ソニー「Soneium」への「Astar zkEVM」移行、どう捉える?

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手塚康夫

ソニー「Soneium」への「Astar zkEVM」移行とは?

日本発のブロックチェーン「Astar Network」は、今年3月にリリースした「Astar zkEVM」を、ソニーグループとの合弁会社 Sony Block Solutions Labs が開発する新しいブロックチェーン「Soneium」に移行すると発表し、賛否両論を巻き起こしています。

「Astar zkEVM」は昨年9月、「Astar Network」とPolygonLabsの協業により、ブロックチェーン開発キット「PolygonCDK」を用いて開発が開始され、今年3月にリリースされたEVM互換のパブリックブロックチェーンです。

「Astar Network」はPolkadotのパラチェーンであるブロックチェーンも運営しています。一方「Astar zkEVM」はガス代にETHを使用するなど、Polygonやイーサリアムに基づいたものであり、エコシステムが異なるサービスを開始するということから、発表時から様々な反響を呼びました。

そして昨年9月にはソニーグループとの合弁会社設立とブロックチェーンを構築するという発表があり、この新しいブロックチェーンも「PolygonCDK」を使用して構築されるのではと予想もされていました。しかし先日ソニーの新しいブロックチェーン「Soneium」は「OP Stack」を用いて開発されることが発表されました。

さらに「Soneium」はイーサリアムのレイヤー2ブロックチェーンとして、Optimismのエコシステムである「Optimism Superchain」に参入するだけでなく、前述の「Astar zkEVM」を同ブロックチェーンに移行することも発表されたのです。

現在ブロックチェーン業界ではエコシステム内の結びつきを強める動きが加速しています。今回の動きは「Astar zkEVM」が属していたPolygonエコシステムからのAstarの撤退を意味し、それに対して裏切り行為ではといった批判もみられました。

一方、「Soneium」の開発に「PolygonCDK」を採用しないという決定は妥当であるという意見もあります。考えられる理由として、今年4月に「Astar zkEVM」で発生したリオーグによるチェーンの巻き戻しが挙げられます。

この事件では、「PolygonCDK」がイーサリアムのリオーグに適切に対応できず、一時的に資金がロックされたり、巻き戻しによって損失を被ったユーザーが発生しました。この問題は日本国内外で大きな話題となり、Astarが発行するASTRの価格が急落する結果となりました。

このため、ソニーグループとの共同開発プロジェクトでは、「PolygonCDK」の使用を避ける選択がなされたとのではとも予想されています。

またOP Stackは、大手の暗号資産取引所であるコインベースが独自のブロックチェーン「Base」で採用し、あくまで現在まではですが問題なく運営を続けられているため、比較的安全とも考えられます。

そのため、コミュニティ内ではエコシステムの移行に対する批判も見られる一方、今回の発表について肯定的なユーザーも少なくないでしょう。

さらに、チェーンリンクが初期からネットワークに参加することや、ASTRホルダーに対するインセンティブが計画されていることも発表されており、既存のAstarユーザーにとっては期待できるような取り組みだとも言えるでしょう。

なお、「Soneium」はすでにテストネットを公開しており、開発者がテストを実施できる状況です。メインネットの公開時期はまだ明らかにされていませんが、今後も新しい情報が出次第、まとめてお伝えしますので、ぜひ注目してみてください。

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手塚康夫

株式会社クリプトリエ 代表取締役 CEO 2006年に株式会社ジェナを設立、2021年の株式会社マネーフォワードによるM&A後に同社を退任。現在は2023年に設立した法人向けにweb3ビジネスを展開する株式会社クリプトリエの代表取締役の他、複数のスタートアップの役員や顧問を務める。株式会社クリプトリエでは、NFTのビジネス活用を簡単かつ迅速に実現するプロダクト「MintMonster」を提供し、企業におけるWeb3活用の普及を目指す。

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