次の暗号資産バブルで、どんなブロックチェーンゲームやWeb3サービスがマスアダプションする?(ドリコム 内藤裕紀 × ナナメウエ Yay! 石濵嵩博)

特集 あたらしい経済インタビュー

設楽悠介

次のバブルでWeb3はマスアダプションするか?

ナナメウエ 石濵嵩博氏(左)、ドリコム 内藤裕紀氏(右)

先月米国で現物ビットコインETFが承認され、半減期も迫り、2月には対日本円でビットコイン価格が史上最高値を更新した。ここ2、3年の市場の冬の時期を経て、再びブル相場が来ることが期待されている。

そんな2024年、市場を牽引するWeb3キラーアプリは生まれるのか? そのために必要なことは何か?

「あたらしい経済」は今年正式リリースを控えるブロックチェーンゲーム「Eternal Crypt – Wizardry BC -」プロジェクトに共同開発として携わる株式会社ドリコムの代表取締役社長 内藤裕紀氏と、同じく今年「Yay!」のWeb3機能公開を控える株式会社ナナメウエの代表取締役 石濵嵩博を取材。次のバブルまでにブロックチェーンゲームやWeb3サービスがマスアダプションするために必要なことなどを訊いた。

 

ブル相場とブロックチェーンゲームやWeb3サービス

–年明けに米国で現物ビットコインETFが承認され、これから半減期も控え、今年暗号資産(仮想通貨)市場が再び盛り上がることが予想されます。そのような状況の中で、ブロックチェーンゲームやWeb3サービスにとってどんな1年になりそうですか?

内藤:これまで僕も何度か半減期とブル相場を見てきましたけど、今回また歴史が繰り返すとして、それがどうなるかはすごく気になっています。半減期の後のバブルを何度か経験している人も増え、回を重ねるごとにその規模も大きくなってきている。今年はみんな結構準備していると思うので、前回のバブルの時とは違う状況になるんじゃないでしょうか。

特に日本でもソニーさんやNTTドコモさんをはじめとした大手企業が準備しているので、いわゆるクリプト好きの人たちじゃない層に、トレンドがどこまで広がっていくかが重要だと思っています。

やはりトレーディング、暗号資産の売買だけが流行ると、そこまで広がらないと思います。もっと入りやすいアプリケーションが必要。前回のバブルの時はNFTがその役割になったと思うのですが、それも一部の人のものだったと感じています。だから今回ゲームという領域が、もう1段階多くの人にリーチするアプリケーションになればいいと考えています。

石濱:僕もそう思います。最近の取引所のリスティング傾向を見ても、クリプトにユーザーを増やせるような銘柄が増えているように感じます。ゲームでいうとAAAゲームと言われる「フュージョニスト(Fusionist)」や「ビッグタイム(Big Time)」など。その辺りからも多くの人たちがゲームを軸にマスアダプションを仕掛けようとしていると感じますね。

とはいえ、そういったゲームもPCでしかプレイができないなど、まだまだ一般層が入ってきやすい状況ではないですよね。クリプトに詳しい人たちだけにリーチしても限界がある、というのがこれまでの歴史の学びだと思っています。新たにどれくらい人が集まって一般に普及していくか。インフラの部分は大分整ってきていますので、一般の人たちにどれくらいクリプトを届けることができるかが、次のブル相場のテーマですね。

そしてブル相場が来れば、いずれベア相場も来る。その間、今いる人たちだけでトレードで盛り上がっても、どこかババ抜き状態になってしまう。ゲームに関わらず、Web3領域全般において、次のベアまでどうやって人口を増やすか、人々の日常にクリプトを溶け込ませられるかが重要ですよね。

内藤:この市場に夏が来て、その後本当に再び冬が来るのか、という部分を僕は気にしています。暗号資産市場の冬が来ても、いくつかのプロジェクトがそのまま拡大し続けるみたいなことができれば、初めての離陸だと思っています。極端に言えば、多くのプロジェクトがビットコインからデペグできるかどうか。

デぺクできればビットコインが下がろうが上がろうが、プロジェクトはそのまま進行する未来が来るはずなんですよね。これからブル相場が来るとして、そのフェイズに行くかどうかが、一番のポイントだと思っています。

日本からヒットゲームやアプリは出るか?

–昨年日本でWeb3が盛り上がっているというモメンタムは作ることができて、さらに日本のゲームやIPは強いとも言われています。でも本当に日本からマスアダプションのきっかけとなるゲームやアプリが出るのでしょうか?

内藤:正直今は、何が成功かという解をみんなが探しながらプロジェクトをたくさん出している状況だと思います。大手もスタートアップも、チャレンジの数はどんどん増えてきています。

石濱:これまで成功と言われたブロックチェーンゲームも、DAUは1000人ほどです。もちろんNFTやFTの取引高はボリュームがあるかもしれませんが、正直ゲームのユーザー数だけ見るとまだまだ規模が小さい。「モンスターストライク(モンスト」とか「パズル&ドラゴンズ (パズドラ)」みたいな規模で多くのユーザーが毎日遊んでいるようなゲームはまだ無いです。だからこそドリコムさんにはそこに風穴を開けて欲しいですね。

内藤:はい、「Eternal Crypt – Wizardry BC -」も先行リリースですでに多くの方に遊んでいただいていますから。僕らは当然それ以上を目指してますんで、頑張ります。

どんなジャンルのゲームが起爆剤になるか?

–AAAゲームか、カジュアルゲームか、X to Earn 系か、Web3のマスアダプションを牽引するゲームは、どのジャンルだと予想しますか?

内藤:仮に次にブームになる、ブル相場の時に流行るゲームが金融的な、トークンのエコシステムを重視したものだとしたら、マスアダプションは難しいのではと思っています。

結局クリプトの人たちが遊ぶゲームとしての範囲を超えずに終わってしまうと、次のバルブでも離陸できない気がしています。これまで儲かるという文脈で一時的に流行ったようなゲームが入れ替わっていくだけなら、また4年待たなければいけないか、と感じますね。僕らもブロックチェーンゲームへの投資に関して、懐疑的になる可能性もあるかもれないです。

石濱:僕もそう思います。金融的な要素の強いゲームが一般層まで広がるには、まだ障壁がある。無料で始められ、実は後からこれってブロックチェーンゲームだったんだ、ちょっと稼げているかも、というようなモデルでないと多くの人は入って来られないと思います。

メインのユーザーベースは一般の人たちであることが重要、その上でいかに金融要素を求める人も巻き込むことができるか。金融要素にはやはり力があります。今流行のエアドロップを見ても分かりますよね。人を動かす力がある。Jito(JTO)のエアドロップなんて200万円ぐらいだったわけで、あれで人生が変わった人もいるかもしれない。

重要なのは一般ユーザーをベースにしつつ、いかに金融要素を融合することができるか。 エアドロップしろというわけではなく、金融とゲームやSNSが混ざり合うことで起こる大きなインパクトを、どれだけユーザーの一般的な体験に落とし込めるかが重要。それが上手く混ざらないとダメだと思います。

ブロックチェーンゲームの壁

–金融要素からかもしれませんが、今多くのブロックチェーンゲームは、遊ぶのが大変だと感じています。情報収集や学習のコストが高いです。これが大きな壁になっていると思いますが、いかがですか?

石濱:分かります。僕もこれまで多くのブロックチェーンゲームをプレイしてきましたが、AMA見逃したら、いつの間にかパラメーターが変わっていて、これまでの戦略が使えなくなるということを何度も経験しています。

情報をなるべく早く取得して、自分が持っているキャラが弱くなると売らなければならないし、逆に安いキャラがこれから強くなるんだったら買ったほうがいい、などと意識しなければいけない。それ自体もゲーム体験だと言われれば、そうかもしれませんが。ただ情報を追うことに疲れるというのは、大きな課題だと思いますね。

内藤:そうですね。ゲームで勝つためにいろんな情報を集めなきゃいけないという課題に加え、そもそも始められないという難しさもあると思います。

例えばモバイルゲームがブームになる前から、ブラウザで遊べるゲームはすでに世の中にあったんですよね、流行ってなかったですが。そこにGREEさんやMIXIさんやMobageさんが、SNSというみんなが使えるものの上にブラウザゲームを載せた。その瞬間から爆発的にユーザーが増えたわけです。

そう考えると、ブロックチェーンゲームをもっとシームレスに始められるようにする必要がある。例えば暗号資産取引所やウォレットの上に乗ってくるのが、一番分かりやすい気がしています。何かベースがあるところから、シームレスに、NFT、FTの売買ができるようにならないと、常にブロックチェーンゲームのハードルは高いままかと思います。

石濱:今の多くのブロックチェーンゲームは、例えると説明書が分厚い、かつ説明書をしっかり読んで学ばないと遊びはじめることもできないという状況ですね。

内藤:そうなんですよ、従来のゲームはアプリをダウンロードしたら、すぐ遊べるのに。その壁を無くさないといけないですね、これはこの1、2年の一番のテーマになると思います。

Web2からWeb3へのユーザー移行

–「Yay!」は、これまでのユーザーにゲーム要素やトークン要素を提供する流れになると思います。ユーザーへのその辺りの説明で意識していることはありますか?

石濱:今のゲームの話と同様で、どれだけユーザーに意識させないか、学習コストを割いてもらわず使えるかが重要だと思っています。今とどれだけ変わらない体験にできるかが、全てですね。

「Yay!」では、Palというペットを育ててバトルさせる機能が加わります。そしてPalを育てるために「Yay!」をどんどん使うと、暗号資産が稼げるというモデルです。「Yay!」にペットゲームが加わった感じで、今までの延長線上で楽しんでもらいつつ、稼げるという体験をどう作るか。その点をものすごく意識して今作っています。

あたり前ですが、クリプトを知らないこれまでの「Yay!」のユーザーが、このタイミングでホワイトペーパーを読まないといけない設計にはしていないです。トークノミクスとかも意識しないで、遊べるように考えています。

内藤:そうですね。ホワイトペーパーを読まなきゃいけないというカルチャー、辞めたほうがいいですよね。今ゲームでも家電でも、分厚い説明書なんて入ってないですし。そんな世の中でホワイトペーパーを読まないと楽しめないのは時代からズレている。

石濱:そうです。だから「Yay!」でも初めは今の楽しみ方の延長線上で、気軽に体験してもらえるように設計し、先々楽しんでいたら溜まっていたトークンをお金に変えたいって時などに少し勉強が必要になる、という設計を考えています。

–先程モバイルゲームを例に内藤さんがお話ししていたように、「Yay!」で気軽に楽しみつつ、その入り口からウォレットとかトークンを理解したユーザーを増やすことができれば、「Yay!」が他のゲームやアプリのオンボーディング・プラットフォームになりえるかもしれませんね。

石濱:そうですね。「Yay!」はコミュニティを作れるSNSなので、ゲーム領域に親和性が高いです。まずは「Yay!」でWeb3体験をしたユーザーを、シームレスに他のゲームやアプリに使ってもらうようなことができるといいと思ってます。

内藤:まだまだブロックチェーンゲームのプラットフォームって、確立されていないと思うんですよね。それがないとやはり多くのユーザーは単独で存在しているゲームにたどり着かない。

石濱:「Yay!」がそれを解決できるように頑張りたいです。

ドリコム、ナナメウエ、今後の展開

–最後にドリコムさん、ナナメウエさんの、今後の展開を教えてください。

内藤:「Eternal Crypt – Wizardry BC -」については、昨年から先行リリースをしており、2月19日から先行リリース第2フェーズを開始、第3フェーズも2月26日18時からスタートしました。そして今年の3月末までをターゲットに、正式リリースに向けて鋭意開発中です。また細かいことは言えないですが、ゲーム開発と並行して、本ゲームでは独自トークンの発行を予定しており、ここは提携する他社が行なっています。

僕らはプラットフォームではなく、あくまでコンテンツプロバイダという立場を主軸に据え、今後オープンしていくだろう、多くのプラットフォームに向けてコンテンツを提供していきたいと考えています。

石濱:僕たちの「Yay!」は先日クローズドベータテストを終え、今後NFTのミントイベントをやっていく予定です。そして日本ももちろんですが、海外も含めマーケティングやトークンの戦略を進めていくことが重要だと思っていますので、それらを鋭意進めております。是非ともメインネットローンチを楽しみにしていただければ嬉しいです。

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ドリコム

ナナメウエ

取材日:2024年1月12日
取材/編集:設楽悠介(あたらしい経済)
撮影:堅田ひとみ

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設楽悠介

「あたらしい経済」編集長/幻冬舎コンテンツビジネス局局長 幻冬舎でブロックチェーン/暗号資産専門メディア「あたらしい経済」を創刊。同社コンテンツビジネス局で電子書籍事業や新規事業を担当。幻冬舎コミックスの取締役兼務。「Fukuoka Blockchain Alliance」ボードメンバー。福岡県飯塚市新産業創出産学官連携協議会委員。ポッドキャスターとして、Amazon Audible original番組「みんなのメンタールーム」や、SpotifyやAppleにてweb3専門番組「EXODUS」や「あたらしい経済ニュース、ビジネス系番組「二番経営」等を配信中。著書『畳み人という選択』(プレジデント社)。

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