2019年5月22日から24日に北海道札幌市で開催された「B Dash Camp 2019 Spring in Sapporo」のブロックチェーン関連のセッション「ブロックチェーンの注目スタートアップ」のレポートをお届けします。
スピーカー
このセッションには5名のブロックチェーン業界で活躍するスタートアップの代表者が参加した。
WebサイトとWebコミュニティのセキュリティを保証し、ブランディングのできるプロトコル、会員権システムの提供をするToy Cash CEO 日置玲於奈氏(以下 日置氏)。
アニメ、マンガ、ゲーム等のデジタルアートの所有権と特別な体験を提供するサービス、Anique代表取締役 中村太一氏(以下 中村氏)。
NFTのマッチングプラットフォーム「bazaaar」を運営し、また音楽の原盤権をトークン化し流通させる取り組みも始めた、BlockBase代表取締役 真木大樹氏(以下 真木氏)。
アート×ブロックチェーンにおいて、新しい価値と世界共通のインフラを目指している、スタートバーン代表取締役 施井泰平氏(以下 施井氏)。
信頼を可視化し、透明性と価値の高い情報の提供を目指すソーシャルメディアプラットフォーム「ALIS」を運営するALIS CEO安昌浩氏(以下 安氏)。
そして、モデレーターはB Cryptos代表取締役社長の本吉浩之氏(以下本吉氏)が担当した。
10年後のWeb3の世界とは
イベント冒頭に各スタートアップが簡単な事業紹介をした後、話題はWeb3の世界についてに。
Web3の世界観に関して日置氏は、「今後5年10年で、Webサイトのログにはブロックチェーンが紐づいてくる」とその可能性を説いた。
「例えば、言語の理解ができない外国で、Webサイト上での会員登録や支払いが迫られたとき、それには少なからず恐怖心を覚えることがあると思います。そこでイーサリアムやEOSのアカウントでログインをすることが可能になれば、そのサイトで何が行われていたかがブロックチェーンによって、バックアップされることになる。
このようにブロックチェーンエクスプローラーによって信頼性を確保することが今後多くのWebサービスにおいて増えていくだろう」と語った。
続いて中村氏は「10年後にはAniqueが取り扱うアニメや漫画などのデジタルアートの所有権販売が一般的になり、多くの人気コンテンツまで拡大されていて欲しい。そして世に生み出される前の作品のデジタルアートの販売などができるようになればいいと思う。そのような市場を作ることで、作品を人気が出る前から応援してきたファンに対価が生まれるようなサービス設計をしていきたいと」と意気込みを語った。
Web3の本質とは?
真木氏は「自分はWeb3時代への達成したいという強い想いやモチベーションが無い」と前置きした上で以下のようにコメントした。
「Web3というのはシステム主導で発展していくものではなく、ユーザーの考え次第で進んでいくものだ。
中央集権的にデータが管理されていても、結局のところユーザーが自分自身でデータを発信することや存在感を高めるなどのWeb3的な気持ちさえあれば、それはプラットフォームに依存せず、たとえGAFAを使ったところで実現ができる世界観だ。
ユーザーの価値観がWeb3になることができれば、自身の会社も含めた企業がプラットフォームを作る役目は終わりを迎え、より個人が分散し、集団的に活躍する時代に近づくだろう」と話した。
続いて施井氏は「個人の著作物を個人が管理する時代がWeb3ならば、アートの世界と相性が良い」と話す。
「現在、様々な著作権を持つ作品が、いろいろなプラットフォームに登録がされているが、その管理者は法的には著作物管理業者の位置づけであり、そもそも著作権上の管理としてはグレーゾーンである。やはり本来は著作物は著作権をもった個人に帰属し、個人が管理をすべきが理想である。
しかし、そうなったとしても中間業者であるギャラリーが不必要であることでは全くなく、中間業者には管理や価値付けなど評価をする役割がある。だからこそスタートバーンでは二次流通においての管理、個人とつなげる管理を重要視している」と施井氏語った。
最後に安氏は「Web3化すべきところと、そのまま変化しないところが分かれていき、全てがWeb3に飲み込まれるわけではないだろう」と自身の考えを述べた。
「今までのインターネットでは企業側が全部情報を持ってきたが、Web3において個人が情報を管理ができるようになる。そうするとプラットフォーマー達は本質的な提供価値の創出を始め、インターネットがより便利に様々な価値を享受できる時代になるのではないか」との見解を語った。
ブロックチェーンスタートアップが目指す、2年後の姿
そして、2年後にビジネスとしてスピーカーたちがどういう状態でありたいかという今後の展望に関しての質問が会場から寄せられた。
日置氏は「より多くのユーザーが、自身のサービスである会員権の取引所に集まることが一番の大きなビジョンである。
同サービスのプロトコルでバックアップされたWebサイトが安全性が確保され、認識され、新しい金融性・流動性を持ち、より多くの人が関わることになれば、時価総額が上昇するはずだ。これが僕の重要な目標だ」答えた。
そして日置氏は「一つのムーブメントを起こすにあたり、自社トークンの価値を上げること、つまり、マーケットのスケールを上げることが自身の直近の課題としている」と付け加えた。
続いて中村氏は「すでに多くの人が価値を感じているアニメのデジタルアーカイブを増やしていきたい。さらにこれから世に出る、価値を持つかもしれないアニメやその中のキャラクターのNFTを提供することは、対価性を持つことに加え、さらにベッティングの要素を含むことになる。このような新しい用途がエンターテイメントの分野で生まれることを期待したい」とのことだ。
真木氏は「2年後には現在あるサービスを含め、マーケットプレイスを100個作りたい。そして他社からも100個以上そういった案件が出てきて欲しい。
以前僕が作ったプラットフォームが自分の手を離れても、そのサービス自体は続いていて、さらにそのサービスのオープンソースを使った類似サービスも作られたことがありました。
このように自身の作った思想や基本設計が他のサービスに展開されることが、本来あるべき分散的な考え方であり、望ましくも喜ばしいことだと思う」真木氏は話した。
施井氏は「本年秋にプラットフォームの世界配信を開始するため、2年後はまだ時間の経過が少ない」とコメントをしたうえで「まず2年後にはもっと多くのブロックチェーンを使ったサービスが世の中に広がって欲しい」と希望を語った。
「今後、自身の提供するアートブロックチェーンに類似するサービスが出てきたとしても、それは同じように世界に向けたシステムであり、例えばクレジットカードがいろいろな種類があるのと同じこと。
一人が複数のクレジットカードを使うことがあるように、ブロックチェーンサービスが浸透した世の中を目指すことが先決で、ブロックチェーンの普及を進めることが重要だ」と話した。
そして安氏は2年後の目指す状態は2つあるとし「一つ目にユーザーが情報発信をするなら、まずALISを選ぶ状態であることを実現したい。無名の個人が発信をする際にしっかりとしたフィードバックを得られることがユーザー価値となるようにし、さらにサービスの拡大をしていきたい。
そしてもう一つはALISをきっかけにWeb3に関わってくれる人材が増えることだ」と語った。
最後にモデレーターの本吉氏が「ブロックチェーンにおけるキーワードは『個人』である。そして本来はブロックチェーンは見えないところで動くべきものであり、今後はブロックチェーンが当たり前のものになり、ユーザーのより良い体験の為に業界が進んでいくことを願っている」と締めくくった。