web3ゲームは今年後半から戦国時代へ、「GameFi2.0」に
シンガポールを拠点にグローバルでGameFiプラットフォーム事業を展開する「Digital Entertainment Asset Pte. Ltd. (DEA)」。2018年8月に創業し、『JobTribes』をはじめとした暗号資産、NFTを活用したゲームをリリースしてきた同社は、今期半期決算で4,200万SGD(約39億円)の売上、利益で2,600万SGD(約24億円)という業績を発表し話題を呼んだ。また同社のゲーム内で活用できる暗号資産「DEAPcoin」は、今年1月に国内暗号資産(仮想通貨)取引所「BITPOINT」に上場している。
DEAのFounder & Co-CEOの山田耕三氏へのインタビュー後編では、web3ゲームのトレンド予想、大手が参入してきたときのDEAの強み、新たなメタバース事業などについて訊いた(インタビュー後編 / →前編はこちら)。
夏から年末にかけて、web3ゲームの大きな波が来る
–web3ゲーム領域、今後日本のマーケットをどのようになると予想していますか?
日本のゲーム業界のコンピュータエンターテインメント協会(CESA)、日本オンラインゲーム協会(JOGA)およびモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)という業界3団体が、昨年5月に「ブロックチェーンゲームに関するガイドライン」を制定し、7月に施行しました。
その中で「リアルマネートレード禁止の規定についてはブロックチェーンゲームには適用しない」と記載されました。あまり話題にはなっていませんが、これは完全な伏線ではないかと私は思っています。
その後から何社かの大手ゲームメーカーがブロックチェーンゲームへの参入を発表しています。私は昨年のガイドラインを見て、18ヶ月後にはとんでもないことになるのではと思ったんです。18ヶ月というのは一般的にゲーム開発してリリースするまでの最低限かかると言われている期間です。
ガイドライン制定から施行の5〜7月の18ヶ月後は、ちょうど今年の年末から年明けぐらいです。その辺りがXデーになるんではないかと考えてます。
昨年からの各社の発表なども併せて加味すると、早ければ今年の夏から冬にかけ、大手さんも含め多数のweb3ゲームがリリースされると予想できます。そして開発に時間を要する大型のタイトルは来年以降にリリースされてくのではと分析しています。
「GameFi1.0」から「GameFi2.0」に
–大手を含めた既存のゲーム企業の参入は、どのような影響があると思いますか?
DEAのゲームも含めたweb3ゲームの現在地は、「GameFi1.0」だと私は定義しています。現状のweb3ゲームは、金融要素に軸足を置いたプロダクトが多い。作り手もユーザーも、基本的にはクリプトの文脈で参加している状況です。いわば「フィンテックのゲーム化」という状態である今が「GameFi1.0」。
そしてこれから日本に限らず世界のゲームメーカーが参入してくる。フィンテックというより、コンテンツや体験に軸足を置いたweb3ゲームが増えてくることが予想できます。その「ゲームのフィンテック化」が進んだ状況を私は「GameFi2.0」と定義しています。
今はまだ序章です。「GameFi2.0」のフェイズで、本当の戦い、いわばweb3ゲーム戦国時代がはじまるでしょう。私たちも暗号資産やNFTを活用しながらも、そもそもゲーム本来の楽しさを追求してきました。だから「GameFi2.0」に世界が移行していくことにワクワクしています。
–大手は新作を出すのか、既存ゲームにweb3要素を加えるのか?「GameFi2.0」フェイズでは、どんなゲームが流行ると思いますか?
既存の人気ゲームにweb3の要素を加える会社が多いと予想しています。しかしプロダクトとして成功するのは、実はオリジナルゲームだと思っています。
既存の人気ゲームには、当然ですが多くのユーザーがいます。そのユーザーは自分が楽しんでいるゲームに、NFTやフィテックの要素が入ってくることを望んでいるわけではなかったりします。web3技術を使わずとも課金して楽しめる経済圏がすでにあり、それを変に脅かされることは、誰も望んでいない。
だから多数のユーザーのいるゲームに、web3要素をゲームバランスを崩さずに加えていけることがとても重要になります。そしてその難易度はかなり高い。
そのため積極的な挑戦がしやすいオリジナル作品から、突き抜けるようなweb3ゲームのヒット作が生まれてくるのではないでしょうか。
DEAの強みと戦い方
–大手も含めたゲーム企業が参入してくる局面で、DEAの強みは何ですか?
私たちは既存の『JobTribes』と『Lucky Farmer』に加え、年内にマルチタスク料理ゲーム『Cookin’ Burger』、「ぬりえ×レース」ゲーム『Graffiti Racer』、RPG×ラーメン販売シミュレーションゲーム『麺屋 ドラゴンラーメン』など4タイトルをローンチ、2023年にはさらに10タイトルを追加する予定です。
私たちが創業してから約2年、18ヶ月と少しのリードタイムがあります。その間に培ってきたノウハウと、web3ゲームに抵抗なく遊んでくれているユーザーを多数抱えています。
世界各国でユーザーのいる複数のゲームが「PlayMining」というプラットフォームにのっかり、全てのゲームがスカラーシップに対応し、日本でも安心して取引できる暗号資産「DEAPcoin」が共通した通貨のように獲得でき、NFT購入ができるマーケットプレイスも整備されている、というエコシステムがすでに出来上がっていることが一つの強みです。
そして先月からメタバース事業もスタートしました。この事業も私たちの「PlayMining」エコシステムで、大きな強みとして成長していくと考えています。
漫画家の頭の中の世界をメタバースで実現
–具体的に「メタバース事業」について教えてください。
これまでに私たちは『JobTribes』を通じ、多くの著名な漫画家やイラストレイターと関係を築いてきました。そんなクリエイターの方々の頭の中にある、未発表のコンテンツをファンと一緒に形にしていくプロジェクトとして、「メタバース事業」を位置付けています。
その第1弾メタバースとして、『ドラゴンクエスト列伝ロトの紋章』でお馴染みの藤原カムイ先生の世界を実現する『Fujiwara Kamui Verse』を先月発表しました。
具体的には藤原先生に、頭の中にある世界の地図を書き下ろしていただき、それを1万分割したメタバース空間上の土地区画である「ランドNFT」を「PlayMining NFT」4月27日から販売開始しています。
今後は「ランドNFT」を持っている方、つまり『Fujiwara Kamui Verse』のいわば国民の皆様にアバターでのコミュニケーション手段なども提供し、この世界からマンガ・ゲームなどの様々なコンテンツを創出していきたいと思っています。
そして先々はゲームとも連動させます。例えばこのメタバースから生まれたキャラクターのイラストが、『JobTribes』のNFTとなり販売されるというようなシナジーです。
そのNFTの販売収益の一部が、それを生み出したメタバースの国庫に貯まっていき、トレジャリーとして管理されるようなイメージを持っています。
貯まった資金を活用して、DAO(自律分散型組織)のように国民(NFTホルダー)がアイデアを出し合って、次はアニメを、次はゲームを作ろう、というふうに例えば投票して決めていくなど。そのようなクリエイターの思想を中心にファンが共創するメタバースを作っていきます。
藤原カムイ先生に続いてこのプロジェクトは複数のクリエイターから既に興味を持っていただけています。順次公開していく予定です。「PlayMining」の中でも、今のゲームと匹敵するほど大きな規模にメタバース事業は成長していくと私は考えています。
web2とweb3の5年後
–5年後までに、「PlayMining」はどのような成長させていきたいと考えますか?
既にディープコインは、他のブロックチェーン、バイナンスの「BNB Chain」や「Avalanche(アバランチ)」などにブリッジしており、複数のブロックチェーン上で利用することができます。「BNB Chain」上にはNFTマーケットプレイス「PlayMining NFT Premier」も作りました。このように今後もマルチチェーン対応を積極的に進めていきたいです。
そして5年後は、web3がしっかりと浸透している世界になっているはずです。その中で今よりも大きくなった複数のエコシステムとも繋がりながら、「PlayMining」の経済圏も拡大していきたい。
web3が浸透していると言いましたが、それはweb2を完全にディスラプト(崩壊)した世界になるとは思っていません。むしろ両方、またはその中間のようなサービスも共存する世界をイメージしています。
「PlayMining」経済圏でも、例えると『進撃の巨人』の世界の壁のように、中心から何層にも別れた世界観が実現できないかと思っているんです。中心は初心者でも安心してweb3を意識せずに遊べるゲームがたくさんあり、外にいくほどパブリックチェーンと連携した、フィンテック要素も強いゲームが揃っていく。
「PlayMining」という世界の中で、web2からweb3へのグラデーションが表現でき、ユーザーは自分がその時に最適な場所を行き来するような、そんな広い世界を作っていきたいです。
(おわり/ →前編はこちら)
関連リンク:「PlayMining」公式サイト
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取材/編集:設楽悠介(あたらしい経済)
撮影:堅田ひとみ