佐藤航陽と仮想通貨の出会い
−佐藤さんの仮想通貨との出会いはいつですか?
ビットコインを知ったのは確か2011年ぐらいだったと思います。その仕組みを見て、自分の方向性は間違ってないのだと実感した記憶があります。
当時から、情報の在り方、メディアの在り方、あとコミュニケーションの在り方が変わっていくのを感じていたので、確実に金融や経済もこれから形を変えていくだろうと思っていました。まだフィンテックって言葉がなかった頃の話です。そう考えていた自分の方向性が間違ってなかったと確信しましたね。
あと同時にビットコインの仕組みを見たときに、すごく嫉妬しました。ビットコインの理論は素晴らしく、そして美しいです。またその論文を書いたサトシ・ナカモトは姿を現さないという発表の方法もすごい。まるでパンクロッカーですよね(笑)、あれは俺が作ったって言わないというスタンスは。でもたぶん捕まるから言わないのでしょうけど(笑)。
自分が出ないことがビットコインの最後のピースみたいな感じですよね。だって自分が出てしまうとビットコインの思想である非中央集権性が崩れてしまいますからね。
−佐藤さんが考えるサトシ・ナカモトは、どんな人ですか?
Gifted(天才)的な人だと思います。学者でもあり、エンジニアであり、哲学者でもあり、経済学も理解している、多彩な人です。普通の学者は考え方が凝り固まっている人が多い印象ですが、彼は非常に柔軟で、まず作ってみようというような、アントレプレナー的な価値観も持っていると思います。たぶん起業家の経験もあるかもしれないですね。
サトシ・ナカモトの所有ではないかと言われているビットコインは、まだブロックチェーン上でほとんど動かされていないですよね。おそらく彼は自分の空想を形にすることにエクスタシーを感じて、金儲けとかの俗世間なものにまったく興味がない研究者気質なのではないかと思います。
サトシ・ナカモトは佐藤航陽8.7
−今おっしゃっていたイメージは佐藤さんに近いように思います。
そうですね。ただ私よりもサトシ・ナカモトは、人間のバージョンでいうと、5バージョンくらい上だと思います。サトシ・ナカモト=佐藤航陽8.7みたいな感じかな(笑)。
正直、私は他の経営者とか企業とかを見ても全然嫉妬したりしないのです。でも、ビットコインを見たときは、本当に悔しかったですね。
本来であれば自分がやるべきことだったものを、先に作られてしまったと。しかも自分よりも遥かに素晴らしいアイディアで。それがブロックチェーンとの出会いでしたね。でも最初はすごいムカついていて、あまり触りたくなかったんですよね(笑)。ブロックチェーンを使うと自分の敗北を認めるような感覚でした。
ただ、今個人的に取り組んでいる「EXA」の件などでいろいろ考えていたら、仮想通貨もブロックチェーンはあくまでピースの一部、過程の一つにすぎないと感じてきました。だからそれらをいろいろなものと混ぜ合わせて、「EXA」のようなもう一段階新しいものを作るのが自分の役割だと認識しています。
−ビットコインを知ってから、その後いろいろコインを買われたりしていましたか?
一通り主要なものは持っていましたけど、ICOに参加などはしていませんでした。ICOに関してはホワイトペーパーだけ読んでいました。でも世の中のICOの98%はやる気ないものだと感じています。
ICOプロジェクトの見分け方
−佐藤さんはホワイトペーパーのどこを見て、ICOなどがちゃんとしているか判断されていますか?
ICOのプロジェクトの場合、ホワイトペーパーのどこを見るというより、そのプロジェクトのプロダクトがきちんとあるかどうかというのが重要だと思っています。だからサービスのプロトタイプがある段階でICOするところは本気なのだなと思いますし、逆にそれがないと怪しいと思います。
正直、すごく綺麗なプロジェクトのWEBサイト作って、広告などのプロモーションをする暇があるのなら、早くプロトタイプでも作れよって思いますね。たぶん3ヶ月もあれば試作品をすぐ作れるのに、デザインやプロモーションにばかり注力するのは、本当はプロダクトを作る気がない証拠ではないでしょうか。
プレセールまであと◯日◯時間◯秒とか、WEBサイトにカウントダウン機能を組み込んでないで、早くプロトタイプを作れよって思いますね。
-ちなみに佐藤さんが注目している仮想通貨などありますか?
うーん、これといって無いですね。投機という意味ではどの仮想通貨も本質的には何も変わらないと思っています。ただブロックチェーンを活用してサービスを作る側の視点、アプリケーションを組み込む側の作り手の視点で考えれば、まともな仮想通貨はイーサくらいしかないと今は思っています。
そして私も、まわりのエンジニアもイーサを仮想通貨という面では捉えてないですね。イーサリアムというプラットフォームとして捉えていると思います。エンジニアたちはイーサの価格なんかどうでもよくて、イーサリアム上で何を作ろうかと日々考えていると思います。イーサリアムと、他の仮想通貨は全く別のものに見えています。
私もイーサリアムに関しては、アプリのプラットフォームという点で注目してはいます。
−イーサリアムがプラットフォームとして様々なサービスに使われていくのはいつぐらいだと思いますか?
まずはこの1年ぐらいの間にキラーアプリケーションが一つ出て、それが凄まじく儲かると思います。そしてそれが上手くいっているという事例によって、一気にプレイヤーが増えるでしょう。
その最初のキラーアプリケーションのジャンルとしてはおそらくゲームか、もしくは金融のジャンルではないかと思っています。
(第3回につづく)
←第1回「お金や経済は作る対象に変わったが、「地球」は作れるか? 仮想地球『EXA』のチャレンジとは」はこちら
(編集 設楽悠介・竹田匡宏)