インテント(Intent)とは?
最近のブロックチェーン業界でしばしば聞く「インテント」ですが、その理解にはエンジニアしか分からない複雑な知識が前提になっています。一般ユーザーでも理解できる記事が少ないので、今回はこの「インテント」について非エンジニアでもわかるようにまとめていきます。
インテントは「Intent」と英語で表記されることも珍しくなく、その英単語の意味の通りユーザーの意図に基づいて効率的にアセットを移動させる仕組みのことを言います。これによりユーザーがブロックチェーン上のアプリケーションを使用するうえでのユーザー体験を向上させています。
この仕組みによって向上するユーザー体験としてよく例示されるのは、取引や送金のたびにトランザクションの実行をする必要がなくなるというものです。
具体的には複数のトランザクションが必要な複雑な取引を1つのトランザクションで簡単に済ませたり、定期的なトランザクションの実行を自動化したりすることができます。実際、インテントを採用したトークンのアプルーブとスワップを一つのトランザクション署名だけで行えるDEXもすでにあります。
ここからはインテントをもう少し詳しく見ていきます。
これまでトランザクションを実行して取引を行う際には「どのように」何を実行するかを指定していましたが、インテントでは「何をしたいか」だけを指定します。この時どのように実行するかという部分は指定せず第三者に委任することができるのです。
これによりユーザーは、より良い取引を探すような面倒な作業をせず、「何を実行したいか」だけを決めることで効率の良い取引を行えます。これはユーザーの意図に基づいて複雑な複数のトランザクションを第三者が代わりにまとめて実行することで実現しています。
例えば、これまではUniswapで1ETHをUSDTにスワップするというような指示をしていたものを、1ETHをUSDTにスワップするという意思を表明するだけで、効率的で最適な取引の経路のトランザクションをまとめて第三者が実行してくれるというような利用方法です。
このインテントを利用することで、ブロックチェーンを跨いだスワップなどを含めた、より効率的な取引を組み込んだアプリケーションを目指すプロジェクトも出てきています。また今後もインテントを活用した新しいアプリケーションが多く出てくることが期待されています。
ここからはインテントを採用したプロジェクトとしてもっとも有名なUniswapXをご紹介します。UniswapXでは、スワップをしたいユーザーはスワップするための署名のみを作成し、フィラーと呼ばれるユーザーがこのスワップを代わりに実行することで取引が成立します。
この実行時にフィラーはスワップをしたいユーザーから手数料を受け取ることができ、これがフィラーとしてアプリケーションに参加するインセンティブとなっています。またフィラーは他のフィラーと手数料価格で競争し、より良い条件での取引を成立させられるフィラーがスワップを実行することになります。
この競争によってさらに取引の資金効率が上がることが予想されています。またスワップをしたいユーザーは署名だけ作成しトランザクションを実行しないため、ガス代を用意することなくスワップを行えるという大きなメリットもあります。
また、前述のアプルーブとスワップを一度のトランザクションで実行可能にする「Permit2」の採用も注目されており、インテントを積極的に採用しています。インテントは、Uniswapのような大手のサービスが採用していることからも、今後まだ大きくなる話題だといえるでしょう。
インテントを理解すれば、今後の話題をより楽しめるようになると思います。何度か読んでいただけると嬉しいです。
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