ペクトラで実装予定の3つの機能とは?
イーサリアム次期大型アップグレード「ペクトラ(Pectra)」が来年に迫っており、時々ニュースも見かけるようになりました。今回はそんなペクトラについて簡単にまとめます。
ペクトラは2025年第一四半期に実施予定で、ウォレット機能の強化やネットワーク手数料の効率化、ステーキング制限の引き上げを実現する内容です。このアップグレードは、「プラハ(Prague)」と「エレクトラ(Electra)」という2つのアップグレードを統合したものであり、イーサリアムで大型アップグレードの一つです。
ではこのアップグレードで実装予定の主な3つの機能をみていきましょう。
1.ウォレット機能の強化
最も主要なアップグレードはEIP-7702の採用です。これは、以前提案されていたEIP-3074に代わるもので、イーサリアムの創始者であるヴィタリック・ブテリン氏によって提案されました。EIP-7702は、一般的に使用されるアカウントであるEOA(外部所有アカウント)を、スマートコントラクトウォレットのように機能させることを可能にするものです。
これによりトランザクションのバッチ処理など、スマートコントラクトウォレットでのみ可能だった幅広い機能を通常のウォレットに導入できます。またこの提案は、すでに実装され広く利用されているERC-4337のアカウント抽象化との互換性が高く、オペコードを新たに追加する必要がないため、現在提案されている将来のアップグレードとの整合性も保たれています。
2.データ可用性の向上
さらに、EIP-7594(PeerDAS)もペクトラに含まれる重要な要素です。PeerDASはロールアップのスケーラビリティを向上させることを目的としており、BaseやArbitrumなどのレイヤー2ソリューションを最適化します。これにより、大量のトランザクションを効率的に処理することが可能になり、ネットワーク全体のパフォーマンスがさらに向上します。
3.ステーキング上限の引き上げ
また、バリデーターがステーキングできるETHの上限を32 ETHから2048 ETHに引き上げるEIP-7251(MaxEB)も実装されます。これにより、大規模なノードオペレーターが複数のノードを1つに統合することでネットワーク負荷を軽減できるだけでなく、複利を効率的に得られるようになります。またステーキングに必要なETHの下限を32ETHのまま維持することでセキュリティは維持します。
これらがペクトラに含まれる予定の主な実装です。上記以外にもいくつかの機能追加やバグの修正など、多くの変更を含んでおり、かなり大規模なアップグレードと言われています。
なおこのアップグレードは先日行われたイーサリアムの開発者会議にて、2つに分割して行うことでバグが起きた際の影響を最小限に抑えつつ、一部機能を早期実装することが決定しました。これにより、これまでの予定では第一四半期の終盤に実装予定でしたが、一部の実装を第一四半期の初頭に完了する予定に変更されました。
2025年第一四半期の序盤に予定されている前半の実装では、EIP-7702が実装される予定です。開発者ネットワークではすでにテスト可能になっています。しかし実装が遅れているEIP-7594は後半の実装に含まれる予定であり、一時的にL2ネットワークの手数料がわずかに高騰することが懸念されています。
またこの後半の実装でこれまでの予定以上の追加の実装をしないことが決まっています。できる限り早い実装を行い、さらに次に予定されているアップグレードが遅延しないよう予定しているとのことです。
アップグレードが実施されるのは来年の話ですが、ペクトラはさまざまな機能が追加される大型アップグレードであるため、大きな注目を集めています。今後大きな変更や発表があれば改めててこの連載で解説しようと思っています。皆さんも今のうちに情報収集してみてください。
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