佐藤航陽の思い描く未来の世界/佐藤航陽

特集 佐藤航陽「地球2.0」

佐藤航陽

2020年までの未来予想

-今年から2020年まで一年区切りで、ブロックチェーンのどのような展開を予想していますか?

まず年末まででいうと、前回も話しましたがDAppsで一つ成功事例が出来て、それを成功事例に世界中の人がコピーし始めると思います。ある種のネイティブアプリでいうパズドラみたいな感じで、メガヒットが一つ出るでしょうね。

2019年にはその応用系でブロックチェーンを使ったいろんなアプリケーションが出てきて、2020年には行政や大手企業がシステムの実装をはじめだすというフェーズになると予想しています。

あと一方で、ブロックチェーンの非中央集権的なものが合わない分野や産業なども証明されると思います。例えば今あるスマホのネイティブアプリが普及していく過程においても、いろんな産業でアプリ化が進められましたが、上手くワークしたのが「ゲーム」と「出会い系」と「金融」なのですよね。それ以外は大して儲かっていないです。

同じことがブロックチェーンの分野でも分かってくると思います。なには向いていて、向いていないか。それが2019年末ぐらいまででしょうか。

そして2020年ではトークンエコノミーやブロックチェーンがどの産業に応用出来るかということをみんなが把握出来てくると思います。

-ブロックチェーンに向いている産業はどんな産業だと思いますか?

情報をそのまま価値に転換が出来る産業ですね。金融やゲームのような産業です。実はあまりスマホのアプリの展開と変わらないのでは、と私は思っています。

50年後も国家は無くならない

-それから先のブロックチェーンの未来に、国家の枠組みはどうなると予想しますか

国家は10年後でも50年後でも無くならないと私は思っています。

レイヤーが増えるような感じになるのではないでしょうか。国家が例えばネット回線みたいなインフラになるイメージですね。それで今のコミュニティや会社がその上にのっかるアプリケーションみたいな感じです。だから国家は消えないです。

なぜなら国家というのは福祉と軍隊を持って治安維持してくれている。これは極めて大きなポイントです。

今回「EXA」作っているときにも、やはり国家はすごいなと再認識しました。地球をもう一つ作ろうと考えたときに、国家という枠組みがあれば、追加で治安維持とか社会福祉とか考えなくていいのだと思いました。なので「EXA」ではその部分は国家に任せて、経済の新陳代謝だけ促す機能を作ろうとしています。正直、仮想地球を作っても、そこで物理的に軍隊を持ったり社会福祉を準備したりするのは無理ですしね。

だから国家が出来なくなったものを埋めていくのが、トークンエコノミーなんではないかと思っています。

現在の人類の社会において、国家や会社という概念で埋められないものが出てきていると感じています。それをコミュニティや非中央集権なものが埋めていくと思います。

例えば現在、幻冬舎の編集者の箕輪厚介さんみたいな人が盛り上がっていて、そして彼自身が起こしているアクションは、今までの会社では捉えきれないニーズややりがいを埋めていくソリューションですよね。でも箕輪さんも、幻冬舎の見城社長によって保証される福祉と軍隊の上で活躍しているわけです(笑)。そして箕輪さんはそれを知っているので、見城国に乗っかりながら活動している。

私たち民間が国家と同じそういったインフラをゼロから作ることは相当難しいですよね。だから国家というのは本当は必要なものであることはみんな意識せずとも分かっているはずです。

-どういうきっかけでブロックチェーンは世界に爆発的に広がると思いますか?

ブロックチェーンが広がるきっかけは、それを導入することのコストが安いというメリットがある場合だと思います。例えば金融のインフラの面で考えると、アメリカや日本が既存のシステムをリプレイスしてブロックチェーンを導入したら、そのコストは相当高くなります。だからあまりそういう国は広がりにくいと思います。

逆にあまり金融インフラが整っていない国であれば、ブロックチェーンを活用してゼロから作った方が安いので、広がっていくと思っています。

あとブロックチェーンや仮想通貨が広がるには、現在は法律や規制があまりにも追いついていないので、それらの折り合いをどうつけていくかが課題ですね。

ただし現在の法律や規制が必ずしも重要なわけではありません。基本的には行政の枠組みなどは遅れて対応してくるものなので。行政が追いつかないということは、それほど大きなパラダイムシフトであるということです。

人類の次の移住先は「仮想空間」

-未来において、人類の次の場所はどこだと予想していますか?

イーロンマスクやジェフベゾスは火星や月に人類を物理的に移住させようとしていますが、私が考える人類の次の場所は「仮想空間」だと思っています。

ロケット打ち上げて、火星を住める場所にするよりも「仮想空間」を作る方がスピードは速いです。良いか悪いか分かりませんが、人の意識がVRで「仮想空間」に飛んで、現実世界に興味を持てなくなるスピードの方が速いのではないかと思っています。

-その「仮想空間」で人が生きるとはいうのは、どんな感じなのでしょうか?

現在の人々がスマホを見ている感覚を、さらに過剰にしたバージョンですね。完全にそちらがメインになるイメージです。そしてその仮想空間の中の独自ルールで経済や回るイメージです。

-VRがそこまで没入出来るような技術になるのでしょうか?

その技術発展には、それほど時間はかからないと思います。VRで感覚を再現出来るようになれば、可能です。脳に刺激を与えて錯覚させれば何でも出来るようになります。脳が錯覚をしていれば、それは、ほぼ「現実」なのです。

実は今の経済も、ある意味私たちの脳の錯覚かもしれませんよね。実は経済って形がないものですよね。人が作り出した虚構・幻想でしかない。でもこの状況で私たちが社会を回せているということは、バーチャルリアリティを現実化している行為だとも言えます。

そういう意味でも、形のない経済とうものが現実世界で動いているように、ブロックチェーンや仮想通貨がもたらす新しい経済も、この現実世界に大きく広がっていったとしても全く違和感は感じないです。

(第3回おわり 第4回につづく)

第1回「お金や経済は作る対象に変わったが、「地球」は作れるか? 仮想地球『EXA』のチャレンジとは

第2回「サトシ・ナカモトは私が生まれて初めて嫉妬した人間」

 

(編集 設楽悠介・竹田匡宏)

この記事の著者・インタビューイ

佐藤航陽

株式会社メタップス代表取締役社長 早稲田大学在学中の2007年に株式会社メタップスを設立し代表取締役に就任。2011年にアプリ収益化プラットフォーム「Metaps」を開始、世界8拠点に事業を拡大。2013年より決済サービス「SPIKE」の立ち上げ。2015年に東証マザーズに上場。現在は時間取引所「タイムバンク」の立ち上げに従事。フォーブス「日本を救う起業家ベスト10」、AERA「日本を突破する100人」、30歳未満のアジアを代表する30人「Under 30 Asia」などに選出。2017年に宇宙開発を目的とした株式会社スペースデータを設立。