://discord.com/invite/0xmantle
Twitter: https://x.com/0xmantlejp
Medium : https://medium.com/0xmantle-jp
TG: https://t.me/mantlenetwork/69759
Email: marketing@mantle.xyz

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設楽悠介

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長 幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。