NFTにかかる税金
暗号資産を中心とするデジタルアセット市場の中でも、2021年から飛躍的に注目度を高めたのがNFTです。
NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、日本語では非代替性トークンと訳されます。端的に言うならば、唯一無二のものであると証明する技術のことです。
Twitterのツイートや数々のアート作品など、様々なデジタルデータが高額で売買されたニュースなどが話題となっています。
また、NFTはゲームとの相性も良く、Axie InfinityやThe Sandboxなどでゲームで遊んで稼ぐ「Play to Earn」と呼ばれる新しい概念も生まれました。
このように様々な取引に利用されるNFTですが、NFTの取引によって得た利益にはどのように税金がかかるのでしょうか?
NFTの税制について
暗号資産取引と異なり、2022年2月現在NFTに関する税務上の取り扱いについて国税庁から正式に公表されている明文規定はありません。そのため、NFTの取引で得た利益については、既存の税法体系や税法の基本原則に基づいて判断・処理することになります。
税務上の取り扱いの判断においては専門的な知識が必要になる場面が少なくないため、実際に確定申告を行う際には税理士または税務署に相談することを推奨します。
NFTの所得区分
NFTの売買により発生した所得は、基本的には暗号資産の取引同様、雑所得に区分されると考えられます。しかし、営利目的での継続的なNFTの転売や、デジタルアートを出品して収益を上げている場合など、譲渡所得や事業所得といった他の所得として扱われる可能性もあります。
NFT取引で利益が発生するタイミング
ここからはNFTの取引で代表的なもので、利益が発生するタイミングについて解説していきます。
①NFTの購入
②保有しているNFTの売却
③クリエイターとしてNFTの販売
④ブロックチェーンゲーム
⑤NFT関連銘柄の取引
①NFTの購入
デジタルコンテンツやゲームのアイテムといったNFTは、Openseaなどのマーケットプレイスを介して購入できます。一般的に、マーケットプレイスではETHなどの暗号資産で購入します。このNFT購入時に課税対象となる所得が発生する可能性があります。
たとえば、1ETH(この時点の時価は25万円)でNFTを購入したとしましょう。そしてこの1ETHは3万円の時点で購入していた場合、支払いに用したETHの値上がり益を損益認識する必要があります。「NFTの購入価格(時価)−支払いに使用した通貨の取得価格」、すなわち、「25万円−3万円」の22万円を利益として認識することになります。
なお、この場合は暗号資産取引における支払いにあたるため、所得区分は原則として「雑所得」になると考えられます。
②保有しているNFTの売却
購入したNFT(デジタルアートやゲームアイテム、土地など)は、購入時よりも価値が高騰しているタイミングで売却すれば利益となります。この場合の損益計算は、「売却価格 ー 売却したNFTの取得原価」です。
売却時のNFT価値が、購入時よりも下がっている場合は損失となります。
このNFTの所得に関しては譲渡所得や雑所得などに区分されることが考えられますが、どの所得に区分されるかは、取引の性質から判断することになるでしょう。
③クリエイターとしてNFTの販売
OpenSeaやnanakusaをはじめとするマーケットプレイスでは、クリエイターとして作成したデジタルコンテンツをNFT化して販売することができます。そして、デジタルコンテンツを購入したユーザーが再度売買(二次流通)を行った際にも、予め決められた割合のロイヤリティ報酬がクリエイターに支払われます。
NFTの販売によって得た所得の所得区分は、クリエイター業務を副業として行っているか、事業として行っているかによって雑所得または事業所得等異なると考えられます。
④ブロックチェーンゲーム
ブロックチェーンゲームでは、NFTの売買を行ったり暗号資産を無償で獲得できるなど、ゲームで遊びながらお金を稼ぐことができるため、「Play to Earn」と呼ばれる新しい概念が生まれたことで注目を集めています。
ここでは、2021年に大きな話題となった「Axie Infinity」を例に所得が発生するタイミングを説明します。
Ⓐ NFTであるキャラクターやアイテムの購入
Ⓑ 取得したNFTを売却
Ⓒ 暗号資産の無償取得
Ⓓ スカラー制度
ブロックチェーンゲームにかかる税金について考える際に注意するべきことは、NFTの取引と暗号資産の取引の両方が行われるという点です。
ⒶⒷのNFTの購入・売却については上述した「①NFTの購入」「②保有しているNFTの売却」と同様の内容になりますので具体的な所得認識のタイミングや所得区分の解説は省略します。
Ⓒ暗号資産の無償取得
Axie Infinityをプレイしていると、SLPやALXなどの暗号資産を無償で取得できる場合があります。これらの無償で取得した暗号資産についてはエアドロップなどと同様に取得時点での時価がそのまま所得となると考えられます。
Ⓓスカラー制度
Axie Infinityのスカラー制度は、NFTをスカラーに貸し出して運用(ゲームをプレイ)してもらい、稼いだSLPやALXを貸し出した側と運用した側で分け合う制度です。
このスカラー制度では、貸し出した側と運用した側の双方が、SLPやALXを取得した時点で所得として認識します。
⑤NFT関連銘柄の取引
エンジンコイン(ENG)やAxie Infinity(AXS)、The Sandbox(SAND)などの既に取引所に上場しているNFT関連銘柄の取引は、Ethereum(ETH)などと同様に暗号資産であるため、すでに公表されている暗号資産の税制にしたがって課税されます。
NFTの損益計算はどのように行えば良いのか?
NFT取引の確定申告においても、損益計算を行い年間の利益額(または損失額)を算出する必要があります。
また、NFTの取引にはETHなどの暗号資産の取引が伴うことから、暗号資産取引によって発生する損益額も計算する必要がありますので留意が必要です。暗号資産の損益計算については、取引所から取引履歴をダウンロードすることができますので、その取引情報をもとにGtaxなどの損益計算ツールや国税庁の暗号資産の計算書(エクセル)を使うことで計算を行うことが可能です。
ただし、NFTの取引ができるプラットフォームでは、損益計算用のデータが整備されていないことが多いことから、ご自身でブロックチェーンエクスプローラー等を利用して取引履歴の管理をし、Gtax等の損益計算ツールによって損益計算を行う必要があります。
なお、この場合の損益計算では以下の情報が必要になるため、取引履歴の管理を行う際は以下を参考に記録しておきましょう。
【記録しておくべき情報】
- 売買日時
- 購入(または売却)したNFT
- 支払った(得た)通貨名
- 支払った(得た)通貨の数量
- 手数料
所得区分が雑所得となる場合は、上記の情報が記録・整理できていればGtaxのような損益計算ツールを活用することでNFTの損益計算も効率的に行うことができます。
NFTの取引で利益が出ている場合は確定申告を行いましょう
NFTの税金に関しては明確なルールが定められていませんが、取引によって一定以上の利益が出ている場合は、既存の税制の考え方に基づいて確定申告を実施する必要があります。
また、NFTの取引ではETHなどの暗号資産の取引も同時に行っているケースがほとんどであるため、暗号資産取引も含めた損益計算を行う必要があります。Gtaxのような損益計算ツールを活用することで計算作業を効率化することができるため、適切に計算を行い、確定申告を実施しましょう。
(おわり)
寄稿
この記事は株式会社Aerial Partners(エアリアル・パートナーズ)の寄稿記事です。暗号資産(仮想通貨)の損益計算ツール「Gtax」はこちらから↓
image/iStock:Photoplotnikov・kazuma-seki