どのようにサプライチェーンのオペレーションは変化するのか〜水口正彦(三井住友銀行) 新田達也(双日株式会社) 生永雄輔(SBI R3 Japan株式会社)

特集 企業のDXとブロックチェーンの実用化

あたらしい経済とSBI R3 Japan 株式会社の共催オンラインイベント「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)とブロックチェーンの実用化」の第4セッション「どのようにサプライチェーンのオペレーションは変化するのか」のイベントレポートです。

どのようにサプライチェーンのオペレーションは変化するのか

左上:竹田匡宏 左下:水口正彦 右上:生永雄輔 右下:新田達也

登壇者
水口正彦(三井住友銀行)
新田達也(双日株式会社)
生永雄輔(SBI R3 Japan株式会社)
モデレート 竹田匡宏(株式会社幻冬舎)

サプライチェーンとブロックチェーン

−双日さんではサプライチェーンにブロックチェーンをどのように生かしているんでしょうか?

私たちは石炭と鉄鉱石を扱ったサプライチェーンを組んでいます。山から石炭や鉄鉱石を掘る「マイニング」から、それを「選炭・選鉱」し、「貨車」にのせて港に行き「船積み」して「Shipping」すると言う以下の図のような流れです。

これが一連の物流のサプライチェーンの流れ、物流サプライチェーンです。そして私たちは商社として、船を手配してマイニングをしているサプライヤーや物流会社などに連絡をしてやり取りする流れになっています。

そのやり取りの中で、例えば一つの船を作るだけでも100〜300通ぐらいのメールのやりとりがあるんです。そんな部分で「どれが最新のメールだっけ」というようなことが起こらないようにいかに簡略化していくか。そこにブロックチェーンを使う取り組みをしています。

−三井住友銀行さんは銀行としてサプライチェーンにおいてどのような役割を果たしているのでしょうか?

水口:金融業の役割の一つは情報の非対称性から生まれるギャップをどう埋めるか。例えば物流の中で時間がかかる、その間のギャップの信用補完をどうするか、といったところにお客様のニーズがあります。サプライチェーンのギャップをファイナンスという形で資金運用させていただくというのが、伝統的な銀行の大きな役割の一つだったと思います。

そしてデジタル化によって情報の非対称性が、完全になくならないにしてもゼロに近づいていく。そうなった時に金融機関としてどういう役割を果たせるかはこれからの大きな課題だと思います。

デジタルトランスフォーメーションが進んでいく中で、どのように新しい形でファイナンスをしていくか。異業種などいままで連携がなかったところと手を組みながらエコシステムを作って、新しいビジネスモデル、ファイナンス、金融機関としてのあり方を考えていく、今はまさにそのスタート地点に立った段階だと思っています。

−SBI R3 JapanさんのCordaはそのようなデジタル化が進む中でどのようにガバナンスを効かせていくか、そこにどのような役割を担っているんでしょうか?

生永:私たちのCordaはパブリック(ブロックチェーン)ではないので、システムとしてのガバナンスを確保する事ができます。そして例えば三井住友銀行さんがファイナンスの部分にガバナンスを効かせる、双日さんがサプライチェーンでガバナンスを効かせる、という状況の中で、その二社さんが一緒にシステムを作っていこうという事がCordaには出来ます。

普通のブロックチェーンと違って、Cordaは複数のチェーンが同時並行で走っているのが当たり前という仕組みですので、双日さんが作っているデータと、三井住友銀行さんのシステムで作っているデータを繋げられるのです。

大きい会社さんはある程度はガバナンスを効かせたいという気持ちはあるものの、そこがすべて握ってしまうということはないように(Cordaの)技術は作られていると思いますし、今後もそういうふうに技術を作っていきたいと思っています。

−ちなみにサプライチェーンにおいて規制の問題で、デジタル化してガバナンスを効かす事ができないというような問題は起こるのでしょうか?

新田:貿易の「信用状(L/C)」にも規制はありますし、商工会議所で管理している規制もあります。いろんな規制が絡んできて、規制があるから守られるんですが、そのためなかなか浸透していかないという側面もあると思います。そこは大きなテーマになってくると思います。

水口:規制を変えるというよりは、どちらかというと新しいルールをしっかり作っていく必要があると思います。おそらくテクノロジーのほうが早い。テクニカルにはできるけれども、その法的根拠ってどうするのとなる。一国の中でも新しいルールを作るのは大変な中で、ブロックチェーンを活用してグローバルベースでルールを作っていかなきゃいけないというと、もっと大変な話になります。

ニワトリかタマゴかっていう議論になると思うんですけれども、運用はテクノロジーで走っていきます。そこである程度リスクをとるプレイヤーが参画することで実態を作っていく。その一方でそれに押される形、少し後追いする形で、国や公的機関が、新しいルールを作っていく。

そこが並行して進められていくことで、新しいエコシステム、プラットフォームができてくるのではないかなとは思っています。

生永:規制の中には、絶対なければいけないよねというものがあると思うんです。たとえばKYCだったり、AMLだったり、やらなきゃいけない規制はやっぱり守らなきゃいけない。

一方で、紙でなければいけないっていう規制などは、絶対外せると思っています。そのために新しい技術が紙と同等ですというような証明は技術側でやっていかざるをえない。そこは私たちのようなインフラを提供したい会社の役割だと思ってます。日本の法律に基づいて、紙やはんこの代わりに何が使えるんだっていう議論をちゃんと深めていくようなことは私たちにとって非常に重要なミッションだと思っています。

(この記事はイベント内容をダイジェスト編集したものです。イベントの全ての内容は以下動画からお楽しみください)

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プロフィール

水口正彦
三井住友銀行/トレードファイナンス営業部部長。トランザクションビジネスを専門に20年近く海外各地に駐在、2019年6月に帰国。直近の3年はお客様、銀行自身のデジタルトランスフォーメーションにチャレンジ。2020年7月から現職。マルコポーロ等を軸としたプラットフォームの構築に注力中。

新田達也
双日株式会社/石炭・鉄鉱石部部長代理。1995年に電源開発入社。原子力部配属。某商社出向後、石炭トレーディング事業の立ち上げ。2007年にコンステレーションエナジーに転職。日本向け石炭トレーディングに従事したのち、2009年に双日株式会社に転職。石炭三国間トレードビジネスの立ち上げ等、石炭に関わる新規ビジネスに関与。2019年に豪州発のバルクサプライチェーンをブロックチェーン化するCommchain社に出資。

生永雄輔
SBI R3 Japan株式会社/プロダクトサービス部長。ITベンチャー経営と金融機関における市場投資に従事。タブレットを利用した業務システム新規構築から数十兆円の投資運用企画まで様々な業務を現場責任者として遂行。2018 年Fintech領域の可能性を信じSBI ホールディングへ入社。2019年 米R3社との合弁会社SBI R3 Japan プロダクトサービス部長に就任。

竹田匡宏
株式会社幻冬舎「あたらしい経済」の編集者。兵庫県西宮市出身。早稲田大学人間科学部人間環境学科卒業。株式会社幻冬舎へ2018年に入社。ブロックチェーン特化メディア「あたらしい経済」の創刊メンバー。東京大学ブロックチェーンイノベーション寄付講座 共同研究員。

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。 これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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