ブロックチェーンはシェアリングエコノミーを発展させる一助となるか?

特集 主役は個人。分散型社会の未来

大手プラットフォーマーはサービス提供者から個人のフォロワーに

―ブロックチェーンはシェアリングエコノミーを発展させる一助となると思われますか?

私が目指す社会は、個人主体の経済社会です。個人が自分の自由意志のもとに選択できる社会。それって何かと言うと、管理されない社会です。管理されている社会って、個人は永遠に企業や国と対等じゃないパワーバランスなんです。

それを民主化するのがブロックチェーンの力だと期待しています。ブロックチェーンによって組合型のプラットフォームがどんどん出てきたらいいし、それと切磋琢磨するように、巨大プラットフォーマーが個人のために必要なあり方を考えながら良質なサービスを提供していければいいと思っています。大手プラットフォーマーや大手企業はあってはならない、ということではなく、あり方を変えたらいいと思う。今のようにただサービスを提供するのではなく、個人主体の社会を推し進めるフォロワーになってくれたらいいと思います。

例えばヨーロッパのサービスってIPO至上主義じゃなくて、その地域でしか使えないシェアサービスや、NPOがやっていたりもします。いわゆるスケーラビリティを重視していないプラットフォームがあるんです。まだまだ日本のスタートアップはIPO至上主義で、どうしたらスケールするかを先に考えてしまう。でも世界にはそうじゃないプレイヤーもたくさんいるんですね。

官はニューパブリックの導入を

―プラットフォーマーや企業がフォロワーになっていく中で、官はどうあるべきだと思いますか?

シェアリングエコノミーが広がる中で、その調整役こそが行政の役割だと思っています。韓国の事例で言えば、Airbnbが参入してきた時にそれを制御できずに民泊の小さなサービスがどんどんクローズして、Airbnb一強になってしまった。最初にそこをテコ入れしていれば健全な競争環境になっていたはずです。日本の課題もまさにそこです。

そしてもう一つ。例えばライドシェアのように、既存サービスとのバランスを考える必要があります。ライドシェアが広がったとしても、タクシーがいらなくなるわけではない。どうしたら共存できるのか。それは政治の場で議論できる場をもっと作っていくべきでしょう。

個人をアップデートして豊かさを再定義する

—今後についてどのような目標がありますか?

まず盛り上げていきたいのは、個人のアップデートとか個人の意識ですね。意識とは個人の変容のことです。変容には、意識レベルや感情レベルを上げることもあれば、信頼を広げること、すべて包括されます。それをどこまで個人が築けて、拡張していけるか。そこがシェアリングエコノミーの今ぶち当たっている壁を唯一解決するものだと思います。

中国では来年、アリババの信用スコアが社会制度として実装されます。日本も同様に、スコアリングにLINEYahoo!が参入してきて、アリババ的な世界観になるかもしれない。日本はガラパゴスでもあり、まだ資本力もあるので、大企業がアリババみたいなことを目指そうとしたらできてしまいますから。もしそうなったら、大手プラットフォーマーが目指すスコアリングの社会が、本当に個人を幸せにするアルゴリズムになっているのか、ここを対等にジャッジして議論できる個人をたくさん作らないと、資本主義から抜け出せないと思います。

私は、「シェア」という考え方そのものが東洋思想から来ていると思っています。その東洋思想的な価値観のもとで、作られるアルゴリズムや信用スコアってまったく別のものができる可能性があると思う。そこに挑戦するプレイヤーは、私一人だと無理なので多くの個人と考えたいと思います。

そのために急務なのは、豊かさを再定義すること。豊かさとはなんなのか。私たちが答えを出さないと、今の物理的な物質社会・資本主義社会の指標でアルゴリズムを作っていくことになってしまいます。アルゴリズムは基本的に人が作るものですから、そこで何を基準にするのか、真剣に考えなければいけない。

そのためには、思想や価値観をアップデートして、何が本当に私たちの幸せなのか、を定義することが先決です。そこからテクノロジーをどう使うか、どうスコアを考えるかしていった方がいい。企業は営利で動いている以上、スピードを緩めることは難しいです。ですから、その企業のスピードに負けじと、個人の勢力を追いつかせなければいけない。個人が力をつけ、豊かさってこうだよね、という議論を社会的に発生させる。そのムーブメントをなるべく早く起こすこと、まずはこれが目標です。

(おわり)

編集:深谷その子/設楽悠介
撮影:堅田ひとみ

この記事の著者・インタビューイ

石山アンジュ

一般社団法人Public Meets Innovation代表 一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局長 / 内閣官房シェアリングエコノミー伝道師 1989年生まれ。シェアリングエコノミーの普及、規制緩和・政策推進・広報活動に従事。総務省地域情報化アドバイザーほか厚生労働省・経済産業省・総務省などの政府委員も務める。2018年10月ミレニアル世代のパブリックとイノベーターをつなぎイノベーションに特化した政策を立案し世の中に広く問いかけるシンクタンク一般社団法人Public Meets Innovationを設立。ほかNewsPicks「WEEKLY OCHIAI」レギュラーMC出演を務めるなど幅広く活動。Business Insider Japan 固定観念を打ち破り世界を変える『Game Changer 2019』46人に選出。国際基督教大学(ICU)卒、新卒で株式会社リクルート、株式会社クラウドワークス経営企画室を経て現職。著書『シェアライフ-新しい社会の新しい生き方』(クロスメディア・パブリッシング)。

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未来を逆算し、官と民、両者の目線で切り開くべき私たちの未来

モビリティとかアグリテックとか毎月テーマを決めて、それに関わる官僚と、スタートアップの経営者や弁護士と政策を議論しています。政策のオーナーとなるポリシーオーナーに各省のミレニアル世代の官僚を立てて。例えば、経産省の人がポリシーオーナーとなってモビリティの空飛ぶ車の議論をしたり。