バイナンスジャパン千野代表に、今気になる10の質問(Binance Japan 千野剛司 × あたらしい経済 設楽悠介)

特集 あたらしい経済インタビュー

設楽悠介

あのサービスは日本に? ステーブルコインは? 新CEOは? 千野代表に10の質問

今年8月、Binance Japan(バイナンスジャパン)は日本でのローンチ1周年を迎えた。そして同社は、ユーザーである投資家を集めた初のオフィシャルミートアップを8月末に東京で開催。そのイベントで、本メディア「あたらしい経済」編集長が、参加ユーザーからの厳選された質問と自身が気になる事柄をBinance Japan代表 千野剛司氏に投げかけるトークセッションが開催された。本記事では、イベントレポートとしてそのトークセッションの内容をお届けする。

01 改めてBinanceの魅力は?

–Binance Japanの魅力を教えてください。

ユーザーが暗号資産取引所を選ぶのには手数料や好きなタレントのCMを見てなど、色々なポイントがあると思っています。ただ金融的な観点で考えると、取引所にとって一番大切なのは流動性です。買いたい/売りたい時に、より良い値段で取引ができること。私は流動性が高い取引所が、一番良い取引所だと思っています。

Binance Japan代表 千野剛司氏

その観点で、Binanceは世界最大の流動性を持っています。そして日本のユーザーの皆さまもその流動性にアクセスできる、世界の取引にご参加いただけることが最大の魅力だと考えています。

02 あのサービスは日本に来る?

–グローバルにしかないサービスを国内でどう展開するか知りたいです。例えばBinance Japanでは「Launchpad」、「Launchpool」を実装しないのでしょうか?

日本は世界的に見ても規制が非常に厳しいです。新しい事をやるには、まず金融庁さんに相談して、了解をいただく必要があるんです。私たちが既にグローバルで提供している面白いサービスを展開するにも、当然それが必要になります。だからどんどんと新しいサービスをローンチすることは簡単でないのが現状です。

ただし私自身、そのような新しいサービスを日本で展開することに関しては、他社さんよりもスピードが速い自信があります。私がこれまで省庁との交渉をしてきたキャリアもありますし、周りに集まってくれているチームメンバーもすごく優秀で、スピード感を持って仕事をする人たちが多い。だからスピードには、期待して欲しいです。

そして「できない」と言われたものに、私たちはチャレンジするのが好きなんです。これはBinanceの社風だと思います。例えば、現在日本では法律上は無理だと考えられていることも、その条文にどのような解釈を与えるかによっては突破できることもある。私たちはそこにチャレンジしています。決して諦めずさまざまなグローバルのサービスを日本にも展開したいと思っています。この一年も結構いろいろなことができたと思っていますので、これからにも期待いただきたいです。

–「Launchpad」は私も過去にBinanceさんで使っていたので、すごい期待をしています。

あたらしい経済 編集長 設楽悠介

ユーザーさんにエアドロップなどメリットのあるサービスを日本で今提供できていないのが本当に申し訳ないと思っています。果実をユーザーの方に還元するという観点で、必ず実現したいと思っていますので、ご期待いただければと思います。

Binance Japan 1年の歩み(当日プレゼンテーション資料より)

03 上場銘柄の選定基準は? 

–今後の取扱銘柄、特に日本発のものも含めて、その選び方や基準を教えてください。

現在多くの日本関連プロジェクトの方々とお話ししています。その中で一つの大きな選定要素としてお伝えしているのが、コミュニティについてです。ブロックチェーン・プロジェクトは一般の事業よりも、さらにコミュニティが重要。それがどのぐらいの規模で盛り上がっているか、これから盛り上がるか。そこを評価させていただくということになると思います。

そして日本のプロジェクトの方々からは、Binanceグローバルにも上場したいというご相談もよくいただきます。Binanceグローバルへの上場は、株式でいうメジャーな公開市場に上場するような意味合いで、皆様が目指す一つの大きな目標にしていただけています。

私たちBinance Japanのメンバーも、日本でビジネスをやっているのだから、日本の方が多く関与されているプロジェクトをそこまで持っていきたい、そういうご支援をしたいと考えています。面白いプロジェクトがあれば、ぜひご連絡いただきたいです。

04 ステーブルコインは?

–今後の国内でのステーブルコインの展望について教えてください。

ブロックチェーンのビジネスをするなら、法定通貨よりもやはりオンチェーンのアセットであるステーブルコインが使いやすい。Binanceグローバルはステーブルコイン建ての取引がほとんどです。日本でも法律が変わってやっとステーブルコインを取り扱えるようになりましたので、私たちも規制にそって取り扱っていきたいと思っています。

ただ日本だけで使えるものと考えると、上手くいかないのではないかと考えています。

日本円で日本人だけが使うようなものを発行するプロジェクトが、今いろいろ名乗りをあげていますが、おそらくサイズ的に儲からない。儲からなければインフラを維持できず、長続きしない。そういった悪循環になってしまうのではないかと懸念しています。

私たちが目指しているのは、あくまでグローバル。世界で流通できるものにしか興味がありません。ですから私たちが提供するものは、そういったものになるとお考えいただければと思います。

05 国内で取引量をもっと増やすには?

–国内暗号資産市場において取引量を増やすには、何が必要だと思いますか?

現状の暗号資産に関わる税率が高いことは課題で、その法改正があれば取引ボリュームは増えると思います。しかしそれは私たちだけでどうにかできる問題ではないので、それ以外に何が必要か。

それを考えると、もっと多種多様な方々にこの業界に入ってきていただくということが一番重要ではないでしょうか。そのためにはもっと教育が必要だと思います。私たちもBinanceアカデミーという充実した教育コンテンツを公開していますが、そういった教育コンテンツがもっと増えていかなければならない。多くの人々が学び、クリプトの裾野を広げる必要があります。

日本でも全暗号資産取引所の登録口座数が1000万件を超えましたが、やはり証券業界と比べるとまだまだ小さいです。だから暗号資産をもうちょっと一般的なサービス、商品にしていく必要があるかなと思います。

06 グローバルのCEO交代で何が変わった?

–グローバルではいろいろあってCEOも交代したBinanceさんですが、現在の新社長、新体制になってどのような変化がありましたか? また日本戦略にも影響はあったのでしょうか?

2年前、当時のCEOから直接オファーをもらって、私はBinanceに入りました。当時のCEOは「日本はこれからもっとすごくなる」と日本参入の際にポテンシャルを語ってくれました。さらに日本には、Web3に親和性のあるコンテンツビジネスをはじめとした産業もあることも、彼は話していました。

そして現在、この雰囲気はより強くなっていると思います。日本政府も一つの経済政策としてプッシュしているわけです。Web3を官民挙げてサポートしようと動いている国は、今、世界でおそらく日本ぐらいじゃないでしょうか。それに伴って、先日ソニーさんがブロックチェーンを立ち上げるという話もありましたが、いろいろな大企業がこの業界に参入していることも世界的に強みです。

だから私たちも日本のマーケットについて引き続き楽観的に見ていて、いろいろ面白いことも起こると考えています。

そしてCEOの交代があって、もちろん社内は変わりましたが、その戦略とか方向性は変わってないんです。現CEOリチャード・テン(Richard Teng)は、元々シンガポールの規制当局の出身者です。規制当局に非常に顔も売れており、いろいろな信頼関係もある人で、今のBinanceの舵取りには適切な人物。そして何を隠そう、彼は以前、私の直属の上司でした。

CEOになるまでは週一でミーティングしていた上司です。まあそのような点からも、日本戦略に変わりはなく、より強化していくことを期待していただければと思っています。

07 法人向けサービスは?

–企業の参入というお話もありました。最近だと日本でもビットコインを企業のポートフォリオに加える企業さんも増えてきましたが、取引所としての法人向けの対応について教えてください。

法人向けサービスは、企業様固有のお悩みや投資戦略を理解してご提案するという、対人で色々サポートさせていただく必要があります。例えば大口だと売るにも買うにも、市場価格に影響が少ないような工夫も必要です。Binance Japanも来年に向けてそういったリソースや体制を拡充していますので、今後どんどん法人向けサービスも強化していきたいです。

08 Binance Japanで人気銘柄は?

–Binance Japanでどんなトークンが人気ですか? 他の取引所に比べて特徴はありますか?

いつもよく聞かれて困るご質問ですね(笑)。私たちのビジネスの特性上、特定の推しを作っちゃダメなんです。上場しているトークンは平等に好きです、みたいなアイドルさん的な回答しかできないんです。

だから実際の取引量の人気などは公開できないですが、私たちは取引サービス以外にも「Simple Earn」というステーキングサービスで、その追加銘柄リクエストのユーザー投票をよく実施しています。以前はETHがユーザーの要望が多かったので、グローバルのやり方だと規制上難しかったなか、日本だけの仕組みを作って加えました。ASTRも人気があって加えた銘柄です。今後もユーザー要望に応えてやっていきたいと思いますし、そういった投票などを参考にしていただければと思います。

09 ライバルはどこ?

–千野さんにとってライバルはどこですか? 

私たちはBinanceとしてグローバルで競争していると思っていまして、日本のマーケットにきちんとグローバルのサービスをお届けできれば、結果は自ずとついてくると考えています。

ただ短期的にいうと、日本円建ての取引に関しては後塵を拝しているのも事実なので、日本の大先輩である各社さんと、早く肩を並べるようにしていきたいと思っています。

10 今後マーケットはどうなる?

–最後に、千野さんは今のマーケットをどのように見ていますか? 今ブル相場なんでしょうか、ベア相場なんでしょうか。その辺りの方向感が見えないように思っていまして。

今いろいろなことが世界で起こっていますよね。地政学の話や、米大統領選の話など、暗号資産だけに限らず金融市場全体が、短期的には方向感を見定めるのが難しい相場だと個人的に思っています。

一方技術的な話や、あるいは市場にいろんな方が参入してくるという、その動き自体は変わっていないと思います。機関投資家と呼ばれる大口の方、金融機関の方々がアメリカを中心にこの暗号資産のマーケットに今入ってきているので、こういったマクロ的なトレンドを追いかけるというのは重要だと思っています。個人的にはこれからの市場についてはポジティブに捉えていますよ。

大盛況だった、初のオフィシャルミートアップ

なお当日のオフィシャルミートアップでは、上記のトークセッションに加え、千野代表からのこれまでの取り組みや今後を紹介するプレゼンテーションや、ユーザー参加のクイズ大会、Binanceグッズのプレゼント抽選会、ネットワーキングパーティなどが実施された。

イベント情報は一般に公開されず、ユーザーにのみメールで告知されたにも関わらず、即座に満員となり、当日は多数の参加者が交流を楽しんだ。

今後も同社はこのようなユーザーミートアップを開催していくとのことで、是非とも情報をキャッチしたい方はBinance Japanに登録しておくのがおすすめだ。

Binanceについて

Binanceは、ブロックチェーン・エコシステムと暗号資産インフラの世界的なリーディングカンパニー* であり、暗号資産等の取引高で世界最大規模の取引所を運営するほか、多種多様な金融商品を提供しています。Binanceは、利用者の経済的な自由を高めることをミッションに掲げ、既に世界中で多くの利用者からの信頼を得ています。Binanceの提供する先進的なサービスは、トレーディングとファイナンス、教育とリサーチ、投資とインキュベーション等多岐にわたります。

日本向けサービスはBinanceの日本法人であるBinance Japan株式会社(暗号資産交換業者 関東財務局長 第00031号)が運営しています。

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* Binanceは世界で2億3千万人超の利用者を有し、日次取引高が約380億米ドルを超える世界最大規模の暗号資産取引所を運営しています。

取材/編集:設楽悠介(あたらしい経済)
写真:Binance Japan 提供

<本記事について>
本記事は一般的な情報の提供のみを目的としたものであり、いかなる暗号資産、有価証券等の取得を勧誘するものではありません。また、株式会社幻冬舎及びBinance Japan株式会社による投資助言を目的としたものではありません。また株式会社幻冬舎及びBinance Japan株式会社が暗号資産の価値を保証するものでもありません。暗号資産投資にはリスクが伴います。投資やステーキングを行う際はリスクを了承の上、利用者ご自身の判断で行ってください。

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暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。
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・当社はお客さまの資産を当社の資産とは分別して管理しておりますが、当社が倒産した場合には、預託された金銭及び暗号資産を返還することができない可能性があります。
・暗号資産の価格は購入価格と売却価格に差があります。  

Binance Japan株式会社
暗号資産交換業者 関東財務局長 第00031号
一般社団法人 日本暗号資産取引業協会会員

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設楽悠介

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長 幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。

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